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カード嫌いの日本人はなぜレジで行列中も「現金払い」に固執するのか?=岩田昭男

世界のキャッシュレス化が猛烈な勢いで進行する中、日本のクレジットカード利用率はかなり低い水準です。なぜ、日本人は現金を選ぶのでしょうか?(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

※本記事は、『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2017年10月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
岩田昭男の上級カード道場:http://iwataworks.jp/archives/12912

クレジットカードは信用できない?揺るがぬ誤解、日本の現金主義

急拡大するキャッシュレス社会

経産省が実施している「特定サービス産業動態調査」では、2016年度のクレジットカード(ショッピング)の取扱高は48兆9,179億円で、前年比7.2%の伸びとなりました。

発行枚数も約2億5,000万枚で、成人については1人あたり約3枚のクレジットカードを持っている計算になります。これらの数字から日本社会がいよいよキャッシュレス化に向けて本格的に動き出したといえます。

さらに電子マネーデビットカードなどの普及が、それを後押ししているのも要因の1つでしょう。2016年度の電子マネーの決済金額は5兆円を突破し、前年比7.9%増でした。発行枚数もクレジットカードをしのぐ3億3,600万枚と多くなっています。これら電子マネーなどの普及がキャッシュレス市場を拡大させており、共用端末の普及によりシナジー効果が出ているものと思われます。

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「クレカを持っているのに使わない」日本人

たしかにビジネスマンやOLの財布を見せてもらうと、ほとんどの人がクレジットカードを複数枚持っています。しかも、コンビニやスーパー、百貨店での毎日の買い物でこれらのカードが大活躍しています。

今やクレジットカードは私たちの生活になくてはならないツールとなっています。こう言うと、日本でのキャッシュレス化は猛烈な勢いで進んでいて世界でもトップレベルにあると思ってしまうのですが、それは間違っています

世界的に見るとキャッシュレス化の指標である「消費支出に占めるカード利用の割合」は日本が17%でこれは先進国ではビリに近い数字なのです(クレジットカードの他にデビットカード、電子マネーなどを含む)。

例えば、米国は41%ですし、中国は55%オーストラリアは63%カナダは68%、お隣りの韓国は何と73%もあるのです。それに比べて日本は、長い間10%前後で伸び悩んできました。最近になってやっと17%になったのです。したがってクレジットカードの利用がまだまだ少ない国というわけです。

セキュリティに問題がある?

しかし、これは日本人の気質・性格に関係しているといわれます。私もそう思います。クレジットカードのセキュリティに関して、みなが強い警戒心を抱いているからです。

現金なら安心して使えるが、クレジットカードは不正に使われたり、なくしたりしやすいから危ないと感じているのです。だから、多くの人が現金から離れず、クレジットカードの普及が進まないのです。

Next: 完全に誤解。日本人はクレカ払いのどこに不安を感じている?



ネット通販で根強いセキュリティ不安

それは総務省の調査データからもはっきり裏付けられています。総務省が全国の15,000世帯を対象にインターネット利用の調査「平成27年通信利用動向調査の結果」を実施しました。その中でネット決済全般について調査していますが、ここからその結果を抜き出してみましょう。

まず、どれくらいの人がネットショッピングを利用しているのでしょうか。インターネットを利用している人の利用目的・用途をみると、「電子メールの送受信」「天気予報の利用(無料のもの)」「商品・サービスの購入・取引」などある中で、第1位は「電子メールの送受信」で、74.3%と最も多く、つづいて第2位は「天気予報の利用」で、54.2%、第3位が「商品・サービスの購入・取引」となり、インターネットを買い物に利用している人が、全体の53.3%(複数回答)ありました。

その人たちの決済方法をみると、「クレジットカード払い」の割合が69.2%と最も高く、次いで「代金引換」が39.0%「コンビニエンスストアでの支払い」が36.1%となりました。

クレジットカードの割合が7割というと、そこそこ多いとは思いますが、いずれも複数回答ですし、私はネットでの支払いならもっと使われて良いのではと思います。逆に言えば、代引きなどが4割以上あるということは、より安全に現金で支払いをしたいという思いがその中にあることを物語っています。

