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苦境に立つ「伝説の空売り投資家」ジム・チャノス氏、最後の勝負手とは?=江守哲

今年の米国市場において、伝説の空売り投資家ジム・チャノス氏が運営する2つのヘッジファンドが苦戦を強いられています。しかしその動向は注目に値します。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年10月16日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

テスラ暴落に自信?伝説の空売り師ジム・チャノスの気になる動き

苦戦する「空売り」専門の米ヘッジファンド

米国のヘッジファンドには「空売り」を専門とするところが少なくありませんが、その中でも有名なのが、伝説の空売り投資家として知られるジム・チャノス氏です。彼が運用する2本のヘッジファンドは、今年の市場で苦戦を強いられていると報じられています。

ブルームバーグによると、ヘッジファンド運用会社キニコス・アソシエーツの創業者チャノス氏が運用する「クリティコス」の9月の成績は約1%の損失で、年初来のマイナスは10.7%に拡大したようです。

また、もうひとつのファンド「ウルサス」の9月の成績は2.2%の損失で、年初来では6.5%のマイナスとなったようです。

これに対してS&P500は年初来でプラス16%のリターンとなっています。

ヘッジファンドは、伝統的資産である株式や債券などと異なるリターンが出ることから、投資家からすればまさにヘッジの目的で投資します。

ですので、株価が堅調な時に大きく損失さえ出さず、逆に株価の値動きが乏しいときや、株価が下げているときにプラスのリターンが出ると、投資をする意味があるという評価になります。

いまは株式市場がきわめて堅調ですので、リターンは出なくてもよいのですが、マイナス幅が大きくなると、それはそれで問題になります。

単純に「割高」という判断で売るのは難しい

さて、チャノス氏は20億ドル余りの資金を運用しており、相場の下げに賭ける数少ない大規模ファンドの運用者の1人として市場では有名です。私も名前はよく知っています。

しかし、このような空売りファンドは、下げ相場では強みを発揮しますが、市場全体が上げているときには厳しくなります。米国株は08年の金融危機の局面で付けた09年の安値から約4倍になっており、苦戦するのは仕方がないともいえます。

16年の運用成績がマイナス50%だったクリスピン・オデイ氏の欧州株ロング・ショート戦略は、今年も年初から9月中旬までマイナス14%となっているといいます。

また、金融危機のとどめを刺したリーマン・ブラザーズを空売りして利益を上げたことで知られるデービッド・アインホーン氏は、同氏が「バブルのバスケット」と呼ぶテクノロジー株の空売りに慎重と言われています。

さすがに上昇している株式を、単純に割高という判断で売るのは難しいといえそうです。

もっとも、その企業に問題があり、それを突いて空売りすることに収益の源泉を見出すのであれば、それは上昇相場でも十分に機能する戦略といえます。

Next: 自信満々? 好調「テスラ」の株価下落に賭けるチャノス氏



「テスラ」の株価下落に賭けるチャノス氏

チャノス氏は、借り入れが極端に多い資本構成で「構造的に赤字体質」と指摘する電気自動車(EV)メーカーのテスラの株価下落に賭けているといいます。

テスラ株は年初から68%値上がりしており、依然として強気の中にいます。しかし、チャノス氏は自ら描いたシナリオに自信を示しているといいます。

ちなみに、チャノス氏はアリババ・グループ・ホールディングの空売りも行っていましたが、これを諦めました。今年1月には空売りを閉じていたようです。アリババ株はその後2倍以上に急騰しており、この判断は正しかったともいえます。

他の投資家と違うことをやってこそ

いずれにしても、空売りファンドは今かなり厳しい状況にあるといえます。

ヘッジファンドは「エッジ」の効いた戦略で収益を上げるからこそ、投資家の目を引くわけです。他の投資家と同じことをしていては、投資家の資金は集まりません。リスクを上手くコントロールし、リターンを挙げることは簡単ではありませんが、それがヘッジファンドの仕事です。これからも、このような空売りファンドの動向には注目していきたいと思います。

ちなみに、チャノス氏が運用する買いポジションを持ち、幅広い資産に投資するヘッジファンドは運用成績が好調のようです。ひとつは年初から9月までにプラス15.2%、もうひとつもプラス18.2%となっているといいます。

ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、ヘッジファンドの1~9月の運用成績の平均は資産加重ベースでプラス4.3%ですので、かなり高いリターンを挙げている部類に入るといってよいでしょう。

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2017年10月16日号の目次

・マーケット・ヴューポイント~「上昇トレンドは不変、ただし10月には要注意」
・株式市場~米国株は連日の過去最高値更新、日本株も21年ぶりの高値に
・為替市場~ドル円は膠着だが、理論値から見るとやや割高
・コモディティ市場~金は大台回復、原油はいまだに割安
・今週の「ポジショントーク」~基本戦略は不変
・ヘッジファンド投資戦略~「空売り屋の苦境」-投資戦略構築のポイント~
・ベースボール・パーク~「土曜日・日曜日は雨で野球は中止」
・セミナー・メディア出演のお知らせ


本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年10月16日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した日米株式、コモディティ各市場の詳細な分析(約2万2,000文字)もすぐ読めます。

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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