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次期FRB議長は誰だ? 有力候補者5名の金融政策が市場に与える影響まとめ=児島康孝

次期FRB議長の選定作業が進んでおり、来年2月の任期に向けてマーケットの関心が高まっています。有力視されている5人の候補について、それぞれ解説します。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

トランプはアジア歴訪前に決断の見通し。5人の金融政策シナリオ

有力候補は5人

まったく個人的には、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が市場への発言で優れていて、議長に適任であると思っています。しかし残念ながら、ダドリー氏は議長候補に挙げられていません。

有力視されているのは、パウエルFRB理事の昇格、イエレン議長の続投、ウォーシュ元FRB理事、スタンフォード大学のテーラー(テイラー)教授、コーン国家経済会議委員長という顔ぶれです。

市場への影響は小さい?パウエルFRB理事

パウエルFRB理事は、ムニューシン財務長官がトランプ大統領に推薦したと報じられています(米政治メディア「ポリティコ」より)。路線はイエレン議長に近いとされ、市場のサプライズは小さいのが特徴です。一方、大物とは言えず目立った存在ではないので、FRBのトップとして様々な難局に対応する場合、グリーンスパン氏やバーナンキ氏のように「アク」が強いわけではありません。

このため、市場のサプライズを避け、小さいリスクで議長交代を進めるには適任と言えるでしょう。ですが、トップとして君臨してFRBを率いるうえでは、長い目でみると少々不安も感じられます。

イエレン議長の続投もアリ

イエレン議長の続投も検討されています。イエレン議長は、民主党系であり、先の大統領選挙のときには露骨にヒラリー・クリントンを支持するかのような姿勢を見せたため、当初は「続投はあり得ない」と思われてきました。

しかし、最近はトランプ大統領に対する批判もせず、またトランプ大統領も「いい仕事をしている」と語っています。アメリカの株価が高い状態であり、ビジネスマンとしてのトランプ大統領からの評価は高いでしょう。

また、FRB議長が交代するとほぼ必ず市場の混乱が起きていますから、アメリカの株高を維持するということを最優先すると、イエレン議長の続投が無難ということになります。

ですから、アメリカ経済が好転しているので「FRB議長を変える必要がない」とトランプ大統領が判断することも、十分にあり得るのです。

一方、このままトランプ政権の政策に異を唱えないで、次の任期を全うするかどうかについては、トランプ政権は懐疑的でしょう。

株価の維持を最優先するか、それとも政権維持に対するリスクと考えるのか。ここがポイントとなるでしょう。

Next: 実際の金融政策面は未知数のテーラー教授ほか、各候補の下馬評



意外とタカ派ではない? ウォーシュ元FRB理事

ウォ─シュ元FRB理事は、タカ派の金融政策で市場を混乱させるのではないかと危険視されています。

しかし私は、パウエルFRB理事の話とは逆に、長期的に考えればウォーシュ元FRB理事も適任であると考えます。

今後、FRBは金利の引き上げを進める時期に入ってきます。恐慌の時期には恐慌の専門家のバーナンキ氏が議長であったように、これから金利を引き上げる過程では、ウォ─シュ元FRB理事が議長となっても歴史の必然のような気もします。

また、ウォ─シュ元FRB理事が単なるタカ派であるのかというと、そうではないと思います。現状の経済は、過去の雇用の喪失が大きかったために、以前のようにすぐにインフレにはならないという考え方も持っています。柔軟に経済の現状を分析する人物でもあるのです。

FRB議長人事の報道では、ウォ─シュ元FRB理事がタカ派であることと、市場を混乱させるという話が強調されていますが、詳しく主張を見ますと必ずしもそうではありません。とはいえ、ウォーシュ元FRB理事がFRB議長に指名されれば、短期的な市場の混乱は避けられないでしょう。

