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マレーシア第2の都市・ジョホールバルが「廃墟化」するこれだけの理由=午堂登紀雄

10月24日から一週間、マレーシア・コタキナバル、ジョホールバル、ブルネイに行ってきました。そこで今回は、現地で見たジョホールバル・イスカンダル計画の現状と未来予測を考えてみました。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)

※本記事は有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』2016年11月7号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

巨額投資「イスカンダル計画」の期待に反し荒廃の街に?現地レポ

2012年に現地不動産を購入、高まる疑念

私は2012年初頭にマレーシア・ジョホールバル(以下JB)にて不動産を購入しました。その理由は、現在進められているイスカンダル計画によって一大都市圏が開発され、人口が増加し、不動産価格が上昇してキャピタルゲインが得られる期待があったからです。

しかしあれから約5年、2016年も終わろうとしている現在、当時の判断は半分間違っていたのではないかという疑念を抱いています。それは、不動産価格が上昇するどころか、JBは廃墟の街になりそうな懸念があるからです。

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私が購入を決めた当時は、下記のような状況にありました。

沸騰するイスカンダルプロジェクト

イスカンダル計画は、シンガポールの中心街から車で30~40分にあるJBの大地を切り開き、2006年~2025年にかけてシンガポールと共同で複合経済都市を開発するというのものです。

そのメインとなるイスカンダル重点開発エリアには、コンドミニアムや戸建て村、オフィスビルはもちろん、大学やインターナショナルスクールなどの教育施設、ショッピングモール、娯楽施設や医療施設などが建設される予定です。

衣食住すべてにおいて満足できるインフラを整えることで、シンガポールからだけでなく、華僑やインド系、旧宗主国のイギリスや、イスラム国家としては最先進国としてイスラム圏からも人を呼び込み、香港-深センの関係のような、シンガポールと一体となる都市として発展させるビッグプロジェクトです。

当初はその壮大な計画に、現地の人(だけでなくシンガポール人も)は「どうせ頓挫するだろう」と思っていたそうです。これは投資家も同じで、日本人投資家の中にも、イスカンダルプロジェクトは日の目を見ないと主張する人は少なくありませんでした。

しかし走り出してみると、その予想に反して、世界各国からの投資資金も着実に流入し、予定されていた施設も次々に完成していきます。

ハリウッド映画を撮影する有名なパインウッドスタジオをはじめ、レゴランド、キティランド、といった施設はすでに完成・稼働していますし、トレーダーズホテル(現・ホテルジェン・プテリハーバー)も稼働中。教育特区としてのエデュシティ構想も進展しており、旧イギリス領だったこともあり、英系の大学・学部(マレーシア分校)も続々と誘致されています。英キャサリン妃の母校でもある英名門ボーディングスクールのマルボロカレッジはすでに開校。その正面にはラッフルズ・アメリカンインターナショナルスクールが建設中。来年にはパラゴン・インターナショナルスクール、クレッシェンド・ヘルプ・インターナショナルスクールが開校予定など、JBにはなんと13校を超えるインターがひしめき合うことになります。

そして2026年にはクアラルンプール(以下KL)とシンガポールを約90分で結ぶ高速鉄道(日本も官民あげて新幹線システムを売り込んでいます)が開通する予定で、もちろんJBにも駅ができることになっています。この鉄道は、将来はタイのバンコクとを結ぶ可能性も示唆されています。

という感じで、確かに「ハコもの」はできていて、人口も確実に増加しています。

2011年に訪問した時には閑散としていましたが、JBを訪問するたびに車の通行量も増えていて、渋滞もあちこちで起こっています(ちなみにシンガポールとJBとを結ぶコーズウェイでは、普通なら5分で渡れるはずが通勤時間帯には2時間超もかかるほど激しい渋滞に悩まされています)。

しかし、投資家目線でJBを考えたとき、かなり難しい市場になっていると感じています。

Next: 予想をさらに上回る供給過剰/居住エリアとして不便…



まさかこれほどまでの供給過剰が起こっているとは…

当時から予想はしていたことであり、新興国不動産投資のセミナーなどで話す機会があるたびに「必ず供給過剰が起こる」と注意喚起していた私ではありますが、言ってる張本人が今、供給過剰の波に飲まれています。というのも、当時の私の予想を上回る超ハイペースで新しいコンドミニアムが乱立しているのです。

