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Googleはさらに成長する!そのカギとなる「たった1つのKPI」とは?=シバタナオキ

Googleの親会社「Alphabet.Inc」の決算を詳しく見ていきます。スマホ化の波にうまく乗っており、今回の決算発表でも非常に大きなブレークスルーがありました。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2017年11月7日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

スマホ化の波に上手く乗って急成長。Googleの次なる進化とは?

非常に大きなブレークスルー

2017年7月~9月期の決算公表が、アメリカの企業を中心に始まっています。

今回は、Googleの親会社であるAlphabet.Incの決算を、久しぶりに詳しく見てみたいと思います。

Googleはスマホ化の波に乗り遅れることなく、これまでもYoY+20%以上のペースで成長をし続けていますが、今回発表された決算で、非常に大きなブレークスルーが1つありました。

売上・利益も前年同期比大幅増

初めに、決算の全体像を詳しく見てみましょう。

売上は$27.8B(約2兆7,800億円)で、YoY+24%で成長しています。営業利益は$7.8B(約7,800億円)で、営業利益率が28%と、前年同期に比べて利益率も向上しています。

売上と営業利益の規模の大きさもさることながら、この規模でありながらもYoY+20%以上のスピードで成長を続けているという、まさにモンスター企業です。

Googleの全体売上$27.8B(約2兆7,800億円)の内、$24.1B(約2兆4,100億円)は広告による収入です。

今回はこの広告収入部分に関して、非常に大きなブレークスルーがありましたので、詳しく見てみたいと思います。

Googleの広告モデル

Googleのようなインターネットの広告ビジネスのKPI(企業目標の達成度を評価するための重要業績評価指標)を分解すると、以下のようになります。

広告売上 = 広告クリック数 x クリック単価
広告粗利 = 広告売上 – トラフィック獲得コスト

業界の人には当たり前かもしれませんが、広告売上は広告のクリック数とクリック単価を掛け合わせて算出されます。つまり広告のクリック数とクリック単価の両方を上げていくことができれば、成長率が高まるわけです。

一方でもう1つ忘れてはいけないのは、広告の粗利です。

インターネット広告の場合、必ずしも広告を掲載する媒体が、自社の媒体であるとは限りません。他社が管理する媒体にGoogleが広告を掲載する場合、レベニューシェアのような形で媒体に対して、媒体費用を支払うことになります。

そのような費用のことをGoogleの決算では「トラフィック獲得コスト(TAC, Traffic Acquisition Cost)」と呼んでいます。

それでは、これらのKPIを1つずつ見ていきましょう。

Next: Googleの「止まらない成長」を確信させるKPIとは?



広告クリック数はこれまで通り大幅増

初めに広告のクリック数を見てみます。

クリック数の絶対値はいつも開示されませんが、広告クリック数はYoY+47%、QoQ+6%と、非常に早いペースで成長が続いています。

このトレンド自体はこれまでと同様で、特にAndroid Oがグローバルで80%を超えるマーケットシェアを誇っていますので、スマホが売れれば売れるほど、Googleの広告が掲載される「面(媒体)」が増えることになり、広告のクリック数がこのような高い成長率で増え続けている、というのが、Googleのここ数年間のトレンドです。

クリック単価がついに上昇へ

次に、広告のクリック単価を見てみたいと思います。

広告のクリック単価はYoY-18%になっています。このクリック単価のマイナス成長も、これまでのトレンド通りです。

なぜクリック単価が下がるかと言うと、Googleの広告売上の中で、PCにおける広告売上はおそらく減少傾向か、良くてもフラットな状態である一方で、スマホの広告売上が圧倒的に増えています

クリック単価を考えると、PCにおける広告の方が、クリック単価は圧倒的に高い傾向にこれまでもありました。スマホが登場する前はGoogleのビジネスはほぼ100%、PCにおける広告であったため、Googleの売上に占めるスマホ広告の割合が増えれば増えるほど、そしてスマホ部分の成長率が高ければ高いほど、クリック単価は下がっていくことになるわけです。

今回注目すべきは、前四半期ベースで見るとかなり久しぶりにプラスに転じた、ということに尽きます。

Techcrunchのグラフが一番わかりやすいのでそちらを掲載しますが、このグラフにあるように、これまではYoYでもQoQでもマイナス成長が続いていたのが、ようやく今回プラスに転じたというわけです。

この、クリック単価がプラスに転じたという事実は、Googleの広告ビジネスを考える上では、非常に重要な点になります。

これが意味するところはおそらく、PCにおける広告売上の減少のスピードを、スマホによる広告売上の増加のスピードが大きく超え始めた、という非常に意味のあるティッピングポイントになるからです。

広告クリック数自体はYoY+40%を超えるスピードで成長していることになりますので、クリック単価が下げ止まれば、Googleの広告ビジネスの成長スピードはさらに加速することが十分期待できるでしょう。

Next: 一部で懸念されている「トラフィック獲得コスト上昇」は心配なし



トラフィック獲得コストが上昇しているのはなぜか

最後に、今回の決算でアナリストたちから最もネガティブに捉えられていたのが、トラフィック獲得コストの上昇です。

この表を見ればわかる通り、Google全体の広告売上のうち、23%がトラフィック獲得コストとして計上されており、その数値が上昇していることが読み取れます。

このように、トラフィック獲得コストが上がっていることをアナリストたちは嫌っているわけですが、個人的にはあまり問題がないのではないかと感じています。

トラフィック獲得コストが上がっている理由は大きく分けて2つ考えられます。

1つ目は、AppleのiPhoneに検索エンジンを提供することで、Appleに対して非常に大きな媒体費用を払っていることです。このAppleへの媒体費用は年々増加を続けており、このインパクトが少なからずあることは否めません。

もう1つは、スマホにおいては検索連動広告よりも、ディスプレイ広告の方が伸びが早い、という点です。Googleはもともと検索エンジンの会社ですが、AdSenseやアプリにおけるAdMobなどを含めて、ディスプレイ広告の売上も非常に大きな会社です。Googleの広告売上におけるスマホの割合が大きくなればなるほど、全体としてはディスプレイ広告の売上が大きくなります。

検索連動広告とディスプレイ広告を比べると、検索連動広告はほぼ自社が運用する媒体、つまりGoogle.comで提供される場合が多いため、トラフィック獲得コストは総体的には小さいわけですが、ディスプレイ広告の場合は、他社の媒体に広告を配信するケースも多いため、相対的にはトラフィック獲得コストが大きくなります。

従って、トラフィック獲得コストが上がっているという点だけを見ると、必ずしもポジティブではないのかもしれませんが、逆に考えるとスマホ化の波に上手に乗っているとも言えますので、個人的にはあまり心配する必要はないのではないかと思います。

【関連】あまり報道されないけど頭に入れておくべきGoogle関連「6つの指標」=シバタナオキ

以上、今回はGoogleの決算を久しぶりに詳しく見てみました。

中でも、広告のクリック単価が上昇軌道に乗り始めたというのが、見逃すことができない非常に大きなニュースなのではないかと思います。

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image by:lightpoet / Shutterstock.com

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決算が読めるようになるノート』 2017年11月7日号『Googleの成長が更に加速しそうだと思わせるたった一つのKPI』より抜粋
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