日銀短観は、やはりと言うか、3期連続の悪化(大企業・製造業DI)となりました。「日本経済氷山論」というべきでしょうか。大企業・グローバル企業だけが好調な海外経済の恩恵を受けていて、中小・零細企業や個人は(一部を除いて)深刻な不況が続いているのです。国民所得の向上による内需振興策に切り替えないと、いつまでも、デフレ基調から脱却できません。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)
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国民は政府に何を望んでいるのか?岐路に立つ日本経済と安倍政権
日銀短観「3期連続悪化」から何を読み取るべきか
日銀短観は、平たく言うと、景況感のアンケート調査のようなものです。3ヶ月ごとに発表されます。
主な指標である、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が、
2018年3月:24
2018年6月:21
2018年9月:19
というように、3期連続の悪化となっています。
日銀短観を見て一喜一憂する必要はありませんが、3期連続の悪化というのは、それなりに意味があります。
つまり、内需に力強さがないことが根本原因です。
日本経済氷山論:景気が良いのはほんの一部分だけ
いま現在の日本経済は、水面上、すれすれに浮上しています。
これは、大企業やグローバル企業が世界の景気回復の流れに乗ってきたためで、日本国内の経済が良いわけではありません。
しかも、景気が良いのは氷山の一角だけです。
日本の多くの中小・零細企業、所得が下がったままの個人は、一部を除いて、深刻な不況のままなのです。
「マクドナルド」や「富士そば」などが大人気なのも、300円~400円ぐらいで食事を済ませなければ、生活が苦しいということです。
「日本経済が水面上すれすれにある」ということは、低水準のGDPや上がらないインフレ率が如実に示しています。
これはつまり、好調な「大企業・グローバル企業」と、不調の「中小・零細・個人」を、足して2で割るとそうなっているということです。
ということは、中小・零細・個人は、はるか水面下に深く沈んでいるということを意味しています。
特に、多くの国民の所得が半分とか3分の1になってしまったことの影響が大きく出ています。所得が2倍や3倍になる人が続出したとしても、やっと元に戻るというレベルです。
Next: 多くの国民は所得が減少。メディアが煽る好景気は間違っている
メディアが煽る好景気は間違っている
いくら、メディアで、好景気とか人手不足と言っていても、日本は全くそのような状況にはなっていないのです。
考えてみればわかりますが、まわりの人が次々と正社員になり、
・年収200万円の人が400万円になる
・年収300万円の人が600万円になる
ということが現実化しないと、内需はそう簡単には回復しないのです。
これまでは、
・年収400万円の人が200万円になる
・年収600万円の人が300万円にになる
こういうことが、ありきたりに起きてきました。
これを元に戻すのは、かなり大変なことです。
国民を不必要に苦しめる金融政策が行われている
しかし日銀は、(以前の日本に比べて)短期金利の水準を高めにして、逆に金融引き締めを行っています。
このため、普通預金が以前のように目減りしない(=インフレ負けしない)、企業の内部留保の増加、日銀当座預金の増加という現象が起きています。
このように高金利にマネーが引き寄せられ、市中に流れるマネーは吸収され、流動性は細っているのです。
所得が倍増した後なら引き締め気味でちょうど良いのですが、所得が半減した後に日銀は金融引き締めを行っているという、国民を不必要に苦しめる金融政策が行われているのです。
最近話題の「大塚家具」の問題にしても、普通の日本経済の状態なら、「2代目の社長になってちょっと調子が悪いね」というぐらいだったでしょう。
これが「調子悪いね」ぐらいで済まないほど、日本のデフレがきついということです。
Next: 国民は何を望んでいる? 岐路に立つ日本経済と安倍政権
国民は、所得回復・内需振興策を望んでいる
安倍政権の支持率があまり下がらないのは、国民が安倍政権に「所得の回復」「内需振興」をもたらす経済政策を期待しているためです。
大企業の業績が良くなったのだから、次は中小・零細企業や国民生活の番だと期待し、待ち望んでいるのです。
しかし、日銀が短期金利の水準を高めにしていることもあり、なかなか自律的な経済成長・内需振興が起きていないという現実があるのです。
安倍政権が勘違いしてはいけないこと
ここで政府や自民党が注意しなければならないのは、国民は、生活が良くなり、現状に満足して政権や自民党を支持しているわけではないということです。
現状の生活は厳しいままだが、今後に期待している段階ということです。
ですから、もし「現状が良くなっているので、国民が支持しているのだ」という勘違いをして判断を誤ると、大きな反動も起きやすい状況です。
特に参議院議員選挙は、結果が大きくぶれやすくなっています。2019年夏の参院選に与党が勝とうと思えば、トランプ大統領のように、次々と経済政策を実行する以外にありません。
安倍首相は、アベノミクスでデフレを脱却して歴史に名を残すのか。それとも、デフレ脱却はできなかった…ということになるのか。
それは、今後の経済政策次第という、極めて微妙な段階に日本経済は直面しています。
Next: 鍵を握るのは日銀? 欧州中央銀行に学ぶべきこととは…
日銀が欧州中央銀行に学ぶべきこと
やはり、日銀が政策金利(短期金利)をインフレ率より2%ぐらい下にするしかないでしょう。
欧州中央銀行は、これで景気回復とインフレ率の回復を実現しています。
金融緩和をせずに、量的緩和でどうにかするのは難しいです。
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『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2018年10月2日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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