たとえばシンガポールの対岸、コーズウェイから少し西方に位置したダンガベイと呼ばれる湾岸エリアでは、中国資本によるコンドミニアム群が建設されていますが、近くで見るとその物量(供給戸数)に圧倒されます。こんなに住む人はいないだろうと感じずにはいられません。

もちろん、新規のプロジェクトはJB内のあちこちで進んでおり、私が投資したプテリハーバー(プライベートヨットなどが係留できるマリーナエリア)だけでも、周辺では5つのプロジェクトが同時進行していました。そのプロジェクトも1つ1つが巨大で、1棟で何百戸もあるタワーが何本も建っているのです。

どう考えてもこれほどの供給に対し需要が追いつくはずもなく、私の物件が1年も空室で賃貸が決まらない理由が痛いほどわかります。私が買った物件には敷地内にオフィス棟もありますが、決まったテナントは1社だけ。レジデンス棟の駐車場もガラガラで、住民は1ケタ程度しか住んでいない模様です。

居住エリアとしてはまだまだ不便

古くからのJB市内はそれほど深刻な状況ではありませんが、問題は新規開発エリアです。

イスカンダルの目玉エリアであるヌサジャヤ地区は「イスカンダル・プテリ」という名称に変わり、その中でも特にメディニ地区は経済特区が設けられて企業の誘致を進めています。しかし、そこでさえ人はほとんどおらず、政府役人が住むと言われていた複合施設「ワンメディニ」もガラガラです。

というのも、周辺には生活必需品や生鮮食料品などが手に入る商店などが皆無で不便だからです。これでは人が住みたいとは思えないでしょう。イオンすら進出してこないのは、やはり人がいないから売上は成り立たないと考えているからだと思います。店がないから不便。でも集客できないから店は出てこない。だから不便であるという負のスパイラルです。

これは公共交通機関も同じく、プテリハーバーからはイミグレーション機能を持ったフェリー乗り場が開設されており、現在はインドネシア航路のみ運行されています。計画当初はシンガポール(セントーサ島)を結ぶ経路計画もありましたが(現在も計画自体はあります)、利用者数が見込めないということで、いまだ就航されていません。

さらに西のセカンドリンク(シンガポールと結ぶ橋)もガラガラで、朝晩の渋滞時はコーズウェイを通るよりも迂回してセカンドリンクを使った方が速いくらいです。

Next: 需要と供給される物件グレードのミスマッチが起こっている



コンドミニアム下層のショッピングモールは歯抜けになる?

新規コンドミニアム開発の多くは2棟、3棟、4棟といった連棟の巨大プロジェクトで、最下層部はおおむねショッピングモールになる予定です。

ショッピングモールの上が駐車場、その上がレジデンス、というのが大抵のパターンなのですが、どう考えても同じエリアに大量の店舗用地を埋めることができるとは思えません。そもそも客がいないのにあちこちのモールに同時にテナントを誘致できるはずもなく、仮に今出店しても閑古鳥が鳴くだけで、すぐに撤退ということになるのは必至です。それに、これだけのモールの売上を維持するのは、コンドミニアムの住人やオフィス労働者だけでなく、外部からの一般客が来なければ難しいと思われます。

そういえば私が投資したコンドのモールエリアにコンビニが1つ出店していましたが、10月下旬の訪問時、店内の客はゼロでした。テナントがいない歯抜けだらけのモールは、さびれた印象がして人は近づかないでしょう。しかし人がいないから売上目途が立たず、テナントも出店しない。こちらも負のスパイラルです。

そんなガラガラのモールの上階にあるコンドミニアムを買いたいと思う人は多くないことが予想され、ショッピングモール併設のコンドの資産価値は著しく低下する可能性があります(ただしこれはデベロッパーのテナント誘致力に左右されますから、たとえばKLで成功したデべロッパーの実績などを確認しておく必要があります)。

需要層と供給される物件グレードのミスマッチ

そうはいってもJBの人口は首都KLに次ぐ第2の都市。東京や大阪のように、マレーシア全土から人がやってきて、人口は着実に増えている。ならば、賃貸が決まらないはずはないのに…と思ったらからくりが。

