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北朝鮮の脅威に無策の僕たち~「シャバ僧」過ぎるぜ!ニッポン=施光恒

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年4月28日号(「シャバ僧」過ぎるぜ!ニッポン)より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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今の日本人はまるで『ビー・バップ・ハイスクール』のシャバ僧だ

40代半ばならわかる「シャバ僧」

今日のタイトルの「シャバ僧」(「シャバゾウ」と読みます)がわかる人は、読者の皆さんのごく一部かもしれませんね。40代半ばの私とほぼ同世代の方々だけかもしれません。

私が、ちょうど中学生、高校生だった頃に流行っていた不良マンガ『ビー・バップ・ハイスクール』でよく使われていた言葉です。『ビー・バップ・ハイスクール』は80年代後半には仲村トオルと清水宏次朗主演で映画化もされました。

このマンガや映画の中で「シャバい」という言葉が多用されていました。不良の言葉で、「意気地なし」「さえない」「男らしくない」といった意味です。「シャバ僧」とは、「シャバい小僧」ぐらいの意味だと思います。主人公のトオルとヒロシなどが、正々堂々としていない、弱々しい不良仲間などを指して、「あいつシャバい」とか「シャバ僧!」とか言っていたんですね。

このマンガの作者、きうちかずひろ氏は福岡市出身ですので、「シャバい」は、もともとは福岡あたりの方言なのかもしれません。私も福岡で生まれ、『ビー・バップ・ハイスクール』のモデルとなった高校のすぐ近くで中高生時代を過ごしました。私自身は、常に襟カラーの付いた標準学生服を着ているようなまさに真面目で「シャバい」生徒だったのですが、自分のことは棚に上げてよく「お前、シャバか~」「シャバ僧www」とかふざけて使っていました。

日本政府の「シャバい」対応

それはともかく、今日、話題にしたいのは、最近の北朝鮮の弾道ミサイルに対する日本政府の対応です。私は、日本政府はまさに「シャバ僧」だと感じます。国民の命を何が何でも守る!という気概に欠けていますよね。(´・ω・`)

私の周りにも、ここ数日、北朝鮮の何か記念日が来るたびに「今日、北朝鮮のミサイルが飛んでくるんじゃない?」「発射されたらどうしよう!」と真剣に心配している人が少なからずいます。

テレビなどでも、「弾道ミサイルが飛んで来たら『Jアラート』というサイレンが鳴ります」「頭を低くして堅牢な建物に隠れましょう」「窓には目張りをしましょう」などと連日、報道しています。聞くところによると、かなりの都道府県の小中学校でも、そうした弾道ミサイル対処策を学校で教えたそうですね。

いまのところ、幸いにも北朝鮮からのミサイルは日本に飛んできていないようですが、一触即発の事態にあることは間違いないようです。

国民保護法に基づいて、自治体の職員や学校の教職員の方々が弾道ミサイルへの対処策を一生懸命広めているのには頭が下がります。ですが、日本政府の主な対応がこれでは、少々無策というか無力というか、情けなくなります。

弾道ミサイルが日本の市街地に着弾すれば、「Jアラート」が鳴り響き、人々が建物に逃げ込んだとしても、かなりの犠牲者が出るのはおそらく避けられません。それなのに、政府は、そしてそれを選び、支えている日本の大人(当然、私も当事者です)は、どうも切迫感がなさすぎるというかノンキすぎるように思うのです。また、無責任でもあります。

いうまでもなく、国家の第一の目的は国民の生命を守ることです。

現在のような状況に置かれる以前に、国防についてもっときちんと議論しておくべきでした。いや、いまからでも、もっと真剣かつ現実的な国防論議を大々的に行っていくべきです。

Next: 冷戦期、ド・ゴール仏大統領とシュミット独首相のシャバくない対応に学べ



冷戦期に国民を守ったド・ゴール仏大統領とシュミット独首相

『月刊 日本』という雑誌の今月号(2017年5月号)に、元・衆議院議員の西村眞悟氏が「朝鮮危機を奇貨として、今こそ自主防衛体制を敷くべし」という一文を寄せています。

このなかで冷戦期にフランスのド・ゴール大統領が核保有を敢行した話に言及しています。

当時の米国大統領であったJ・F・ケネディは、ド・ゴールに核武装を思い留まらせようとして、米国は「核の傘」を広げてフランスを守ると言いました。

しかしそれに対して、ド・ゴールは次のように尋ねました。「米国は、ニューヨークやワシントンが核攻撃を受ける危険があっても本当にフランスを守ってくれるのか?」と。つまり、ソビエトがフランスを核攻撃するようなことがあれば、米国は、自国の大都市が攻撃を受ける危険を顧みず、ソビエトにただちに報復すると約束してくれるのかと問うたのです。