はっきりいえば、クレジットカードのセキュリティが不安なので、現金に流れているということではないでしょうか。それがクレジットカード普及の足かせになっていると思われます。

「代引き」依存症

また、多くの人が代引きを選ぶ理由についても「なるほど、そうか」と分かる調査結果もでています。

インターネットを利用している世帯のうち、「少し不安を感じる」、「不安を感じる」と回答した世帯の割合が合わせて78.6%となり、8割近くの世帯が不安を感じていることがわかりました。

また、どんな不安か、その内容については、「個人情報が外部に漏れていないか」の割合が80.4%と最も高く、次いで「コンピューターウィルスへの感染」(77.9%)「迷惑メールが来ること」(47.3%)となっています。

とくに第1位の「個人情報が外部に漏れていないか」の不安は、ネットに接続している限り、毎日のように感じるところですし、ネットで買い物するとカード情報を店の店員に抜かれるのではないかと怖くなります。

Next: 現金よりもカードのほうがよほど「安全」である理由



「お金のやりとりが目に見えない」から危ない?

この調査から、私のようなことを思っている人が多く、やはりクレジットカードのセキュリティへの不安が異常に強いということがわかります。

クレジットカード払いにすると、お金のやりとりが目に見えないし、どこでどんなリスクにあうか分からないので、少しでも自分で確認できる代引きを選んで現金で払うようにしているのです。カードより現金の方が安心でセキュリティも高いと考えているのです。

たしかに加盟店でカード情報が漏洩したとか、カード番号を盗まれて不正に使われたといった事件がたびたび報道されるので、ネットでカードを利用するのは危ないと皆が思っているようです。

進化してきたカード会社のセキュリティ対策

しかし、実際は現金よりカードのほうがよほど安全であると私は思っています。現金を盗まれるとまるまる損をします、現金を落としたとしても返ってくる可能性は非常に少ないのです。

それに比べるとクレジットカードの場合は、不正に使われたとしてもそれを証明できれば使われた金額はしっかり返ってきます

また、カードの偽造防止の技術もしっかり装備されています。最近はICカードが採用されて、2020年を目処にすべてのクレジットカードにICチップの搭載が義務づけられますので、今後はカード番号を盗んだり、なりすましをすることも難しくなってきます。

さらにネットショッピングではなりすまし防止のために「3Dセキュア」という方法が用いられるようになってきました。

これは、Visa、マスターカード、JCBの国際ブランドが行っているもので、買い物の最終段階であらかじめ決めておいた自分固有のパスワードを打ち込むので、他人の利用を防ぐことができるというものです。

利用するたびにパスワードが変わるワンタイムパスワードという技術も登場し、犯罪防止に役立っています。

このようにカード会社のセキュリティ対応は日増しに高まっていますから、現金が優位という時代ではなくなりつつあります

Next: 購入商品が破損・盗難・水没しても安心な「付帯保険」で安全性アップ



まとめ:カードは現金以上に安全に買い物ができる

以上、クレジットカードとセキュリティの関係をみてきました。カード絡みの犯罪はまだ多く、カードのリスクはゼロとは言えません。しかし、現金に比べると様々な技術を採用して、はるかに堅牢になっています。十分に気をつけて使えば、カードは現金以上に安全に買い物ができます

それでも不安になる人にはショッピング保険等、付帯保険の付いたカードをおすすめします。とくにショッピング保険は、カードで買い物した商品が破損・盗難・水没といった場合に、その修理費を補償してくれますから安心です。

【関連】就職も結婚もできない「クレジットスコア超格差社会」に突入する日本=岩田昭男

<参考:ショッピング保険が充実したクレジットカード>

・イオンカード:自己負担なし、補償期間180日間、補償金額300万円
・ヤフージャパンカード:自己負担3000円、補償期間90日間、補償金額100万円
・リクルートカード:自己負担3000円、補償期間90日間、補償金額200万円

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達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2017年10月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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