これは現地の不動産業者から聞いた話ですが、増えている人口の内訳のほとんどはマレーシア人にもかかわらず、供給されるコンドミニアムは高級路線に偏っており、そこにミスマッチが発生していると言います。

デベロッパーが考えるのは、どうせ同じ規模の物件を建てるなら、高く売れた方がいいということ。となると、お金持ちの外人・外国資本を獲得したい。しかしマレーシアでは100万リンギット規制(外国人は100万リンギ以上の物件しか買えないという規制。為替レートを1リンギ25円とすると2,500万円以上)があるため、そうならばどうしても100万リンギ以上の物件を建てたがる。

そのため、現地人の感覚からすると、手が届かない高価格帯の物件ばかりが供給されることになります。すると月給10万円前後のローカル国民が払える賃料のグレードには程遠く、もちろん住宅ローンを組んだとしても購入できる価格帯ではありません。

こうしてローカル向けの安価な物件は数が足りない半面、彼らには縁のない高級物件は借り手がおらず余るということになるわけです。この現象はまだ続いており、これから売り出されるプロジェクトの多くも高価格帯路線。このミスマッチは拡大こそすれ、縮小される気配は今のところありません

Next: 今は貸せないし売れない時代。そしてイスカンダルは廃墟に



今は貸せないし売れない時代

つまり今のタイミングでは、日本人が買ったような物件は、貸すことも難しければ、売るに売れないということになります。

実際、最近の新規プロジェクトの完売率は平均して6割から7割程度と言われており(ローカル向けの安価なプロジェクトは完売するものもある)、家が余っているのに転売することはもっと難しいというのは誰でもわかる話です。

かつてマレーシア不動産ブームの時、日本人の販売仲介会社はさかんに「完成前に売り抜ければ、残金の用意は不要だしキャピタルゲインも得られる」と言っていましたが、今となっては当然そんなことはムリ。現実にも、転売できず残金も用意できない購入者によって、あちこちでキャンセルが起きているそうです。

私は常に「場所選びが重要」ということを主張してきましたが、ここまで過剰の上に過剰を塗り重ねられると、もはや場所の良し悪しなど関係ない、まさに手の打ちようがありません。

しかもローンを組んでいれば、空室が続く限りローンの返済だけがのしかかってくるわけで、リンギット預金は目減りする一方、あるいは日本から何度も送金して補填しなければならなくなるのは日の目を見るより明らかです。実際そうなっている人がほとんどで、返済苦のため売却したいという日本人もちらほら出てきていると聞きました。

しかしこんな状況では売りたくても売れないし、大幅に値段を下げて(つまり多額の損切りをして)やっと売れるかどうかです。ただし、2014年以前の50万リンギ規制(1,300万円)のころにギリギリ50万リンギくらいで買った人や、それ以前にMM2H(マレーシア・マイセカンドホーム:10年更新型の長期滞在ビザ)を取得し安く買った人は、それでも転売益は出ているようです。このくらいなら、ローカルの人たちでも住宅ローンを組めばなんとか手が届く価格だからです。

イスカンダルはそして廃墟に

中国の内陸都市では、マンションばかり建っているものの、誰も人がおらず、夜もどの部屋も明かりがついてない廃墟地域が増えていると聞きます。有名なのが内モンゴル自治区のオルドス市でしょうか。

もちろん、JBにはそれなりの人口があるため同じようにはならないとしても、街中ではたくさんの人がにぎわっている一方で、ガラガラの高級コンドミニアムが多数放置されている、という状況にならないとは限りません。いや、少なくともイスカンダル・プテリ地区(旧ヌサジャヤ地区)においては、当面の間はゴーストタウンが続く可能性が高いなという印象です(今でも夜は真っ暗です)。

個人的な願望としては、イスカンダル地域開発庁はもちろんジョホール州政府は、ハコもの行政に偏るのではなく、もっと企業の誘致に重点を置いてもらいたいということ。もちろん尽力はしているはずですが、弱すぎるという意味です。

企業が進出して雇用を創出し、海外駐在員やシンガポール人、学校関係者といった所得の高い居住者が増えれば、外国人が買った高額物件であっても、需要は活性化するでしょう。