ド・ゴールの単刀直入な問いに、ケネディは絶句し、答えられなかったそうです。

西村氏も触れていますが、同じような事例として、1970年代の西ドイツのシュミット首相の決断もあります(シュミット首相のかつての決断には下記の記事も触れています)。
※参考:南シナ海情勢を見据え、今こそシュミット元独首相の知恵に学べ – 産経ニュース(2015年11月18日配信)

1977年の秋、ソビエトは中距離核弾道ミサイルSS20を西ドイツ(NATO)に向けて配備しました。西ドイツには届くが、米国は射程圏内に入らない中距離ミサイルを配備することによって、ソビエトは、米欧の分断を狙ったのです。

米国の核の傘は、本当に西欧諸国を守ってくれるのか」「SS20で欧州が攻撃された場合、米国は、戦争になる危険にもかかわらず、報復してくれるのか」。当然のこととして、このような疑念が西ドイツなど西欧諸国には生じます。ソビエトの狙いは、米欧の結束を揺さぶることでした。

これに対し、西ドイツのシュミット首相は、軍事的バランスの回復が必要だと語ります。そして、ソビエトのSS20に対抗するために、中距離核弾道ミサイル・パーシングIIを米国から導入し、実戦配備に踏み切りました。

シュミット首相は、ソビエトのSS20に対し、パーシングIIを導入し、「相互確証破壊」の体制を構築しました。すなわち、ソビエトが、西ドイツをはじめとする西欧諸国にSS20を打ち込むようなことがあれば、米国の決定に俟つことなく、自らの手で報復する姿勢を示したのです。(こういう体制を構築したあとで、ソビエトと交渉し、結局、SS20を撤収させました)。

私は、ド・ゴール大統領やシュミット首相のような態度こそ、責任ある政治家としての、いや大人としての態度だと思います。「自国民の生命を、相手国の不安定で不確実な意思にゆだねたりはせず、何が何でも守って見せる」という気概が必要なのです。

ド・ゴールやシュミットは、ソビエトが一発でも弾道ミサイルを撃ち込むようなことがあれば、即座に報復するという断固たる姿勢を表明し、自国民の生命を守る気概を示しました。

日本政府も、具体的方法はどうであれ、「日本国民の生命は何が何でも守る」「北朝鮮の不安定・不透明な意思に、国民の生命や生活を委ねたりはしない」という気概を持ち、それを内外に表明すべきです。

Next: 日本政府にも「何が何でも国民を守る!」という姿勢が必要



日本政府にも「何が何でも国民を守る!」という姿勢が必要

私自身は、フランスなどと同様、核武装の可能性も選択肢から排除すべきではないと考えていますが、日本は非核を貫くべきだと思う人も少なくないでしょう。ですが、非核という原則に立った場合でも、政府は「自国民の生命や生活は何としてでも守る」という姿勢を示すべきなのです。

例えば、「非核」や「絶対的平和主義」という立場を固守するのであれば、次のような決意でもいいかもしれません。

「北朝鮮が、もし弾道ミサイルを日本に打ち込み、日本人の生命に危害を加えたのであれば、何年かかっても、そして、どのような手段を使っても決して諦めず、必ず国際司法の場に引きずり出し、その罪を償わせてやる」。

ともかく、「自国の無辜の人々の生命は何としてでも守り抜く」という姿勢や気概こそを、国の責任ある立場にある者は保持し、示すべきなのです。

拉致問題でも同様ですが、残念ながら、現在の日本の政治家には、その当然の姿勢や気概が欠けているように感じられてなりません。

『ビー・バップ・ハイスクール』の世界に例えれば、現在は、隣町の不良グループの襲撃によって、自分のかわいい彼女に危害が及ぶかもしれないといった状況です。そして、そのような緊迫した時にもかかわらず、彼女に次のように言うのが今の日本政府の実情ではないでしょうか。

「ボクは、ケンカは嫌いだし、周囲から止められているから手出しはしないよ~。襲撃がないことを祈るよ。太平洋の向こうの親分が、隣町の不良を脅しつけてくれているからまあまず大丈夫だと思うけど…。でも、もし襲撃があったら、急いで近くの家の呼び鈴をピンポンして頑丈な建物のなかに逃げ込んでね。外に出てきちゃだめだよ。もし間に合わなかったら、地面に伏せて頭部を守るのを忘れないでね」。

こういうことを彼女に言うシャバい奴は、まず間違いなく愛想をつかされます。
(T△T)

現在の日本政府は、そしてそれを支え得ている我々日本の大人は、残念ながら、こんな「シャバ僧」にほかなりません。

国防について、もっと真剣かつ現実的な議論をはじめないと、我々は、将来の日本人に顔向けできない事態に陥りそうです。

長々と失礼しますた…

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』(2017年4月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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