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終わるハネムーン相場。2月10日は「株・為替急落」のXデーとなるか?=長谷川雅一

安倍総理と麻生財務大臣が2月10日に訪米しますが、そこでトランプ大統領にいったい何を言われるか?トランプ政権発足直後、浜田内閣官房参与は「またプラザ合意のようなことがあるかもしれない」と発言しました。状況から、実際に今回また、似たようなことになる可能性があると言えないでしょうか?「平成のプラザ合意」があるかもしれない、ということです。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017/1/30号より)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

「円高がいいね」と君が言ったから二月十日は離婚記念日?

先週後半のリスクオンは「ハネムーン相場」

先週の相場は、週初に「円高・株安」の動きになったのち、水曜日以降は、NYダウが「悲願」だった2万ドル突破を成し遂げたことなどが材料視されてリスクオンとなり、日経平均は19,500円付近まで、為替(米ドル/円)は115.37円付近まで上昇しました。

「長谷川は、トランプ新大統領で相場は混乱する。これからは『円高・株安』だ、と言ってたけど、何だよ、株も為替も上がってるじゃないか。ここは、やっぱり『買い』じゃないのか?」と思った方も、いらっしゃるかもしれません。

僕は、先週後半の上昇については、「一時的な上昇。いわばハネムーン相場だろう」と考えています。そして、この先の相場については先週と同様、「円高・株安」の傾向がしだいにハッキリしてくるだろう、という見方を変えていません。

いろいろな情報を頭に入れて整理してみるのですが、どう考えても、これから相場は「円高・株安」に動くとしか思えないのです。

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僕は「強気」でも「弱気」でもないし「自信」もない

僕は、自分の予想について「100%当てるぞ」などという自信はありません。

年末に、僕は、「トランプ相場は終わらない。日経平均は22,000円を目指すだろう」と予想しましたが、先週号でそれを撤回し、「日経平均2万円は、もう無理」と予想を変更しました。

しかし、相手は相場です。もしかしたら、このあとも先週末に見られたような「リスクオン」の相場が続き、日経平均は軽く2万円を突破し、やがて22,000円程度まで上昇、となるかもしれません。

結果的に、「あららー。最初の予想を撤回しなければよかった!」ということになるかもしれないわけです。

僕が、年末に出した予想を撤回したことについては、「長谷川が強気から弱気に転換」などと捉えられたかもしれませんが、僕自身は、もともと「強気派」でも「弱気派」でもありません。強いて言えば「その場派」です。(笑)

マーケットを取り巻く状況は、どんどん変わります。僕はいつも、その場その場で、集められる限りの情報を集め、それに自分の経験と直感を加えて、「このあと相場はこうなるのでは?」と予想しているに過ぎません。

読者の皆様と同じような立場である僕に、特殊情報も何もありません。ですから、僕の情勢判断が間違っている可能性も大いにあります。どうか「参考程度」にお読みいただければ、と思っています。

今週は「ノートレード」がベスト

特に今週は、日銀の金融政策決定会合米FOMC米雇用統計など、イベントが目白押しです。そこに、トランプ氏の言動が加わるわけですから、相場がどちらに振れるか、その予想はきわめて困難です。

ですから、僕が「円高・株安」を予想しているからといって、「じゃあ、売ってみるか」というのは、どうかと思います。

トランプ就任後の現在、相場はひどく不安定です。僕は、「ここで積極的に売買するのは無理。トレードしないで様子を見るのがベストだ」と考えています。

このあと、もう一度、「相場は、なぜ円高・株安に動きやすいか?」という、その理由を述べてみたいと思いますが、以上のような前提のもと、お読みいただければと思います。

Next: 「有色人種国家」日本に牙をむくトランプ。平成のプラザ合意はあるか?



アメリカの予告

アメリカがTPPを破棄して、その代りに日本と「2国間の貿易協定」を結ぼうとしており、その場合「為替操作防止」について「極めて厳しい規定を入れる」と予告していることは、ご存知の通りです。

僕はこれが、日本にとって「大きな問題」になると考えています。トランプ新大統領は、なぜか「貿易赤字」に過敏に反応します。

自国の貿易収支を改善したければ、自らの「減税、インフラ整備、規制緩和」という政策を撤回して、ドルを安く誘導すれば簡単に実現できるのですが、それをやろうとはせず、「日本などが不公平な貿易をしているから貿易赤字になるのだ!」と他国の「せい」にするわけです。

また、同じ白人国家である「ドイツ」については、なぜか貿易赤字について、あまり文句を言いません。彼は、有色人種の国家に対して「牙をむく」のです。その意味でも日本は不利です。

「平成のプラザ合意」がある?