一方で、私自身が経営者視点に立てば、やはり賃金の安い労働力を使いたいと思うはずで、そうした期待はあまり持てないかもしれないな、と感じています。それに、仮に駐在員が増えたとしても、これほどの数の人が来るとは思えません。そのくらい高価格帯の物件の数が多すぎるのです。

となると、イスカンダル・プテリを始め、旧JB市内以外のイスカンダル重点開発地域で本格的に人口増の恩恵を受けられるのは、高速鉄道が開通する2025年以降の可能性が濃厚です。KLやシンガポールのほうが平均所得は高いため、彼らが移り住んでくれれば…というわけです。しかしあと10年も先…しかもその計画も遅れるかもしれないし…(高速鉄道は当初、2018年開通予定と言われていました)。

また、シンガポールのMRT(大量輸送システム、いわゆる地下鉄)がJBに延伸する計画もあり、これもシンガポールに通勤する人をJBに誘因できる期待の大きいインフラ計画です。そして、もしそうだとすると、現金で買った人や移住など実需目的の人はともかく、投資目的、つまりインカムゲインやキャピタルゲイン目的でローンを組んで買った人の多くは、あと10年もの返済の垂れ流しに耐える必要があるわけです。いや、耐えられない人のほうが多いかもしれません。

Next: 計画がとん挫するリスクはあるのか?



計画がとん挫するリスクはあるのか?

では、イスカンダル計画が途中で頓挫するリスクがあるのか?という点については、これはかなり低いと考えています。というのも、すでにジョホール州政府庁舎はヌサジャヤ(現イスカンダル・プテリ)に移転していますし、政府やスルタン(王族)の資本が入ったデベロッパーが多数開発しているため、彼らの威信にかけてもひっくり返すということはないでしょう。

また、総投資額10兆円という巨額な投資目標に対し、2006年からの累計で2016年時点ですでに5兆円以上の投資が決定しています(実行ベースでは約3兆円弱)。折り返し地点としては、まずまずのペースと言えます。

いずれにせよこれからの10年、投資家は損切り撤退か、耐えて待つかのどちからの判断を強いられることになるでしょう。なお、原油安とナジブ首相のスキャンダルでリンギットはリーマンショック並みに下落していますから、預金の補填や繰り上げ返済をするには悪くないタイミングと言えそうです。

一方で、私がアメリカ・カリフォルニアに投資した物件は、ほとんど空室期間が長引くことなく順調に稼働しています。やはり先進国の中間所得層における住宅市場の分厚さを感じます。

そんな違いを見て最近感じているのは、不動産投資初心者は、まず日本国内か先進国など住宅市場が成熟している場所で始め、余裕ができたら新興国へ、という順序のほうがカタそうだな、ということです。現実にも上記と同じような供給過剰状態はマレーシアに限らず、タイ、カンボジア、フィリピン、ベトナムなど、東南アジア諸国で共通して起こっている事象です。

たとえば、ちょっと前までは駐在員が住みたいような良質な居住物件が圧倒的に不足し、キャピタルゲインだけでなくインカムでも高利回りが期待できたカンボジア・プノンペンでさえ、今後供給ラッシュを迎え、未来は不透明になりつつあります。

どの国も、需要を吸収し切れないであろう数の新規大規模プロジェクトが目白押しで、買っている人の約半数は外国人。全供給戸数の何割かはローカルに売らなければならないという規制がある国もありますが、先に売れているのは外国人枠で、ローカル枠は売れ残っているというプロジェクトも散見されます。現地人が殺到して買っているような物件を選ぶとか、たとえばハワイのようにそこにしかない希少性の高い特徴ある立地・物件を選ばなければ、出口に苦労するリスクが高くなるでしょう。

