ロボットが急速に普及していますが、近未来において人間はどんな仕事を割り当てられるのでしょうか。そして、自動化で得られる富は均一に分配されるのでしょうか。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
持つ者と持たざる者の格差はより広がる…庶民ができる生存戦略は
各分野で急速に広がるロボット化
ここ数年で急速にロボットが普及しましたね。ネット販売の倉庫ではコンベヤが自動で商品を仕分けし、それを搬送ロボットが定められた場所に運びます。
工場でもロボットが切断から組み立て、溶接から搬送まで行います。すでに先進的な工場では、人間はフロアに1人か2人という状態だと聞きます。
いずれ工場の自動化・ロボット化はさらに進み、人間がそこにいる必要はさらに薄れていくに違いありません。
変化は製造現場だけではありません。自動化が進んだ工場と、受発注や在庫を管理する事務部門の間で、コンピュータ同志が直接情報を交換し合い、人工知能(AI)が製造から物流・在庫管理・販売まで一気通貫で、勝手に会社を運営していくことになるのではないでしょうか。
銀行や生保・損保など、金融機関も同様だと思います。扱う商品がモノからカネに代わるだけで、業務の大半はコンピュータを中心としたAIにとって代わられるに違いありません。
小売業界は「無人店舗」が当たり前になる
スーパーや百貨店・コンビニなどの小売りの世界でも、無人店舗が当たり前になるでしょう。
その無人店舗で売られる商品の発注データは、AIが運営する倉庫側にリアルタイム送られる。それを受けた倉庫側では、自動で仕向け店舗ごと商品がカート載せられ、ロボットが倉庫内を搬送する。一方で、AI倉庫からは本社の受発注部門を経由せず、自動的にメーカー側に発注データが送られることになるでしょう。
発注を受けた会社の工場では24時間休みなく商品が作られ、即刻発注側のAI倉庫に輸送されるでしょう…。そして、その輸送を担うのは無人で運転されるトラックです。
人間はどんな仕事を割り当てられるのか
このような近未来において、いったい私たち人間はどんな仕事を割り当てられることになるのでしょう。
たとえ労働時間が短くなっても、AIやロボットが私たちの代わりにモノを作り、運び、売り、その結果、社会全体の富がさらに拡大すればどうでしょう。
冨を人の頭数で割った値、すなわち1人あたりの富が増えていけば、労働時間の短縮と豊かさが同時に実現されるという、理想的な社会になる可能性は十分あると思います。
ただし問題は、その富がすべての人間に均一的に分配されるか否かではないでしょうか。
Next: ロボットの恩恵の受けるのは一部の富裕層? 負け組にならないために
ロボットの恩恵の受けるのは一部の富裕層か?
その点について考える場合、僕などはどうしても悲観的になってしまいます。
資本やアイデアを持つ者と持たざる者の格差は、ロボット+AI時代にさらに拡大することになるのではないでしょうか。
その兆候はすでにあります。
アメリカでも中国でも新興国でも、富の集中は顕著で、例えば「世界で最も富裕な62人が持つ資産合計が、最貧層36憶人が持つ資産と同額(※2016年発表、国際援助団体オックスファムの資料による)」になっているそうです。
そのような近未来において、果たして私たちは相対的な貧困層入り(※社会全体の富が増える分、絶対的な豊かさは増えると思いますが…)を免れる方法はあるのでしょうか。
ロボット時代の負け組にならないために
僕は2つあると思います。
1つは、ロボットやAIで代替できないスキルを身に着けること。これはよく言われている通りですね。
究極的にはすべての仕事が代替されてしまう可能性はありますが、それでも職種や分野によって、濃淡や早い遅いはあるでしょう。
例えば、ロボット化を進めるためには標準化が必要です。逆に言えば、標準化しづらいニッチな分野や、例外処理が頻発するお仕事は、依然として人間に残されるのではないでしょうか。…というかそう思いたい。
Next: AI・ロボット時代を勝ち抜くためにできることは?
ロボットの所有者側に回る
2つ目は会社の所有者側に回るということ。これはつまり、会社の株式の保有です。
会社の一部を所有するということは、ロボットやAIを所有するということと同義です。その所有割合に応じて、私たちもロボット化やAI技術の恩恵を受けることができるでしょう。
いずれにしても社会や会社の構造変化は、今後ますます急ピッチで進むと考えておくべきではないでしょうか。
NHKの番組じゃありませんが、「ボーっと生きている」と、なんだかまずいことが起きそうな気がしています。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年4月25日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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