1985年(昭和60年)に「プラザ合意」というものがありました。1ドル=240円だったドル円は、約1年で150円まで円高となり、さらに1年後には120円と、「プラザ合意」前の2倍の円高水準になりました。

トランプ政権発足直後に、浜田内閣官房参与が、「また、プラザ合意のようなことがあるかもしれない」と発言しました。

状況から、実際に今回また、似たようなことになる可能性があると言えないでしょうか?「平成のプラザ合意」があるかもしれない、ということです。

「プラザ合意」のとき、「為替相場の安定化を図る」という名目で、日本は円高を受け入れることになりましたが、その実態はアメリカの利益追求でした。

今回は「為替操作防止」という名目で、アメリカから円高圧力がかかる可能性があります。

円高でも日経平均は大丈夫?

「最近は、多少円高が進んでも、日経平均は平気で上昇する。『円高=株安』という連動性は薄れた。もう大丈夫だ」という声が聞かれます。しかし、僕の考えは少し違います

確かに、115円~113円まで円高が進んでも、日経平均はあまり影響を受けませんでした。

僕は、「このレベルならまだ円安水準だから、日経平均への悪影響が少ないのだろう」と考えています。「円高だと言っても、110円台なら大丈夫」ということではないか、と。つまり、円高がもっと進めば、必ず影響は出てくると思うのです。

日本にとって大丈夫な為替水準は、アメリカにとっては不利です。113円~115円は、日本にとっては大丈夫。すなわち、アメリカにとっては「不公平」な水準であると思われます。

Next: アメリカにとって「公平な為替水準」とは1ドル=何円なのか?



アメリカが目指すは1ドル=105円以下

では、アメリカにとっての「公平な為替水準」とは、いかほどか?僕は「105円以下だ」と考えています。

この水準(105円以下)まで円高が進むと、日本政府は決まって、「為替の急激な変動は好ましくない」などと、文句を言い始めます。円安がいくら急激に進んでも、文句ひとつ言わないのに。(笑)

日本政府が文句を言う1ドル=105円以下の水準は、逆にアメリカにとっては「ありがたい」水準です。

つまり、このあとアメリカが「目指す」為替(米ドル/円)の水準は、ズバリ105円以下だと思うのです。

今後もし、米ドル/円が110円を割り込んで、100円に接近する動きになったら?さすがに日経平均にも影響が及ぶでしょう。積極的に株を買うわけには、いかなくなります。

2月10日が「Xデー」になる?

2月10日に、安倍総理と麻生財務大臣が、トランプ大統領に呼び出されて訪米しますが、そこでいったい何を言われるか?生やさしい話にはならないと思いますが、あなたは、いかが思われますか?

もしも、アメリカがハッキリと、「今の日本の金融政策は、円安誘導だ。為替操作だ」と言って、金融政策の見直しを求めてきたら?

日本は、日銀の国債買い入れも、株式市場への介入も、マイナス金利などの低金利誘導政策も、今まで通りには、できなくなる可能性があります。

そうなったら、現在115円付近にある米ドル/円は、簡単に100円付近まで下落しかねません。さらに、たとえ100円近くまで円高が進んでも、文句も言えなくなる可能性があります。

文句も言えないまま、100円で止まらない円高になったら?それは、まさに「プラザ合意」の再来でしょう。

円高が進んだとき、「1ドル=100円だが、日経平均は22,000円だ」といった状況が、はたして「ありえる」でしょうか?さすがに、それは難しいと思います。

2月10日が「Xデー」にならなければいいのですが。

Next: 可能性は低いが――リスクオン相場が続くための条件とは?



リスクオンが続く可能性も

もしも、トランプ氏が、「日本は大切な同盟国だから、多少の円安はいいだろう。許そう」と言ってくれれば、上記のような心配はなくなります。

円安、株高が進行し、日本はニコニコです。しかし、それって「アメリカ・ファースト」でしょうか?それで、アメリカの「貿易赤字」が解消できるでしょうか?

答えは、いずれも「ノー」です。となれば、日本が円安を容認してもらえる可能性は小さそうです。

もちろん、僕の見方は「局所的」かもしれません。アメリカ企業の業績はおおむね堅調だし、雇用の状況もかつてないレベルにまでよくなっています。

こうした状況下で、アメリカ株も堅調、日本株もそれに追随、というシナリオを描けないわけではありませんし、トランプ大統領下の世界経済について、ポジティブな見方をしている人が少なくないことも知っています。

現に、先週も相場はリスクオンでした。このリスクオンが、まだしばらく続く可能性も、あると思っています。

混乱が落ち着くまでは「様子見」が無難

ただし僕は、「先週末からの活況相場は、本当のリスクオンではなく、一種の混乱だ」と解釈していますし、相場は最終的に「円高・株安」に落ち着くと思っています。

今後も、トランプ氏がアメリカの大統領である限り、政治経済の「混乱」が続くことは間違いなく、トランプ政権の「初期段階」では、とりわけ相場も不安定になりがちです。

その「不安定さ」には「一時的なリスクオン(株価やル円の上昇)」も含まれます。僕は、先週末からのリスクオンを「活況」だと解釈して「買う」のは危険だと考えています。

もしも今、あなたがノーポジション(持ち株なし)なら、この「混乱」が落ち着いて、市場の方向性がハッキリするまで、少し様子見をされてはいかがでしょうか。

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長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017/1/30号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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