短期の混乱を避けるのか、長期的な先の事を考えて人事を行うのか、悩ましいところでしょう。

金融政策面は未知数のテーラー教授

スタンフォード大学のテーラー教授は、「テーラー・ルール」といわれる中央銀行の金融政策(政策金利)決定の算式を考案したことで有名です。インフレ率やGDP(国内総生産)をもとに、望ましい政策金利の水準を算出するわけです。

この「テーラー・ルール」は、インフレ率やGDPが高まれば金利を引き上げるという、現在の中央銀行の金融政策と概ね整合性があります。しかしながら、FRB議長にふさわしい「大物」である一方、実際の金融政策をどのように行うのかは、意外とわからない部分もあります。

コーン国家経済会議委員長は圏外?

コーン国家経済会議委員長は、当初は次期FRB議長に有力視されていましたが、トランプ大統領を批判した頃から雲行きが怪しくなり、現在はあまり有力視されていません

叩き上げでゴールドマン・サックスを上り詰めた人物であり、トランプ大統領と似た感じの経歴を持つ実力者です。反面、エリートコースを歩んできたわけではないため、FRBには向いていないとする意見もあります。

さて、このような感じで、次期FRB議長の選定作業が進められています。FRBは世界の金融市場を大きく左右する存在であるだけに、来年2月の任期に向けて、マーケットの関心が高まっています。

Next: 市場は2018年初めに調整入り?そろそろポジション調整のタイミング



中期の景気サイクル

中期の景気サイクルは、年末から来年(2018年)初めにかけてピークを迎え、下降転換します。

今回の中期サイクルは、超長期の景気サイクルが上昇している中での調整で、大型のクラッシュにはならないと思われます。しかし、中期サイクルが転換しますと、景気は下降に向かいます

2017年の日経平均は、4月に18000円台まで下落して警戒されましたが、当メルマガで上昇するとお伝えしてきましたように、再び2万円を突破して高値水準にあります。

保守的な投資家はポジション調整を

保守的な投資家の場合、中期の景気サイクルが下降転換する前に、ポジションを若干、調整します。超長期の景気サイクルが強いので、大きなクラッシュは予想されないとはいえ、中期のサイクルが転換しますと、それなりの調整があります。

ポジションを調整しておいた方が、無難でしょう。全部を売り切るのではなく、ポジション調整です。さらに上がれば残りのポジションが上がっていきますし、下がればポジションを減らしていて助かった、というやり方が保守的な投資家の手法です。

ドル円は上値が微妙に

2017年のユーロ円は、122円付近から132円付近へと、ユーロ経済圏の景気の上昇に伴ってセオリー通りに上昇しました。

ドル円は、北朝鮮リスクが大きかったことや利上げが遅れていることもあり、上昇が鈍くなっています。ドル円は、円安予想であるものの、2016年に比べて上昇は鈍いと言ってきましたが、もう少し戻っても良さそうな感じでした。今年の残りで、もうひと上げはあるのか。あるいは、もうこれぐらいで、ぐずぐずして終わるのか。微妙なところです。

いずれにしましても、中期の景気サイクルは転換する時期を控えており、そろそろポジション調整をすべきタイミングとなってきています。

FRB議長が新任なら要注意

さて、次期FRB議長の人事がどうなるか。繰り返しになりますが、イエレン議長が続投すればあまり影響はないと思われますが、新任の場合はいつも就任前後にマーケットが調整します。

いわば、洗礼のようなものですが、来年(2018年)2月にはFRB議長が交代するタイミングと、トランプ大統領の就任1年というタイミングが重なります。ですから、中期の景気サイクルは、2018年初めにそれなりに調整しても不思議ではないのです。現状の日経平均株価は、中期に限れば高値圏といえるでしょう。

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長期景気予測

上昇(20年~30年単位)

中期景気予測

2017年の年央まで:円高・株式はレンジ
2017年の年央から:円安・株式上昇
2017年末または2018年初めから:景気調整局面へ

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年10月9日, 14日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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