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仮想通貨バブルへの嫉妬と憧憬。ビットコインを世界はこう見ている=江守哲

FRBほか各国中銀が「仮想通貨の発行を検討している」と発表するなど、仮想通貨の周辺が騒がしくなってきました。当局者はビットコインをどう見ているのでしょうか。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年12月4日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

ヘッジファンド、そして各国中央銀行は仮想通貨をどう見ている?

シタデル創業者「ビットコインはバブル。終わり方が心配」

仮想通貨の周辺が騒がしくなってきました。

ヘッジファンドのシタデルの創業者であるケネス・グリフィン氏は、最近の仮想通貨ビットコインの熱狂について、「オランダで数世紀前に起きたチューリップブームのようだ」と発言しました。

グリフィン氏は「ビットコインはペテンだろうか。それは違う。だが、こうしたバブルは涙で終わる傾向があり、このバブルがどんな終わり方をするか心配している」としています。

独特の表現で、バブルが崩壊する可能性を指摘していますね。

グリフィン氏は、株式市場全体の今のバリュエーションに関しては、「低金利と低インフレ、収入の伸びがけん引役となり、標準より引き伸ばされた水準にある」との認識を示す一方、「相場の上昇はイニングでいえば7回に入っているが、強気相場の典型的な熱狂状態にはない」と分析しています。

私もまったくく同じ意見であることは、すでにメルマガで繰り返し述べている通りです。

「仮想通貨発行」に動き始めた各国中央銀行

仮想通貨市場が過熱していることもあり、当局者からも発言が増えています。

NY連銀のダドリー総裁は、FRBが将来のデジタル通貨の実用化の可能性について検討を進めていることを明らかにしました。これには驚きましたが、よく考えれば、米国が検討していないことの方がおかしいですね。

ダドリー総裁は「FRBがデジタル通貨を発行すると表明するのは非常に時期尚早」としながらも、「デジタル通貨の発行の意義や、それが実際に必要なのかということの検証は始めている」としています。

世界の中央銀行では、ウルグアイの中央銀行が11月からデジタル通貨「Eペソ」の試験運用を開始しました。英国カナダなどの中銀も実用化の可能性を探っているとみられています。

Next: FRBほか当局者は、なぜ「ビットコインに懐疑的」なのか?



FRBほか当局者は、ビットコインをどう見ている?

一方、仮想通貨「ビットコイン」は1万ドルを突破し、急騰を続けています。

これに対してダドリー総裁は、「ビットコインには懐疑的だ。価値を安定的に保証していない。非常に投機的だ」として、決済手段として幅広く使うことには否定的な見方を示しています。

これもまた重要な発言といえそうです。

またFRBのクオールズ副議長は、政府や中央銀行の裏付けのない「ビットコイン」など新しい技術に基づく仮想通貨について、「決済上のリスクが伴い金融安定性が損なわれる恐れがある」としています。また、「中銀の仮想通貨採用には慎重な対応が必要」としています。

クオールズ副議長は、「金融安定性を確保するには、信頼性の高い決済システムが重要」とし、「決済分野での新技術については、革新性で得られるメリットと、システムの安全性と信頼性を見極める必要がある」としています。

また、法的な課題のほか、マネーロンダリングサイバーセキュリティテロ資金への活用といったリスクを指摘しています。

国際通貨基金(IMF)ライス報道官の見解

国際通貨基金(IMF)のライス報道官は、「ビットコインのような仮想通貨の金融取引拡大について、各国は適切な監督が必要になり、国際的な議論、協調が有用になる」としています。

ライス氏は「仮想通貨やそれを支える技術は、金融の普及や支払いの利便性向上につながる」と指摘する一方、「仮想通貨がマネーロンダリングや脱税などに使われるリスクがある」とし、「バランスを取った評価が必要」としました。

フランス銀行(中央銀行)ビルロワドガロー総裁の見解

フランス銀行(中央銀行)のビルロワドガロー総裁は、「ビットコインは投機的資産」との認識を示し、「投資家は完全な自己責任で投資を行っている」との認識を示しました。

さらに、「ビットコインは決して通貨ではなく、仮想通貨でさえもないことをわれわれははっきりさせる必要がある」としています。

ここまではっきりと否定した中銀関係者は初めてかもしれません。

そのうえで「ビットコインは投機的資産だ。その価値と極端なボラティリティーに経済的な根拠はなく、だれかが責任を負うものでもない。フランス銀行は、ビットコインの投資家に対し、完全な自己責任で投資しているという自覚を求める」としています。

それは当然のことですね。私も同感です。何も裏付けがないので、正当化価値がわかりません。その意味では、値段の変化についてだけ言えば、ギャンブルの類と変わらないと言わざるを得ません。

依然として乱高下するビットコイン。高値から平気で30%も下げるような市場は、資産市場とは呼べません

Next: 規制強化との綱引き。ビットコイン先物上場の影響は?



規制強化との綱引き。ビットコイン先物上場の影響は?

一方、商品先物取引委員会(CFTC)は、CMEグループとシカゴ・オプション取引所(CBOE)を運営するCBOEグローバルマーケッツに、仮想通貨ビットコインの先物上場を認める方針を公表しました。

米国の伝統的な取引所でビットコイン関連の金融商品の取引が認められるのは初めてです。今後はビットコインに対する当局の規制は強まることが予想されます。

CMEはビットコイン先物を12月18日に上場するとした上で、現物市場に沿って値づけ・清算を行うとしました。CBOEは上場日を決めていません。

CMEとCBOEは当初証拠金として35~40%を要求するなど、通常よりも厳格なリスク管理を行う見通しです。

デジタル資産が主流であることが暗に認められたとの指摘もありますが、先物市場が安定すれば、将来的には上場投資信託(ETF)などの取引に発展する可能性もありそうです。

【関連】ビットコインという「実験」の裏で進む、AIとブロックチェーンの大融合=高島康司

CFTCのジャンカルロ委員長は、「ビットコイン市場には価格の乱高下や取引慣行に対する懸念がある」と指摘しています。そのうえで、「CMEと6週間にわたって議論を続けた結果、こうした不安を和らげるため、顧客保護や監視態勢の強化などで合意が得られた」としています。

さて、今後のビットコインはどのようになるでしょうか。外野から見ていくことにしたいと思います。

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年12月4日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した日米株式市場に対する強気の分析や、ユーロ、金、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

2017年12月4日号の目次

・新刊のお知らせ
・マーケット・ヴューポイント~「最も出遅れていた原油が上げてきた」
・株式市場~米国株の政治の不透明感は押し目買いの好機、日本株は押し目買いで下げない
・為替市場~ドル円は上下動、ユーロ高は堅調さを維持
・コモディティ市場~金は相変わらずのレンジ相場、原油は高値更新継続
・今週の「ポジショントーク」~原油の上昇へのベットに注力中
・ヘッジファンド投資戦略~「仮想通貨市場の状況とヘッジファンドの取り組み」-投資戦略構築のポイント
・ベースボール・パーク~「野球シーズンが終了」
・セミナー・メディア出演のお知らせ

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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