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なぜ赤字で還元してまで消費税を上げる?ドタキャンも視野に入れた政府の狙いとは=斎藤満

政府は来年10月の消費増税対策として、電子決済で5%ポイント還元ほか9つの施策を発表。これだけの大盤振る舞いをする背景には、何か特別な要因がありそうです。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2018年12月3日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

直前での再々々延期もありえる?充実の還元策も結局「国民負担」

無節操な消費税対策

政府は11月26日、来年10月に引き上げる消費税対策として、9項目の対策骨子をまとめました。

前回14年に5%から8%に引き上げた際、事前に景気対策を打ちながらも、結局大幅な景気反落でマイナス成長を余儀なくされたことがトラウマになっているのでしょう。今回は増税効果が前回より小さくなる半面、対策は盛り沢山となっています。およそ何でもありの無節操ささえ感じます。

9項目の内訳は次の通りです。

  1. プレミアム商品券を低所得者、2歳までの子を持つ世帯に発行する
  2. キャッシュレス決済でポイントを5%分付与する
  3. 自動車・住宅の購入者への減税
  4. マイナンバーカードへのプレミアムポイント付与
  5. 防災・国土強靭化策の実施
  6. 商店街の活性化
  7. 幼児教育の無償化
  8. 飲食料品などへの軽減税率適用
  9. 増税時の柔軟な値上げを促す指針

2%の消費税引き上げで、本来は5兆6千億円の増収が期待されます。しかし、約4割の分野で軽減税率を適用して税収が減少するうえに、住宅などへの減税、幼児教育の無償化などで家計に多くを還元し、さらに消費税引き上げ以上のポイント還元や公共事業によって、財政はむしろ赤字が拡大します。

参議院選挙があるとはいえ、何のための消費税引き上げか、本質を見失った議論が展開されています。

マイナンバー、キャッシュレスに「抵抗すれば損する」と脅す政府

今回の対策を見ると、思い付きか、提案されたものを無批判にそのまま取り入れようとしている節があります。それだけに、各項目に秘められた思惑や、時代にそぐわないものもあり、政策論としての質的劣化の感が否めません

自動車の需要構造、エネルギー交代が進む中で、燃費ごとに課せられる自動車税の軽減は、時代の流れにそぐわない面があります。

また、マイナンバーカードへのプレミアムポイント付与は、明らかにこれをカード普及の誘因にしようとしていますが、マイナンバーカードそのものに反発する声に対して、「抵抗すれば損するだけ」との脅しになります。

また、キャッシュレス化が遅れている日本で、これを促進したい勢力がいますが、セキュリティが追い付かない中で、カードやスマホ決済を敬遠する人にも同様の「脅迫」となります。

従って、個人情報の流出、カードへのサイバー攻撃など、セキュリティ面で不安を持つ人々は少なくなく、これに抵抗するためにポイント付与を得られないとなると、新たな不公平感、不満を生み出すリスクもあり、これは消費税引き上げのみならず、それへの対策にも反発を呼ぶ要因になります。

特に、カードで多くの消費をする高額所得者を優遇し、逆進的な消費税で低所得者を圧迫する矛盾も責められます。

Next: 充実の還元策も「負担は国民」、本当に消費増税があるのか疑問視する声も…

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