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我が国の“脱ガラパゴス税制”で、世界は「日本のビール」に酔いしれる=山田健彦

酒税法が改正され、ビール系飲料にかかる酒税が段階的に統一される見通しになりました。統一後は、ビールは減税、発泡酒などは増税となります。今回の酒税統一は、これまでのメーカーの創意と工夫を台無しにすると同時に、安価なビール系飲料を求める庶民いじめという見方も頷けます。しかし、見方を変えると悪いことずくめでもないようです。(『資産1億円への道』山田健彦)

酒税統一は、内気な「日本のビール業界」が世界へ飛び立つチャンス

異様に高い日本のビール税

酒税法が改正され、ビール系飲料にかかる酒税が段階的に統一される見通しになりました。

現行の税額は350ml当たり、

となっています。

統一後は、ビールは減税発泡酒などは増税となります。

【関連】さらば発泡酒! 酒税改正に揺れるビール業界、生き残りの条件とは=栫井駿介

ところで日本のビールの酒税額は国際的に比較して極めて高く、ドイツの19倍、アメリカの9倍となっています。

350mlあたりに占める酒税負担額は、下記となっています。

しかも日本の場合、消費税は酒税を含めた価格にかけられ、二重課税となっています。

日本のビールメーカーは、この国内のビールに課せられた高い税額に対処するため、味はビール風ですが「税額の低い」低価格商品の開発に注力してきました。メーカー側の創意と工夫で、消費者の要望に応える新商品を開発・供給してきたわけです。

今回の酒税統一は、これまでのメーカーの創意と工夫を台無しにすると同時に、安価なビール系飲料を求める庶民いじめという見方も頷けます。しかし、見方を変えると悪いことずくめでもないようです。

いびつな税制がメーカーの体力を消耗させてきた

ビールメーカーはこれまで、このいびつな税制の影響で、発泡酒やリキュール系のビール飲料の新ブランドを立ち上げては廃止することを繰り返し、開発、販売にお金や要員などを割いてきましたが、今後はこれらのものに社内資源を割かなくても良くなります。

実際、発泡酒やリキュール系のビール飲料は、国内はともかく、海外では全くと言って良いほど売れていません。さらに価格競争による国内シェア争いは経営の体力を奪いました。ビール系飲料全体の市場規模1994年のピーク時より3割減っています。

Next: 韓国の人々が、日本のビールを飲みながら日本の悪口を言っている!?



和食ブームにより、アジアで受けている日本のビール

ビールメーカー各社はこの税制統一を機に、世界市場を見据えた質の高いビール開発に力を入れることができるようになります。

世界のビール業界では近年、買収によりトップ企業グループへのシェア集中が進んでいます。

日本メーカーが規模の競争でこれから欧米企業に太刀打ちするのは簡単ではないと見られていますが、韓国、台湾などのアジア向けを中心に、日本のビール輸出は毎年2割以上のペースで伸びています。訪日観光でファンになった人などが日常的に購入するようになってきたのです。

各社が近年、相次ぎ買収した海外の酒メーカーの持つ生産設備や販路も、うまく活用すれば、欧米でも日本のビールの勝機は十分あるという見方をしている専門家もいます。規模は大きいが内向きだったビール業界が、いかに国際プレーヤーに脱皮するか。他の内需型産業に手本を示してほしいですね。

海外の和食ブームを追い風に、日本酒の輸出が伸びている」というニュースはよく見かけますが、日本食に合う日本のビールというものも脚光を浴びているようです。海外の日本食レストランは15年夏時点で約8万9000カ所。すし屋などで料理と一緒に日本酒、日本のビールを提供するスタイルが定着しています。

財務省貿易統計によると、平成27年度の酒類の品目別輸出金額では、ビールの輸出額は85億5千万円。対前年度比で129.9%。酒類の輸出金額合計の21.9%を占めています。

主な購買国は、下記となっています。

なにかといえば日本に批判的な韓国ですが、噂によると「人々は日本風の居酒屋で日本のビールを飲みながら日本の悪口を言っている」との冗談のような話もあります。

このように見てくると、日本のビール会社にも投資妙味が出てくると思われますが、何せビール系飲料の税額統一が完了するのは2026年10月の予定で9年以上先ですから、今はゆっくりと各社の研究をしておくのが良いかと思います。

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資産1億円への道』(2017年2月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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