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ソフトウェア開発は超多忙!最新の業界動向から業界の行方を推察=山田健彦

今回は、経済統計と株式投資の橋渡しとなる考え方をご紹介しましょう。11月8日に発表された「10月の景気ウォッチャー調査」をベースにして分析していきます。(『資産1億円への道』山田健彦)

貿易摩擦や消費増税が、家計や企業の心理を冷やす

都心から回復基調の旅行関連はまだら模様

「景気ウォッチャー調査」、今回の概要現状の景況感を示す指数(季節調整値)は前月比0.9ポイント上昇し、49.5。今夏に続いた自然災害の影響が薄れ、飲食やサービス関連を中心に上向きました。先行きを示す指数は、50.6と2カ月連続で低下。米国に端を発する貿易摩擦や2019年10月予定の消費増税が家計や企業の心理を冷やしています。

目についた個別企業からのコメントは、旅行関連では

「台風や豪雨で来客数が大きく減ったが、10月に入りようやく元に戻ってきた感がある」(近畿の観光型ホテル)

「中止していた報奨旅行の復活実施の取扱が増加傾向にある」(東京都の旅行代理店)

「比較的好調だった宿泊稼動が年明けから極端に落ち込む見込みで、特に団体の利用がほとんどない。新年会などの定例案件はある程度確保できているが、新規案件の引き合いが少ない。直近での伸びに期待したいが、企業に元気がないため先々の動向が読めない。(南関東の都市型ホテル)」

「これから年末年始に向けて客の動きがあると思うが、予約状況を見ると、例年と同じかやや減少している。末端までは景気が回復していない」(南関東の旅行代理店)

旅行関連はまだら模様のようです。

住宅販売関連は堅調、人材不足継続

不動産関連では、

「今月の販売量は目標数字の117%となり、3か月前と比べ販売量が約2倍になり、景気は良くなっている。気候も良くなり、客の動きは活発になっている。消費税再増税の駆け込みの動きも併せて出てきている」(南関東の住宅販売会社)

「金利が安く住宅がかなり建っており、家具や調度品が徐々に売れると期待をしている」(四国の住関連専門店)

と住宅、住宅関連販売は堅調です。実際景気ウォッチャー調査での住宅販売関連は5.1ポイント上昇の52.2と大きく伸びています。

「不動産価格が都市部を中心に上昇しているなかで、取引先の不動産業者は、好調を維持している先と、物件の仕入に苦戦している先に二分されており、先行きの見通しもまちまちである」(南関東の金融機関)という指摘もあります。

人手不足の状況は続き、人材派遣など雇用関連の企業の現状判断DIは0.8ポイント低下したが53.2と引き続き高水準です。

しかし、「長引く人材採用難に各企業とも疲弊してきており、採用を諦めて現在の人数で業務を回せるような考え方にシフトする企業も出てきている」(四国の求人情報誌)と注意すべきコメントもあります。

その一方で、「ここしばらく、売上予測を上回る月が続くなど、ものづくりの現場市場は活況を呈している。生産性向上に対する企業の意欲が高く、人手不足解消に向けての動きが強まっている」(その他非製造業[鋼材卸売])と生産性向上や省力化投資意欲は衰えていないようです。

「例年になく新しい仕事を受注できている」(東北のアウトソーシング企業)という企業もあります。

Next: 製造業関連、スーパー・百貨店関連の動向は…



製造業関連は好調、スーパー・百貨店関連はインバウンドも好調

製造業関連では、
受注が非常に好調になってきて、相当伸びている。11月は残業しても間に合わないくらい」(北関東の電気機械器具製造業)

自動車の北米輸出販売が82か月連続で前年を超えており、前年比103.5%である。今後の販売計画も前年超えの見込み」(北関東の輸送用機械器具製造業)

「新しく製造ラインを増やしたり、受注増のため求人数を増やしたり、将来的なことを考え、今から人材育成ということで未経験者を採用したいという企業が増えているため、良くなっている」(北関東の職業安定所)

スーパー、百貨店関連では
「商品を薦めると、手に取って購入してくれる客がどの商品でも増えている」(近畿、スーパー)

「来客数は減少していないが、客単価、買上点数が少し減っている。節約や買い控えをしているのが大きい」(南関東のスーパー)

「客の様子を見ていると、ポイント何倍の日や、時間帯でのクーポン発行、広告目玉の初日などのお買い得、超目玉的な商品を買い回る動きが多くみられる」(南関東のスーパー)

「徹底した節約で販売点数が伸びない状況が今後も続く」(中国のスーパー)

「来客数、買上客数共に前年を割っているが、客単価が上昇しているため、売上は前年を上回り、かつ予算を達成する見込みである」(南関東の百貨店)

「前月リニューアルオープンし、ショッピングセンターも併設ということで、来客数が非常に増えている。食料品についても、リニューアルした菓子を中心に売上が15%伸びている。食料品全体的にも、上向きの基調で、お歳暮の立ち上がりも良いため、かなり好調である」(東京都の百貨店)

「ラグジュアリーブランド等の高額品の動きは引き続き堅調ながら、3か月前と比べて、その勢いに変化はみられない。金額にこだわらず良い物を求める客と、なるべく金額を抑えて買物を済ませようとする客の2極化傾向は変わらない」(東京都の百貨店)

