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さらに貧困化する日本人。「エンゲル係数急騰」本当の理由=内閣官房参与 藤井聡

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年2月21日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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エンゲル係数急上昇の理由は「自炊離れ」や「プチぜいたく」ではない

日本経済「成長」のトリック

日本経済にも「春」が訪れてきているような記事も配信されている今日この頃ですが…。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO13071030X10C17A2EN2000/

客観的なマクロ経済データを踏まえれば、決して「楽観」できない状況にあることが明確に見えて参ります。

もちろん日本経済は、2013年のアベノミクスの第二の矢である10兆円補正予算の執行によって、確かに「成長」することができました。2013年には名目1.7%、実質2.0%の成長率(暦年)が記録され、物価も確かに下落傾向から上昇傾向へと転じました。

しかし、2014年4月の消費増税が、そんな日本経済に大きな「冷や水」を浴びせかけます。消費増税によって消費が冷え込むと同時に、世帯収入も低迷、結果、成長率が大きく低迷していくことになります。

…とはいえ、昨年2016年の成長率を確認すると、名目1.0%、実質1.3%と、かつてよりは低い水準ではありますが、未だに成長しているように「見えて」います

しかし、これにはトリックが隠されています。

そもそもGDPは、内需と外需(純輸出)の合計で表されます。その「サイズ」でいえば、外需のサイズは全体の1.3%にしかすぎません。つまり、その大半が「内需GDP」なのです。で、この「内需GDP」に着目すると、10兆円の補正予算が行われた2013年の成長率は、名目も実質も2.4%であった一方、昨年2016年の成長率は実質で0.5%にまで低迷しているのです。そしてなんと、名目でいえば、-0.04%と「マイナス成長」に陥ってしまっているのです!

2014年の消費税増税がマイナス成長をもたらした

こうした内需GDPの「マイナス成長」をもたらしたのはもちろん、2014年の消費税増税。ついては下記のグラフをご覧ください。

このグラフは、2011年から今日までの四半期毎の内需GDPの成長率を(外需も合わせたトータルのGDPの成長率:青点線と一緒に)表したものです。

ご覧の様に、アベノミクスが始められた2013年から、内需GDP成長率は少しずつ上昇していきます。そして、消費増税直前の2014年1-3月期には、実に4%を超える成長率を記録します。しかし、消費増税が導入されて以降、内需成長率は着実に低下していきます。そして、昨年2016年に突入してからはほぼ0成長の領域に突入し、4-5月期、7-9月期は、「マイナス成長」に至ることになります。

こうして、2016年の内需GDPは、トータルとして「マイナス成長」を記録することになったのです。

Next: 日本人はなぜ「食うのがやっと」になってしまったのか?



日本人はなぜ「食うのがやっと」になってしまったのか?

こんなに低い内需GDP成長率が継続しているのは、民主党政権下で東日本大震災が起こった2013年の第一四半期から第三四半期の頃ぶりのこと。つまり、今の日本経済は、「東日本大震災クラスの経済被害を被った状況」とほぼ同様の状況にあるという次第です。

繰り返しますが、その背景には、消費増税によって消費が大きく冷え込んでしまったという事実があります。ただし、人間は食べないと生きていけません。したがって、消費が冷え込んだとしても、「食費」だけは大きく減らすことはできません。だから私たちは、消費増税以降、食費を削る代わりに「食費以外」の消費を縮小せざるを得なくなるのです。

そうなると必然的に上昇するのが「エンゲル係数」(出費に占める食費支出の割合)。下記のグラフをご覧ください。

ご覧の様に、消費増税が行われた2014年4月以降、我が国のエンゲル係数は、尋常でないスピードで急速に上昇しているのです!

言うまでもなくエンゲル係数は、その国の国民の貧困さのレベルを表すものであり、したがって、発展途上国か先進国かによって大きく異なるものです。エンゲル係数は国民の貧困さが高い発展途上国は必然的に高く、裕福な国民が多い先進国では低いのです。

この点を加味すると、このデータは、我が国は今、消費増税以降、急速に「貧困化」が進んでいるということを示しています。つまり、消費増税が我が国の「後進国化」をもたらしているという次第です。

冒頭で引用したような「楽観論」がどうやらわが国には存在しているようなのですが、以上のデータを踏まえるなら、わが国は決して楽観できるような状況ではないのです。

こうした客観的な事実に基づいた、適切かつ大胆な経済政策が展開されんことを、心から祈念したいと思います。

p.s.「適切かつ大胆な経済政策」の具体的な中身については、自著『国民所得を80万円増やす経済政策──アベノミクスに対する5つの提案(犀の教室)』(晶文社)を是非、ご参照ください。

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