Next: リスクを回避・軽減するために。二段構えの投資戦略



二段構えの投資戦略

そうしたリスクを回避・低減するためのひとつのアイデアは、新興国不動産投資をするときには、複数の目的が達成できるようにしておく、というものです。

私の場合、子どもの教育を一定期間、マレーシアでしたいという考えもあり、JBで不動産を購入したという理由もあります。マレーシアはイスラム圏とはいえ、他民族・他宗教国家で、多種多様な価値観に触れることができます。また、インターでは英語に加えてマレー語や中国語でも授業が行われるなど、マルチリンガル教育が基本です(スペイン語やフランス語を選択できる学校もある)。国際バカロレア(IB)認定校なら世界への進学の門戸が開かれていて、それが日本のインターの学費の半分以下(学校による)。そして、子どもが一人ならともかく3人の予定のわが家では、中高合わせて10年くらいは現地に家族で移住することになりますから、拠点としての住まいは無駄ではなかろう…(もっとも、私たち夫婦は日本での仕事がメインのため、行ったり来たりという生活になるとは思いますが)。

それに、もし人口増が予想を下回るペースが続けば、インターの定員割れで学費が抑えられる可能性もゼロではありません(インターが閉校したら元も子もありませんが)。つまり、冒頭で「当時の判断は半分間違っていたかもしれない」と書きましたが、間違ってはいなかったであろう残りの半分は、「予想通り子どもの教育に適した都市になりつつある」という点です。

もちろん子どもの個性や適性にもより、それが良い結果となるか悪い結果となるかはわかりませんが、子どもには世界レベルで戦える基盤づくりとしての機会を与えてあげたいと考えています。

というふうに、仮に不動産投資で儲からなくても、もうひとつの目的である移住・教育が達成できれば御の字である…という二段構えの戦略です。あるいは大好きな国・都市にホテルコンドのような運営形態の物件(ホテル運営会社に管理を任せ、通常はホテル運用、年に何回かはオーナーが無料で泊まれる)にする買い方も、余暇と実益を兼ねられる投資手法です。

投資目的は人それぞれですが、計画通りには必ずしもならない新興国不動産投資のリスク軽減策のひとつとして、複数の目的を設定し、どれかがダメでもどれかは達成できるようにしておくことは、一考の余地があると思います。

ちなみに私の場合、不動産投資だけでなくFXでも同様に、高金利通貨を下落時に買うという方法を取っています。仮に含み損が出て塩漬けになっても、その間はスワップポイントで稼ぎ、相場が回復すれば決済して為替差益を取るという二段構えです(現状はチャイナショックにやられて涙目ですが)。自宅屋根の太陽光発電も、20年間は全量売電、その後は自宅で使用する電源に切り替える予定です。

Next: 体験を経験に、経験を教訓に、教訓を新たな判断軸に



体験を経験に、経験を教訓に、教訓を新たな判断軸に

ここまでが、2016年11月時点でのマレーシア・ジョホールバルに関する私の考察です。これを読んで「いや、自分が感じているのはちょっと違う」という意見もあるでしょう。その場合は、本人の感性を信じていただければよいと思います。

あるいはJBへの投資を見送った投資家や評論家気取りのブロガーからは「そら見たことか。ざまあみろ」などといった揶揄の言葉も聞こえてきそうです。が、あとからなら何とでも言えるわけで、リスクを取らないで他人に石を投げつけるような人は、そもそも何も成し得ない人種ですから無視するに限ります。

それに、これは現時点でのピンポイントの考察のため、100%失敗だと決まったわけではありません。将来の変動要因は複数あるにも関わらず、それを現況がそうだからとあれこれ他人を批判する人がいるとしたら、それは時間軸や環境変化に対する洞察が鈍いだけ。たとえば、かつて楽天がスタートしたときも、すぐに潰れるとか、ソフトバンクがボーダフォンを買収したときも借金多すぎて失敗だとか、当時はいろいろ批判する人がいましたが、彼らは今やピエロですよね。だから、そんな人たちの発言に耳を傾ける価値はありません。

それはともかく、もし私と同じ感想を持っている人は、ぜひこの経験を、より一段成熟した投資家になるための教訓として自分の中で昇華してみてはいかがでしょうか。ただ嘆くとか、目をつぶるとか、安易に逃げ出すのではなく、自分の判断の元となった根拠を振り返り、その合理性を検証するのです。その繰り返しが、次への新しい判断軸の形成につながるはずです。

そしてこれから新興国不動産投資を検討している人は、上述の私の経験と印象もひとつのリスク要因として、あるいは判断材料としてお役に立てれば幸いです。


※本記事は有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』2016年11月7号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』(2016年11月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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