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「株式上手」の黒田さん。いまの日銀は国債運用が少しニガテらしい=児島康孝

日本銀行が2017年3月期決算を発表しました。国債のオペレーションはなかなかうまくいかないようですが、保有株式が2倍に値上がりするなど株式は運用上手です。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

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保有株式は「2倍以上」値上がり

日本銀行の2017年3月期決算は、税引き前の利益剰余金が7074億円(1億円以下切り捨て)でした。法人税・住民税などを差し引いた当期剰余金は5066億円。日銀が国庫に納付したのは4813億円でした。

この決算は、2016年4月1日から2017年3月31日まで(=2016年度)のものです。この決算にあわせて日銀が発表した「保有有価証券の時価情報」では、日銀の資産運用上手な様子がみてとれます。

株式は、1兆1655億円分の購入して保有したものがあり、それらの時価は2兆4923億円となっています。平たく言いますと、買った株式が2倍以上に値上がりしているということです。ごくアバウトに単純化しますと、1兆1655億円分の株式を買って、2兆4923億円になっている!という話です。

評価損益(含み益)は、1兆3268億円。これは、景気の悪い時に株式を買って、株式の保有を続ければ、おおむね儲かるという典型例です。

日銀の2017年3月期決算で、株式の運用損益(=実現損益)はプラス2175億円です。このうち売却損益がプラス1695億円ですから、日銀は2016年4月から2017年3月の間に、うまく売却して利益を出しているのです。

このメルマガでは、日銀は「日経平均2万円に近い水準では、日銀保有株式を流動性を供給して売るべき」と書いてきました。つまり、「大幅上昇するような日には、日銀は売る側にまわるべき」と書いてきましたが、それに近いような運用に成功しているようです。

これだけ買い値が低くて時価の半値以下ということですと、ほとんど今後の株式の運用では、日銀が失敗することはないと言えます。

上場投信(ETF)はややリスクも

同じく、日銀が発表した「保有有価証券の時価情報」では、上場投信=ETFの保有情報も出ています。

こちらは、価額13兆1611億円に対して、時価は、15兆9303億円。評価損益は、プラス2兆7692億円です。単純化しますと、「13兆円あまりで買ったものが、16兆円弱になっている」ということです。

良いように思えますが…。しかし、こちらは2016年4月1日から2017年3月31日までの間に、かなり急激に買い増したようです。

日銀のデータで、
2016年3月末(価額)7兆5676億円
2017年3月末(価額)13兆1611億円

というように急増しています。

昨年度で一挙に2倍近く(2倍弱)の量になるまで買ったということです。

評価損益(含み益)は、プラスではありますが、日銀保有の株式のように買値は、低くはありません。つまり、それほど安く買ってはいないということです。ですから、危険というほどではないにしても、上下変動リスクはある程度あるという状況です。

相場の急落状態で買えばある程度の下値では買えますが、さすがにリーマーンショックの頃のように、株価の水準自体(ETFの水準)が安くはありません。ですから、日銀の上場投信ETFの方は、一定のリスクはある普通の保有状態です。

Next: 一方で、日本国債の「景気刺激オペレーション」はいまいちな結果に



国債の運用は?

一方、国債の運用では、日銀はあまり長期国債を買うべきではありません。景気上昇のためには、短期金利の低め誘導が肝心なわけです(「短期の国債」購入が正解)。

短期の国債ではなく長期国債が買われて長期金利が低いということは、低金利の長期継続=デフレ傾向が長引くことを暗示するためです(=イールドカーブのフラット化)。

ですから、短期金利がかなりマイナスで、長期金利は微プラスというのが、景気刺激には一番効果的です。

さらに、日銀が長期国債を買うことで、民間銀行の国債保有リスクを日銀に無制限に移し替えたのと同じようなことが起きています。つまり、民間銀行が国債を売り抜けるために、日銀が買っているかのような状態となっているのです。

ですから、日銀は、株式の購入では運用上手であるのですが、本家本元とも言える日本国債の景気刺激オペレーションではあまり上手ではなかったということが言えます。

とはいえ、日銀もマイナス金利を導入しましたから、海外のアメリカ、ヨーロッパの景気回復の効果が波及して、今後は日本でも景気は上昇します。

企業の内部留保の積み上げで国民の所得が向上しなかったことや、低所得者への給付が、欧米に比べて一般化されていないことが、日本の景気回復を妨げています。しかし、銀座など都心の不動産価格の上昇にみられるように、景気の加速は時間の問題となっています。

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年5月30日)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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