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【カイジ】帝愛グループの紙幣「ペリカ」はなぜインフレにならないのか?=三橋貴明

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年6月18日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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金は命より重い?「1日外出券」が支えていたペリカの経済学

月給は90000ペリカ・・・!(約9000円)

福本伸行の漫画『賭博破戒録カイジ』において、主人公のカイジは帝愛の地下施設に落とされ、労働を強いられることになってしまいます。地下施設では、労働の対価として「ペリカ」という紙幣が使われています。

1カ月働き、地下落ちした「劣悪債務者」たちが得られる給金は、90000ペリカ(約9000円)。もちろん外出不可能であるため、放っておくと地下施設に「ペリカが溢れる」状況になります。

というわけで、地下では同じく債務者である「ハンチョウ」が、仲間と共に「ビール」「焼き鳥」「柿ピー」「ポテトチップス」などを販売し、他の債務者たちからペリカを「回収」します。

ちなみに、ビールは1本5000ペリカ(約500円)。地上と比較すると、2倍以上という阿漕な値段がつけられています。

どうやって地下に物品を仕入れているのか?

いったい全体、「ハンチョウたちはどのように物品を仕入れているのか」と以前から疑問だったのですが、漫画『1日外出録ハンチョウ』で明らかになりました。ハンチョウたちは、1日外出券(50万ペリカ)を使い、外出。外の卸売業者から物品を仕入れていたのです。

無論、外の世界ではペリカは無価値なので、帝愛側に依頼し、ペリカを日本円に両替(両替手数料があるかどうかは不明)。日本円で物品を仕入、地下施設に配送してもらっていたわけです。

ハンチョウの手取りは、物品を売るという「小売サービス」で創出された付加価値(粗利益)の半分(残りは帝愛が徴収)。博打での収益(債務者間のペリカの移動)もあり、ハンチョウの手元には何と2000万ペリカ(!)が貯まっていました。

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年間1億800万ペリカ発行、普通ならインフレになるはず

とはいえ、よくよく計算してみると、不思議です。帝愛の地下施設に落とされた劣悪債務者は、少なくとも100人はいます。月に1度、1人あたり90000ペリカが支払われるとすると、1年間の帝愛のペリカ発行額は、90000x100x12で、何と1億800万ペリカ(日本円で1080万円)。ハンチョウたちが仕入れる物品には限りがあるため、放置しておくと、とんでもないインフレーションになりそうです。

というわけで、インフレを防ぐためには、まずはハンチョウたちが「需要を満たすに十分な物品を仕入れる」ことに加え(在庫管理が大変そうですが)、何らかの手段で高額のペリカを帝愛側が回収しなければなりません。

つまりは、売りオペレーション(日銀の国債売却)に近いシステムで、ペリカの価値を一定に保つ必要があります。

高額な「1日外出券」がペリカを支えていた

まさに、そのために用意されたのが「1日外出券」というエンターテイメント、あるいは「サービスの供給」なわけでございますね。1日外出券の販売価格は、1枚50万ペリカ

カイジたちには「高根の花」あるいは「阿漕なやり口」に思える1日外出券の高額販売は、実は帝愛の地下施設の「経済」を健全に保つために、必要不可欠なのです。1日外出券は「高くなければならない」のでございます。

1日外出券がなければ、ハンチョウもあそこまで懸命にペリカを貯めこむことはないでしょう。何しろ、2000万ペリカを貯めこんだところで、それを消費する先がないという話になってしますのです。

実際に福本氏がそこまで考慮し、上記のシステムを組み立てたのかどうかは分かりませんが、『賭博破戒録カイジ』を読み、改めて「おカネとは何なのか?」について考えさせられたというお話です。

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年6月18日号より

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