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米国株を仕込むなら、いつまでに? 迫る「長短金利の逆転」で起きる市場の変化=田中徹郎

アメリカ株を仕込むなら、いつまでに行うのがベストでしょうか? 景気後退の兆候として信頼性が高い、短期金利と長短金利の逆転時期を見据えながら考えます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

長短金利の逆転は「景気後退の兆候」。今年の末か、来年の年央か

米国の長短金利が逆転する日も近い?

アメリカの長期金利と短期金利が逆転することは、景気後退の予兆としてかなりの信頼性があります。

一般に長期の金利は短期の金利より高くなる傾向にありますが、それは貸す側からみて、長期に及ぶ貸し出しは長い間にわたってお金を拘束されてしまう分、大きな対価が必要だからです。

ですから、一般的には「短期金利<長期金利」という関係が成り立つわけです。

ところが、どんなときにも上記の関係が成り立つかといえば、そういうわけでもありません。なぜなら、短期の金利は中央銀行が決める政策金利の影響を受け、いわば人為的に動くからです。

ですから、現在のように中央銀行が利上げモードに入ると、短期金利はそれに引っ張られる形で上昇するわけです。

一方で、長期金利の方はどうでしょう。長期金利が貸し手と借り手の間で自由に決まりますので、実体経済を反映する形で上げ下げします。

では、最近の長期金利はどう動いているのでしょう。

短期金利が長期金利を追い越すと、何が起こるのか

長期金利の代表選手である「10年債」を見ると、例えば「2年債」の金利ほどには上がっていません。

これはどういうことかといいますと、アメリカ経済の実態は決して絶好調というほどでもなく、少なくともFRB(中央銀行)が政策金利を上げる速度ほどには、勢いよく回復していないということを意味しています。

では、この傾向が今後も続き、もし短期の金利が長期金利を追い越してしまうとどうなるのでしょうか

例えば、「2年債金利(短期の金利)>10年債金利(長期金利)」という状況です(※筆者注:2年債金利は一般に長期金利に分類されますが、ここではわかりやすくするために用いました)。

冒頭のようにアメリカの長期金利と短期の金利の逆転は、景気後退の予兆としてかなりの信頼性があります。

例えば、1980年以降アメリカは5回の景気後退を経験しましたが、5回とも直前に2年債金利が10年債金利を上回りました。

これは経済の回復度合いを超えてFRB(中央銀行)が政策金利を上げてしまい、実体経済を過度に冷やしてしまったからだと思います。

経済を冷やしてしまう前に利上げを止めれば良さそうなものですが、過去何度もそれができていないことを見ると、きっとかなり難易度が高いのでしょう。

Next: また同じ過ちを繰り返すのか? 年末or来年の年央には長短金利の逆転も



景気後退の兆候が現れるのは、今年の末か、来年の年央か

では、今回もまた同じ過ちを繰り返すのでしょうか。

現状を整理してみますと、現在の長短金利は以下のようになっています。

・10年債金利:3%程度
・2年債金利:2.5%程度
・長短金利差:+0.5%程度

一方で、例えば、FRBが利上げモードに入る前の2015年末時点では、どうだったのでしょう。

・10年債金利:2.2%程度
・2年債金利:0.9%程度
・長短金利差:+1.3%程度

上記のようにFRBが利上げに踏み切って以降、米国の長短金利差は1.3%から0.5%に縮小しています。

さらにFRBは年内あと2回から3回利上げをする見通しですので、政策金利は年内0.5%~0.75%程度上昇する可能性が高そうです。

もしかしたら長短金利は、今年の末から来年の年央当たりのどこかで逆転する可能性もあると思います。

割高感が消えた「米国株」

さて、ここからは相場のお話しです。

昨年絶好調だったアメリカ株は今年2月に大きく下げ、それ以降ボックス圏に入ったようにも見えますが、株価はすでに来年以降の景気停滞を織り込みつつあるのかもしれません。

景気停滞の兆候の1つとして市場が意識しているのは、上記のような長短金利の接近だと思います。

ただし2月の株価の急落と、その以降も続くアメリカ企業の業績拡大の結果、一時20倍以上もあった予想PERも、足元では適正値といわれる16倍程度まで下げてきました。つまり、現在のアメリカ株に、昨年央から今年年初にかけて見られた割高感はありません

では、今後アメリカ株はどう動くのでしょうか。

Next: 今後、アメリカ株はどう動く? 株価の山と谷を読む



今後、アメリカ株はどう動く?

アメリカの過去の景気後退期を見ますと、その期間は平均で11か月ほどです。

仮に本当に今年の末から来年の年央ごろ景気後退期、もしくは停滞期に入ればどうなるのでしょう。

過去の平均のように、次回の景気後退(もしくは景気停滞)が1年弱で終わるとすれば、早ければ来年の年末あたりには景気の谷を迎え、そこから循環的な拡大が始まる可能性があるでしょう。

であれば、そこから1年ほど前が株価の底です(※筆者注:株価は実体経済を半年から1年ほど先取りして動きます)。

さらに景気後退(もしくは景気停滞)の長さと深さをどう読むか、という点も重要だと思います。「山高ければ谷深し」と昔からよく言いますが、逆に山が高くなければ谷もそう深くはありません。

幸いにして今のアメリカ経済は、さほど過熱しているようにはみえません。つまり「山が高くなければ、谷もそう深くはない」です。

景気後退があったとしても、停滞程度の軽微なもの

そのようなごく大雑把な視点でみれば、仮にアメリカの景気後退があったとしても、さほど深刻なものではなく、どちらかといえば景気停滞程度の軽微なもので済むのではないかと思います。

上記の推測が正しければ、米国株の調整もさほど深くはなく、その場合、今年の末あたりまでに株を仕込み終え、次の拡大期にを待つという姿勢でよいのではないでしょうか。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年5月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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