クレディセゾンの林野社長曰く、私のビットコインについての見解は、他の誰の意見とも違いオリジナリティに溢れているという。どういうことか説明しよう。(『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』房広治)
※本記事は有料メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』2017年10月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
アメリカ、イギリス、香港など主要金融センターで著名な日本人投資家。留学中に外資系銀行に就職し、わずか10年で日本のインベストメントバンキングのトップに。投資家転向初年度に年率リターン90%以上の運用成績を出し、ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤーとなる。
「ビットコインバブル」という嘘の嘘、それはくるりと裏返る?
仮想通貨バブルの実態は「基軸通貨バブル崩壊」
最近、よくビットコインについて尋ねられる。クレディセゾンの林野社長は、私の意見は、他の誰の意見とも違い、オリジナリティに溢れているとおっしゃる。先週、林野社長に申し上げたのは、以下の通り。
ビットコインの高騰は、アメリカのFRBや欧州中央銀行、イギリス中銀が、2008年のリーマンショックで完全に実体経済と貨幣供給量のリンクを諦めてしまったことが背景にある。
現在、IMFのSDR(特別引出権)という、「金」に替わる「通貨」の元になる基軸通貨――ドル、ユーロ、日本円、中国元、イギリスポンド――のうち、中国元を除くすべての中央銀行は、実体経済とのリンクを諦めたと発表している。
日本が諦めたのは、1997年である。これは、アメリカのドルがヨーロッパに滞留してユーロドルマーケットができたことと、金本位制度が崩壊したことでのドル安が混合した結果であると私は思うのである。
すなわち、ドル、ユーロ、円、ポンドは、世界の外貨準備に使われる基軸通貨だと思われているが、実体経済とリンクしている国の通貨があれば、それと比べてドル安、ユーロ安、円安、ポンド安になっているはずなのである。
そこに「金」を彷彿とさせるビットコインが出現したので、対ビットコインで主要通貨が軒並み下落している状態なのだというのが私の説明である。
なぜJPモルガンCEOは「ビットコインは詐欺」と言うのか
林野社長からの、「なぜ、JPモルガンのJamie Dimon氏はビットコインを詐欺だというのか」という質問に対しては、JPモルガンはFRBの株主なのだと思う(FRBは政府機関ではなく民間の組織で、その株主は公表されていない)。だから、ドルの市場占有率が下がることが望ましくないと自然に思うのだ、と答えた。
Next: ビットコインは今後どこまで利用されるようになるのか?私の考え
ビットコインは今後どこまで利用される?
また「今後、ビットコインはもっと使われるようになるのか」という質問に対しては、以下のように回答した。
ビットコインは、貨幣の進化の中で重要な試みであり、成功を収めた。そして、サイバーマネーは、これからもどんどん進化する。仮想通貨などと和訳するからおかしく聞こえるが、「サイバーマネー」と称すればもっとイメージが湧くはず。
すなわち、紙幣、コイン、現金、金は、移動させるのにコストがかかる。サイバーマネーはほぼ電力代しかかからない。この差は100万分の1ぐらいのインパクトがある。
ビットコインの問題点は、マウントゴックスのような詐欺事件が起こってしまうように、(1)セキュリティ-対策に対して責任者が不在であること。また、(2)支払いを承認する第三者が必要だということ、(3)プライバシーが保護されているということである。
仮想通貨にはまだまだ進化の余地がある
ビットコイン開発者のナカモト氏が論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」の6章「インセンティブ」で述べているように、ビットコインは「金」を彷彿させるように設計されている。そして、CPUの使用時間、電力代、そして第三者取引を監視している労働力が取引コストとして残り、これは改良の余地がある。
これはすなわち、取引コストをもっと小さくできることを意味している。そのため、ビットコインと同じぐらいかそれ以上に簡素化したシステムにして、記録コストを最小限にできる能力の高いサーバーを使えば、サーバーが銀行の決済の役割を自動的にすることが可能となるはずなのだ。
そのようなサーバーを使えば、論文の3章「タイムスタンプサーバー」、4章「プルーフオブワーク」、5章「ネットワーク」、7章「ディスク・スペースをリクレイムする」、11章「計算」で書かれていることがより簡単になり、セキュリティーも強化でき、さらに貨幣を進化させることができるのだ。
また、プライバシーについては、プライバシーを保つとマネーロンダリングに使われるという問題が出てくるので、全部、実名での取引記録を残すサイバーマネーが出てきたら、まともな取引はそちらのシステムで行われる可能性が高いと思う。
結論としては、仮想通貨はまだまだ伸びると思うが、ビットコインは、まだまだ進化させる余地があるということになる。
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『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』(2017年10月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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