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各紙が懸念モードで報じる経済指標をどう見る? 日銀短観に吹く微かな追い風=山田健彦

経済統計は世の中全体の動きを知るうえで重要なもので、しばしば株価にも大きな影響を与えます。そこで今回は、直近の重要な経済統計とその見方について解説します。(『資産1億円への道』山田健彦)

経済指標をもとに株価はどう動く? 個人投資家が注視すべきこと

自然災害で伸び悩む「鉱工業生産指数」

9月28日に経済産業省から鉱工業生産指数が発表されました。

鉱工業製品(496品目)を生産する国内の事業所での生産の状況等(数量・重量・金額等)が毎月公表されます。

鉱工業製品には、鉄鋼、一般機械、電気機器から紙・パルプ製品、食料品、たばこ、医薬品まで数多くの品目が含まれ、統計では国内事業所におけるこれらの製品の生産量を「基準年=100.0」として指数化し、鉱工業生産活動の全体的な水準の推移が示されます。

この統計の注目度は高く、企業の生産動向を知るうえで有力な経済統計として株式市場や為替市場でも重視されます。

その中身ですが、9月28日に発表された8月の鉱工業生産指数速報値は前月比0.7%上昇し、103.0でした。4カ月ぶりの上昇ですが、8月上旬時点のメーカーの計画値や、事前の予想を下回りました。

原因の1つは相次ぐ自然災害で生産活動は低調となったことです。

業種別で特に弱かったのは半導体などの電子部品・デバイスで、8月時点の前月比0.1%増との見通しから一転し、8.8%減と大幅なマイナス。自動車などの輸送機械や汎用・生産用・業務用機械も、前月比ではプラスだったものの計画からは下ぶれました。

9月の生産予測指数は2.7%の上昇を計画していますが、8月時点の予想からは1.9%の下方修正となっています。

先行き不安で減少が続く「工作機械受注額確定値」

増産のけん引役となってきた外需の弱さも気がかりです。

日本工作機械工業会が9月26日に発表した8月の工作機械受注額(確報値)で、中国向け受注額は前年比37.3%減の189億円でした。中国では景気減速に加え米中貿易摩擦を受けて投資の様子見が広がっているようです。

中国向け受注は8月まで6カ月連続で前年を割り込んでおり、減少幅は10%弱から8月は4割弱に拡大。8月の受注額の189億円という数字は、17年11月に記録した412億円から半分以下です。

米中摩擦などに伴う世界経済の下振れリスクが高まり、顧客の部品メーカーが先行きの不透明感から工作機械を買い控える動きが広がっている模様です。

Next: 「日銀短観」でわかる日本経済の行方、各紙はどう報じた?



各紙が不安げに報じる「日銀短観」

そのような中、10月1日には日銀短観が公表されました。経済各紙の解説を見てみると、総じて先行きに対する懸念モードでのコメントが目立ちます。

日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、すべての企業をあわせた業況判断指数(DI)の先行きが3ポイント下がった。足元の景況感は高い水準にあるものの、機械や自動車などの企業は貿易戦争を不安視している。長引く原料高も逆風だが、足元の円安が景況感を前向きにする可能性はある。

出典:9月日銀短観、大企業・製造業DIは3期連続で悪化 非製造業は8期ぶりの悪化 – 日本経済新聞(2018年10月1日配信)

日本銀行が発表した企業短期経済観測調査(短観、9月調査)の大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は3期連続で悪化した。3期連続の悪化はリーマンショックで過去最低を記録した2009年3月以来9年半ぶり。原材料高や自然災害による影響で景況感が悪化した。先行きは製造業がプラス19、非製造業はプラス22と横ばいを見込む。

出典:日銀短観:景況感3期連続の悪化-原料高や天候不順が影響 – Bloomberg(2018年9月30日配信)

日銀が1日発表した9月全国企業短期経済観測調査(短観)よると、大企業・製造業の景況感は3四半期連続の悪化、同非製造業も8四半期ぶりの悪化となり、企業部門の景気はピークアウト感が否めない結果となった。製造業は足元、素材産業で原油高による原料コストの上昇、非製造業は自然災害に伴う物流混乱や外国人観光客への影響が足を引っ張った。先行きは貿易摩擦への懸念などもあり、回復が見込めていない。

出典:日銀9月短観、製造業の悪化続く 非製造業も自然災害で2年ぶり – ロイター(2018年10月1日配信)

短観の中を見てみると、3カ月先を示す先行きDIは、全規模でみると全産業、製造業、非製造のいずれも2〜3ポイントの悪化を見込んでいます。

景気鈍化の要因は自然災害以外にも原油高があります。日本企業への影響が大きい中東産ドバイ原油は足元で1バレル80ドル台と、約4年ぶりの高い水準です。

エネルギー価格も加えた8月の消費者物価指数(総合)は前年同月比1.3%の上昇と、5カ月ぶりに1%を超え、消費者の実質所得を押し下げ、消費が落ち込む可能性があります。

明るいニュースもあります。企業の設備投資への意欲は衰えておらず、大企業は2018年度の設備投資額を13.4%増やす計画です。

強気の背景には、国内での堅調な需要があります。需給の引き締まり具合を示す需給判断指数(DI)は大企業製造業の国内製商品・サービスでプラス1と、前回の6月調査から3ポイント改善し、約28年ぶりの高い水準にあります。

Next: 経済指標をもとに株価はどう動くのか? 投資家が注視すべきこと



株価はどう動くのか?

それらを折り込み、株価はどう動くのでしょうか。

10月2日には、日経平均株価が27年ぶりの高値をつけました。

米国の利上げで新興国から引き揚げられた資金がまずは米国に向かい、ドル高・米株高が進みましたが、米国株一辺倒ではリスクが高いと感じた機関投資家も多いようです。

その手のマネーは、ヨーロッパに向かっても良いものですが、新たに勃発したイタリア債務問題、燻り続けている英国のEU離脱などヨーロッパ市場はこの先、混乱も予想されるので避けて、日本株へ資金を振り向ける動きが続いているとも言われています。

また、ドル高がもたらす相対的な円安が輸出企業の業績には追い風となります。

image by:cowardlion / Shutterstock.com

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資産1億円への道』(2018年10月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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