Googleが新しいスマートフォン「Pixel2」を発表しました。今回は同社の得意とするソフトウェア開発と強みと、逆にあまり得意でない分野について解説します。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
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SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
あらゆる領域をソフトウェアで置き換えるGoogleが持つ弱点とは
Google、スマホ新機種「Pixel 2」を発表
先日、Googleの新しいスマートフォンである「Pixel 2」を初めとして、複数のハードウェアが発表になりました。正直に申し上げると、想定していたよりも遥かに進化した製品が発表された、という印象です。
本稿では、Googleの得意とするソフトウェア開発、そしてそのソフトウェアが飲み込もうとしている世界、さらにはGoogleが逆にあまり得意でない世界の話を、少ししてみたいと思います。
まずは個人的に非常に驚いた機能を2つ紹介してみたいと思います。
驚き1:「翻訳コンニャク」並のヘッドフォン
1つ目は、Googleが初めてリリースすることになるワイヤレスヘッドホン「Google Pixel Buds」です。
最近のスマートフォンはヘッドフォンジャックが廃止されていく傾向にあり、今回Googleが発表したPixel 2も例外ではありません。
Appleの「Air Pods」然り、ワイヤレスのヘッドホンが必要になってくるわけですが、今回のGoogleのワイヤレスヘッドホンは、ただのヘッドフォンではありませんでした。
実際に発表会の際のデモのビデオを見ていただくのが早いと思いますが、このワイヤレスヘッドフォンは、Pixel 2と接続することで40カ国語に対応したライブ翻訳が可能になるというものです。
これを実現するためには、高性能なワイヤレスヘッドホンとしての機能だけではなく、正確な音声認識と正確な翻訳技術が必要になりますが、それはまさにGoogleのお家芸だったというわけです。
驚き2:レンズ1つでボケを作れるカメラ
もう1つ驚いたのは、カメラの性能とその実現方法です。
カメラというのは、スマートフォンの中でも利用頻度の最も高いアプリケーションのうちの1つとも言うことができ、カメラの重要性を強調しても強調し過ぎることはありません。
最近の高性能スマートフォンでは、裏側のカメラには2つのレンズを有していることが多くあります。iPhone 8 plusやiPhone Xなどは、2つのレンズを使うことで、ポートレートモードでの撮影を可能にしています。
ところが今回Googleが発表したPixel 2のカメラは、レンズが1つしかないにも関わらず、ポートレートモードでの背景ぼかしが可能になりました。
Googleは一体どのようにしてそれを実現しているかと言うと、物理的に2つのレンズを用いるというハードウェアによる方法ではなく、ソフトウェアで実現している、という説明がありました。
Pixel 2のカメラの性能の高さはこのポートレートもモードだけに限らず、カメラの性能評価サイトである DXOMmarkによると、iPhone 8 plusよりも高いスコアが出ています。
「ハードウェア」から攻めるApple、「ソフトウェア」から攻めるGoogle
こうして見てみるとGoogleが、もともとAppleが得意としていた、スマートフォンやヘッドフォンなどのハードウェア領域に侵食してきていることがよく分かるわけですが、そのアプローチの仕方があまりにも対照的です。
スマートフォンの進化が、ハードウェアのスペックという点においては一段落してきたこともあり、各社発表する上位機種を見る限り、ハードウェアのスペック、搭載するCPUやメモリに大きな差が出なくなってきました。
Appleの場合、スマートフォンに搭載するCPUチップから自社で設計を行い、ハードウェアからOSソフトウェアまで、ベストなユーザーエクスペリエンスを提供するために、垂直統合的アプローチをとっています。
そしてAppleの強みは何かと聞かれれば、他のソフトウェアメーカーにはできない、ハードウェアとソフトウェアの密接な連携を可能にしている点だと言えるでしょう。
一方で、Googleのアプローチは全く逆です。最近になってようやくHTCのスマホ部門を買収しましたが、Googleは完全にソフトウェアの会社であり続けていきました。
AppleはAppleで、ハードウェアを起点とした強みを生かし続けている一方で、GoogleはGoogleで、コモディティ化するハードウェアの中でも、際立つソフトウェアとアプリケーションで強烈な差別化を図ってきています。