過去に消費増税をした際、「四半期GDPはマイナスとなるから、株式市場を冷す」、または「景気対策の財政出動で追い風となる」という事態が生じたが今回はどうか。(山崎和邦)
※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2018年12月2日号の一部抜粋です。最新の11月分の定期購読はこちらからどうぞ。
来年の消費増税は過去3回と同じ道をたどるのか
消費増税後、キャッシュレス決済で5%のポイント還元を検討
消費増税をした場合に、キャッシュレス決済すれば5%のポイント還元を検討すると政権が言い出した。「3%増税で5%ポイント還元なら2%の減税となる。それならば消費は減らないではないか、したがってGDPは減少しないのではないか」という考えが一部市場に出てきたようだ。
「そうなると19年度のGDP成長率は18年度の1.0%よりも上がって1.2%になるという見方」である。
もう一つの考えは「消費増税すると、今までの3回と同じようにGDP減少になるから積極的な景気刺激策を財政出動でとることになる。よって、予想外の景気回復と株高が想定される」とする考え方である。現に「失われた20年」の中の趨勢的(すうせいてき)な株価の長期下落傾向の中でも10兆円を超す財政出動をすれば直ちに株価は上昇に転じ、もちろん中間反騰であり醒めれば下落傾向となり上昇分以上に下げたが、日経平均で60%を上昇したことが「失われた13年」で3回ある。
幼児教育の無償化が消費者物価指数を0.5%引き下げ、消費者物価指数CPIは前年比マイナスになりかねない。そうすると日銀が目指している「2%目標」はますます遠ざかる。日銀は事前に「これは一過性の問題である」と広く認知させるべきである。
強気の材料もいくらでもあるが、分からないのが唯一の事実
アベノミクス相場の前半、CPIがなかなか上がらないのは原油安という予想外の外部要因だったと日銀が発表した。これは後講釈めいて聞こえた。後講釈ではなくて、事前に「原油安になればこうなる恐れがある」と言っておくべきではあった。さすがの黒田総裁も原油市場という覇権国家の動向やOPECの動向などで決まる非市場経済的な動きは読めなかったのであろうか。
1)消費増税はポイント還元によって実質的に減税になるから、株は高い。
2)消費増税は今までの3回のようにGDPマイナスをもたらす。それを避けるために大幅な財政出動をするであろうから、直ちに株は予想外に反発する。「失われた13年」においての財政出動はその都度6割高をもたらしたことが3回あった。10兆円規模の財政出動が行われれば、日経平均株価は来年度に新高値を更新する可能性もある。
3)その場合は財政赤字が拡大する。モリカケ問題で首相に恩を着せたと思っている財務官僚をどう黙らせるか、どうなだめるか、どう取引するか、ここが正念場となろう。
どう予測しようとも自由であるが、強気材料は幾らでもあるし、実際に相場の真意は分からない。「『分からない』ということが『分かっている唯一の事実である』」ということだけは言える。
Next: もし次に消費税を延期したら、どうなるのか…
消費増税の再々々延期の扱い方によっては、大相場は終焉を迎える
筆者は、消費増税は再々々延期すると思う。増税を強行すれば財政規律は多少守れるが景気を破壊し結果的には税収は減る。「リーマンショック級のことがないかぎり」と安倍首相は何度も繰り返し言っているが、前回の延期のときに世界景気、国内景気ともに好調であったにもかかわらず、リーマンショック級の危機だという屁理屈を付けて再延期した。
これを今のところ是が非でも増税すると言っているのはモリカケ問題をかばってくれて恩義を受けた財務省に対する義理立てであり、財務官僚に対する恩義からであると筆者は「邪推」している。安倍首相も基本的な計算を外すことはない。よって延期する。そうすると
それを世論に問うべく衆参両院選挙に打って出る
↓
惨敗する恐れがある
↓
内閣総辞職となる
↓
アベノミクス終了と海外投資家の目には映る
↓
株式相場はここで3倍弱になった大相場は完全に終焉を迎えるという筋書きも考えられないことではない。
物価の見通しについては、
1)為替レートの前提が円安方向に変化したこと
2)原油価格の前提が原油高になったけれども先行き大幅原油安になったこと
3)成長率見通しの下方修正によって需給ギャップ改善が鈍化すること
である。よって「2%目標」は遠のく。
景気下振れリスクの対応には、財政出動が必要となる。すると、
財政規律は悪化する
↓
官邸官僚と財務省官僚との間に大きな溝ができる
↓
政権運営に支障をきたす
↓
モリカケ問題で恩義を着ている財務省官僚の対応に困るという筋書きが考えられる。
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当面の市況
株価構成の基本が変わる、但し「政策相場」「管理相場」の下値は深くはない
今回の相場の特性から見た今後の中勢的な予測
実質GDPは僅かながら下振れリスク
想定外の原油安の影響
原油安と中国株安という外部要因については15年8月後半以降の下降局面と似た面がある
日露交渉、内閣支持率、消費増税についての世論調査
日産自動車の問題は06年のライブドア事件とは大違い
ESG企業-日産問題が一般日本企業のガバナンス欠如と海外勢に見られることはない
景気の循環、株式市場の循環、このサイクルに注目することが最も容易な金融資産構築への道であるということについて。この項目については極めて本稿の基調として重要だから次週に理論的に整理したい。
トランプが2期目の大統領に当選する可能性が濃い(2020年11月3日の選挙)
米中貿易戦争と日本国自体の存亡
「外交の安倍」の評価
Tさんとの「▲20%を以てトレンド変化と見做す」についての交
インド洋で反中国政権が続々
「なぜ大国は衰退するのか」
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『山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2018年12月2日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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