足もとの相場はNYダウだけがひとり堅調さを維持しているものの、ドル円はレンジで日替わりで乱高下を繰り返し、日経平均もまったくぱっとしない状況が継続して疲弊感が強まる展開。そんな中で今年も「3月危機説」が登場しました。今回は「3月15日暴落説」となりますが、いったい何がそんなに危ないのか?について触れておくことにします。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2017年2月20日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
事前に可視化された3つのリスクと「想定外」にどう向き合うべきか?
(1)3月15日=米国の債務上限問題の期限
「米国の債務上限問題」は、毎年登場するリスクとして、もはや市場に欠かせないものになってきていますが、今年も3月15日にその上限引き上げ法案の期限がやってくることになります。
通常であれば、これがリスクになるとは思えないわけですが、どうもトランプ政権は最初からガタついており、今年はすんなりクリアできないのではないか?という危機感をもつ向きも存在するようです。
米国は、政府債務の上限を議会で決めていて、その上限を超えられない規則になっています。この国は1962年以降、債務上限引き上げを75回行っており、いわば定石ともいえる問題ですが、今回期限を越えると債務上限が復活することから、米国債の発行に影響が出ることになります。
足もとで米国の債務はすでに20兆ドルに膨れ上がっているわけですが、国の規模からいえば日本のほうがはるかに深刻な状況です。そして今後トランプが減税と財政支出を繰り返せば、債務はさらに増加することが予想されます。
(2)もう1つの3月15日=オランダ総選挙
今年は、欧州各国の選挙イヤーとなっているのはご存知のとおりのことと思われますが、その皮切りとなるのが3月15日のオランダの総選挙となります。ご他聞に漏れず、このオランダでも極右政党やポピュリストの台頭が進んでいることから、まさかの選挙結果がでるのではないかとの危機感が高まりつつあるのです。
最新の世論調査によると、ウィルダー党首率いる極右政党・自由党は定数150議席の下院で30議席を獲得すると予想されており、この政党がどこまで躍進するのかが注目点となっています。
EUの中で考えれば、オランダが与える影響はそれほどのものではありませんが、こうした流れが他国に波及するようなことになれば、フランス、ドイツの選挙にも影響を与え、EU自体の屋台骨に大きな影響を与えるきっかけになりかねない…と危惧されているわけです。
Next: 3つ目の「3月15日」 市場が恐れている最大のリスクとは/毎年恒例行事?
(3)さらに3月15日には米FOMCで追加利上げも?
この3月15日は、米国のFOMCにおける政策発表も予定されていますが、株価の史上高値更新や完全雇用、賃金の上昇などを好感しているのか、ここへきてFRB、とりわけチキン議長としておなじみのイエレン議長が急に利上げに前向きな発言をはじめていることから、3月に前倒しで利上げを行うリスクが指摘されはじめています。
0.25%程度の利上げは市場への影響はほとんどないと見る向きも多いわけですが、米系の調査機関の調べでは、利上げ後の米国上場企業の利益は確実に低下傾向にあるうえ、ゼロ金利に近かったからこそ企業の自社株買いが非常に多く発生して株価を支えていたことは厳然たる事実です。
ここからの米国の利上げペースの加速が株式市場にいい影響を与えるわけはなく、調子に乗ったFRBの軽はずみな判断が、市場にいきなり打撃を与えることになるリスクは確かに残されているといえます。
ただ、市場のコンセンサスを最大限に重視するイエレン議長が、慌てて3月15日にさっさと利上げを断行するとは思えず、現状ではそれほど大きなリスクとは言えない状況です。
毎年この時期に「危機説」が登場している
しかしこうした3月危機説・暴落説というのは、考えて見ますと実は毎年のように登場しているものであり、週刊誌が書き立てたりしていますが、最初から日にちの分かっている暴落など起こったことはなく、正直なところあまり意味のないものであることは間違いありません。
株式市場などでは相場が走り始めて、皆が楽観視しはじめたときがまさにリスクのピークとなるわけで、NYダウだけはなんとなく走り始めている感もあり、リーマンショックから9年目であるだけにいつ暴落が起きても不思議ではないことから、危機説を煽られると嫌な気がすることは間違いありません。
最大のリスクはFRB、日付に惑わされない「より一層の注意」が必要に
今のところ米国債のイールドカーブも健全に保たれていますから、今すぐに大きな下落があるとは思えませんが、やはりリスクの引き金を引きかねない最大の問題は、FRBの政策判断ではないかと思われます。
現象的には並立している金利の上昇と株価の上昇ですが、10年債国債の金利が3%を超える状況でも株価が耐えて上伸し続けるとは到底思えず、大幅下落の局面では為替が下押しに付き合わされるのは間違いありません。
ただ、こうしたリスクというものは往々にして想定外のことが引き金になるのが世の常ですから、今年は相当注意をして臨む必要があることだけは確かです。実は、相場の下落はもっと前倒しになることさえ意識しておかなくてはなりません。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2017年2月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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