「国慶節以降は化粧品や特選宝飾品、食料品の売り上げが前年を大きく上回っている」(近畿の百貨店)とインバウンドも堅調なようです。

ソフトウェアは引き続き堅調も、製造業は先行き慎重

先行きに関しては製造業を中心に慎重な見方が多いようですが、人材獲得、省力化投資は引き続き旺盛なようです。主なコメントは、

「原材料価格の値上げとともに、製品価格に転嫁しなければならず、受注出荷が下がると予想している」(北関東=化学工業)

確実に大手製造業の発注量が鈍化してきている。特に、前年までひっ迫していた半導体業界の注文が止まり、自動車関連もピーク時の2割減となっている」(南関東の精密機械器具製造業)

「11月より原材料の値上げの発表があり、同業者間の競争が激しくなり、採算面も厳しく今後景気はやや悪くなる」(東海のパルプ・紙・紙加工品製造業)

「国内における企業の設備投資は依然堅調であり、生産能力を超える受注量が続いている。ただ一方で、生産能力をカバーすべく設備投資を行おうとしても、工作機械等の納期が長期となっており、目の前の受注に対応することが厳しい状況である」(北陸の一般機械器具製造業)

「取引先においては、小売店で高額品の動きが良いなど、全体に好況感が続いている。その一方で、原料価格の上昇や中国景気の後退などが少しずつ影響し始めたとする輸出企業もあり、株価の下落も重なって全体の好況感を冷やす可能性もある」(北陸の金融業)

工作機械の得意先からの受注が10%減少する見込みであり、客との商談の決定が悪くなっていく」(中国の金属製品製造業)

採用難に対してあきらめの気持ちを持つ企業も現れたようです。

「採用難に疲弊した企業が採用をあきらめることで、業績の緩やかな悪化を認める企業が少しずつ出始めた」(四国の求人情報誌)

個人消費は引き続き「必要なものは買うがそうでないものには慎重」な姿勢が見て取れます。

「衣料品については必要な物しか買わないという雰囲気がある」(南関東の衣料品専門店)

ボーナス支給が始まる時期だが、地方の中小民間企業では「払えない」という声も聞くため、財布のひもは相変わらず固く、お金を使わないとみている」(甲信越の人材派遣会社)

IT投資は引き続き活発で、ソフトウェア開発会社は超多忙なようです。

「受注依頼が更に増えてきている。人材不足が解消されれば、更に景気は上向き傾向となる」(南関東のソフトウェア開発)

Next: これらの情報を総括してわかることとは…



日本百貨店協会の売上動向からインバウンドの好調を推察

これらのコメントから投資のヒントを得るわけですが、いくつかの特徴を上げると人手不足は深刻で、引き続き人材派遣業などは繁忙。一方、中々人員を補充できない所では、今いる人員で仕事を廻すべく業務体制の縮小を検討している。

百貨店は富裕層対象の絵画、宝飾類の販売は好調だが、一般向けの販売は不調。インバウンドは横ばい。スーパーは南関東など人口密集圏では客数は減ってはいないが、客単価は落ちている。製造業では原材料価格の上昇がきつく、業績見通しは良くない。不動産販売はまだまだ好調を維持。ソフトウェア開発は超多忙

これらをさらに補強するデータを見ていくと、例えば日本百貨店協会が毎月加盟百貨店の売上動向をレポートしています。

直近では9月分のレポートが10月23日に公表されましたが、「訪日客の需要の高い化粧品はメーキャップやスキンケアが人気で1.8%増と好調を保った」とあります。

ここから高級化粧品メーカーやインバウンド関連の会社の業績は良いのでは、と当たりが付けられます。

この原稿を書いている11月12日では花王<4452>の株価が前日比(以下、同じ)1.33パーセント高、近鉄百貨店<8244>は1.53パーセント高、三越伊勢丹<3099>は1.26パーセント高でした。

外食産業は全面的に好調、不動産も株価堅調

外食産業については日本フードサービス協会が月次で加盟店の業況を公表しています。

直近は10月25日公表の9月分データですが、それによると「台風、地震が客足に影響も、客単価上昇で売上は前年を上回る」「ファーストフード業態での全体売上は104.1%と前年を上回り、そのうち「洋風」の売上は104.3%。「和風」は売上106.1%「麺類」は売上99.8%。「持ち帰り米飯・回転寿司」の売上は102.7%。「その他」のカレー、アイスクリーム等は売上108.2%。

ファミリーレストラン業態の全体売上は102.8%。そのうち、「洋風」「和風」は、自然災害などで客数減も引き続くものの、客単価上昇で売上はそれぞれ102.4%、100.3%。「中華」の売上は104.4%。「焼き肉」の売上は106.5%と22ヵ月連続して前年を上回った」とあります。

11月12日は外食関連銘柄では、物語コーポ<3097>が15.43パーセント高、ペッパーフード<3053>は8パーセント高、壱番屋<7630>は1.15パーセント高でした。

不動産関連では
三井不動産<8801>が3.46パーセント高、TATERU<1435>は10.99パーセント高と株価は堅調でした。

堅苦しくて難解と思われている官公庁の資料もときには投資の役に立つものが意外とあります。

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資産1億円への道』(2018年11月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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