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スティグリッツ教授も太鼓判!? 安心で平等な「預金封鎖社会」を実現する方法

「社会的不公正や貧富の格差をなくすには、紙幣の廃止と電子マネー化が必要だ」との主張があります。ダボス会議でも真剣に議論されていますが、この大義名分は本当なのでしょうか?(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2017年1月26日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

なぜ今、世界中の中央銀行が高額紙幣を廃止したがっているのか?

ダボス会議の重要議題になった「現金の廃止」

2017年1月の「ダボス会議」、正しくは「世界経済フォーラム」の最重要議題は、現物紙幣の廃止と電子マネー化です。

「所得および保有資産の偏在による不平等が全世界に蔓延し、大衆が怒っている。このままでは社会が分裂してしまい国際的なリスクを招く。その対策として、高額紙幣の廃止と電子マネー化が必要だ」――という三段論法です。

現在の社会的不公正、資本主義における貧富の格差をなくすために、透明性を高めるために必要なのが「紙幣の廃止」と「電子マネー化」だと言うのです。これは、本当なのでしょうか?

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以下は「ダボス会議」で発表された「世界経済フォーラム」サイト内の記事です。
The US should get rid of cash and move to a digital currency, says this Nobel Laureate economist

ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授は、米国は紙幣を廃止して、電子マネーに移行すべきだと語った」としています。以下、記事のポイントです。

スティグリッツ教授「現金が闇経済の成長を促進してきた」

インドでは、脱税防止、汚職防止、闇経済壊滅のために紙幣の86%を廃止した。米国も同じ事をすべきなのだろうか?少なくともスティグリッツ教授はそう考えている。

ダボス会議の初日に、スティグリッツ教授は、
「時間をかけて紙幣をなくし電子マネーに移行させれば、コスト以上の利益が得られるだろう。国際化のマイナス面は、国際金融市場における透明性の欠如、タックスヘイブンである。不正取得した利益を簡単に隠すことができるし、脱税もできる。これを防ぐ国際的枠組みが必要だ。不正な手段で得た利益は、非常に簡単に租税逃避地に隠匿できるのだ。もし、そのような容易な隠匿ができないようにすれば、不正行為は減るだろう」
と語った。

この種の腐敗と戦っていない国の1つが米国であり、その解決法が「現金廃止と電子マネー化」だ。

「米国のような国では、電子マネー化を進めるべきだ。そうすれば、不正な資金移動を追跡できる。個人情報をどうするのかという重要な問題があるが、マネーの電子化には大きな利点があるのだ」

ダボス会議でキャッシュレス社会を提唱しているのはスティグリッツ教授だけでなない。ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授も、「現金」が闇経済の成長を促進したと指摘しており、キャッシュレス社会を唱えている。

ロゴフ教授は、普通の一般市民による正当な取引で高額紙幣が使用されるケースは稀であり、廃止すべきだと主張し、「現金紙幣には保有者の名前が記載されていない。だから犯罪に使用される。高額紙幣は携帯するにしても隠匿するにしても非常に簡便ゆえに、特に問題なのだ」と主張している。

Next: ロゴフ教授「キャッシュレス社会が不法移民増加を阻止する」は本当か?



ロゴフ教授「キャッシュレス社会が不法移民増加を阻止する」

もう1つ、「ダボス会議」でのロゴフ教授の主張をご紹介します。この人物については当メルマガでも過去に何度も解説してきました。来日もしていますし、日銀で講演もしています。
Kenneth Rogoff: Why we need a ‘less-cash society’

タイトルは「現金紙幣の少ない社会にすべき理由」といった意味で、この記事のポイントは以下になります。

毎年毎年、数十兆円に相当する米ドルが発行されている。主要国家の中央銀行がペーパーマネーを世界中に氾濫させている。その大半は100ドル紙幣(日本円換算で1万円強)である。

米国国民1人当たりの保有現金は4200ドルで、その8割が100ドル紙幣。日本の場合、国民1人当たりの保有現金は7000ドルで、その9割程度が1万円札だ。この高額紙幣が、違法な闇経済の成長を促している。

完全なキャッシュレス社会は可能だとは思わないし、すぐには実現しないと考えているが、現金紙幣を減らすような社会は可能だと考える。電子カード、電子送金、携帯電話支払いの増加に伴い、現金紙幣の使用はこのところずっと減っており、特に巨額取引においては減少している。

中央銀行の調査では、一般市民、一般ビジネスで高額紙幣を保有したり使用する比率は減少している。

現金には保有者の名前が記載されておらず、高額紙幣は犯罪に使用されやすい。100万ドルを100ドル紙幣で運搬・保有するにはブリーフケースで充分だし、同じく100万ドルを500ユーロ紙幣にすれば財布で持ち運びできる。

企業においては、登録されていない労働者を雇用する場合に現金支払いを利用している。これは不法移民増加の大きな要因だが、現金紙幣を減らすことで鉄条網より人道的な移民制限を行えるのだ。

ECBは最近、500ユーロ紙幣の廃止を公表している。またギリシャイタリアでは、一般的な日常必要品の購入で使用できる上限額を決めて、現金紙幣の使用を減らす努力をしている。

Next: キャッシュレス社会が目指すのは「皆に平等な預金封鎖」かもしれない



キャッシュレス社会が目指すのは「皆に平等な預金封鎖」かもしれない

大手の金融機関が破綻した場合、結局その戦後処理は、ベイルイン方式(金融機関の内部が損失を負担する)によって救済するしかありません。これは以前からメルマガ内で指摘してきたとおりです。

このベイルイン方式では、破綻の規模にもよりますが、預金者の預金も部分的に没収される可能性があります。

株主の保有する株券や投資家の所有する銀行債券はすでに電子化されていますので、短時間に没収、価値を減らせます。しかし、それだけでは足らない場合には、預金者の預金を没収する必要があるのです。

キプロス破綻の際の実例を思い出してください。そのような場合、問題となるのは預金者が銀行窓口やATMに殺到して現金を引出そうとする「取り付け騒ぎ」です。

これを防ぐには紙幣そのものを廃止し、できるだけ電子マネーとして銀行に預けさせることです。紙幣全体を廃止できなくても、せめて高額紙幣をなくせば、銀行には電子マネーとして預金されるのですから、これは銀行にとって非常にありがたいことです。

電子化されたマネーが銀行のサーバー上にあれば、預金の部分的没収は短時間で完遂できます。

銀行の破産を防ぐ一番迅速で簡単な方法は、すべての債務を切り捨てることです。それを短時間で完遂するには、電子マネーが必要です。現金をなくせば、預金者は窓口に殺到しないし、そうなれば暴動も防げます。大きなニュースにもなりません。ほぼ平等に全員が損失を被るなら不満も少ないでしょう。金融システム全体から見れば、銀行の機能さえ生き残れば良いのです。

ロゴフ教授は、前掲の記事の中で「米国では100ドル紙幣(1万円強)、日本では1万円札」が高額紙幣にあたると指摘しています。つまり、日本の闇経済をなくすには、1万円札を廃止すべきだと主張しているわけです。

この件に関して、日本の学者は何も言及していないのに、他国の学者に言われてしまうとは――これは内政干渉でしょうか?
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・ロシア金準備2016年11月(1/5)
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いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2017年1月26日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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