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レオパレス、施工不良でぎりぎり成り立つずさん経営。大家さんはどうすれば救われるのか?=姫野秀喜

世間を騒がせている「レオパレス21」の施工不良問題。大家さんに話を聞くと、起こるべくして起きた問題であることがよくわかります。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)

プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。

やりきれない大家と1万4千人の住人、引越シーズンに転居できる?

レオパレス「界壁施工不良」問題の発覚は1年前から

問題が明らかになったのは、2018年5月のテレビ東京の番組『ガイアの夜明け』での報道が事の発端でした。

この番組が、レオパレス21社(以下、レオパレス社)が建築した「ゴールドネイルシリーズ」と呼ばれるアパートの屋根裏に防火のための「界壁」が存在しないということを公表したからです。

この「界壁」とは建築基準法で定められた防火のための設備で、これがない建物は建築基準法違反となります。

番組では実際のオーナーと調査する業者が、屋根裏を調査し「界壁」がないということを報道しました。番組は映像を放送し、まさに動かぬ証拠を同社に突きつけました。

2018年5月、すぐに、レオパレス社は緊急会見を行い、アパートの全棟検査を行う旨を公表しました。全棟検査において、何らかの不備が見つかった建物は約1万棟にも達するとのことです。

ここまでが2018年の「界壁」問題の発端です。

実はまったく検査が進んでいない?

そして、同番組は2019年2月に追跡報道を行います。その報道では、全棟調査の進捗について疑義が述べられます。

レオパレス社のHPでは、すでに9割以上の調査が完了しているとあるところ、レオパレス社への集団訴訟を行っているLPオーナー会への報告書には、1棟も完了していないというのです(LPオーナー会については、下記の前回記事をご参照ください)。

【関連】突撃取材「家主の私がレオパレスを訴えた理由」集団訴訟はなぜ起きたか?=姫野秀喜

先日、私は1人のレオパレスオーナーに話を伺う機会がありました。そのオーナーが言うには、「全棟検査については、まだ連絡が来ていない」とのことでした。なお、そのオーナーはご自身の土地に、レオパレスを建てたこともあり、また別のD社の建物を建てたこともあるとのことですが、建物の質としてはD社の方が良かったと言われました。

Next: 起こるべくして起きた施工不良、レオパレスの説明は到底納得できない…



ありえないレオパレスのずさんな工事

そもそも、どうしてこのようなずさんな工事が行われたのでしょうか。

レオパレス社の説明によると、「図面と施工マニュアルの整合性の不備」および「社内検査態勢の不備」によって、このような問題が生じたとのことです。

なぜ、図面と施工マニュアルが不整合を起こしたのかという点については、「物件のバージョンアップが頻繁に行われ、建物の仕様が分かりにくくなっていた」「施工業者に渡している図面と施工マニュアルの整合性に不備があった」と説明しています。

そんなことがありえるのかと不思議に思い、プロの大工さんにヒアリングしてみたところ、「普通は天井の上まで壁を作るので、施工しない場合、違和感を感じる」とのことでした。

たとえマニュアルの不備があったとしても(人によるが)、現場で気づくことがあったはずとのことでした。

また、「界壁」に不備があるだけにとどまらず、オーナーに説明した設計とは異なる断熱材(ウレタン系)を使用していたり、本来2重にすべきところを1重のまま施工していたり等、プロの大工さんから見て明らかに不審な点があるとのことでした。

新築を建て続けないと経営が持たないレオパレス

そもそも、地主向けに賃貸アパートを建設しサブリースをする業者の収益構造は、

(通常の工務店で建築するよりも)過大な建築費用で収益を上げ
   ↓↓↓
(需要がない地域の満室にならない)サブリースを支払う

というものです。

イナゴの集団が食い尽くして移動するように、営業マンがマイクロバスで田舎に集団で訪れ、相続を心配する田舎の地主に一気呵成に建設を促していくスタイルです。

そのため、常に新築を建て続けなければ収益が悪化してしまうのです。

ビジネスモデルに限界が来ていた

レオパレス社は収益悪化を防ぐために、2009年より「終了プロジェクト」と呼ばれるプロジェクトを開始しました。これは、採算の悪い逆ざや(家賃収入よりもサブリース金額の方が大きい)のアパートについて「サブリース契約を終了させる」というものでした。

2009年時点では、すでに建築時に粗利を上げ、その粗利を切り崩しながらサブリースを行うというビジネスモデルに限界が来ていたといえるのです。

2009年のレオパレス社の有価証券報告書(第36期)によれば、連結の売上高は約7,300億円であり、そのうちアパート請負事業の売上高が約3,600億円と売り上げの約50%を占めるほどでした。

同年の賃貸事業における売上高は約3,300億円ですが、入居率の低下による採算悪化による売上総利益の減少を報告しています。

そして、翌年2010年の有価証券報告書には下記の記載があります。

「(レオパレス社は)定められた固定賃料をオーナー様にお支払いしています。従って、この期間中に当社が受け取る住居人からの家賃収入に変動が発生した場合には、当社の収益性に影響が及ぶ可能性があります。」

不採算アパートが収益性に影響を与えるということをしっかりと認識していたということです。

逆ざやになってしまうサブリースを多数抱えた同社が、工事を簡素化して工期を短く、建築コストを少しでも小さくし、建築時の粗利を大きくしたいと思うのは不思議ではないと思うのです。

この界壁のずさんな工事は、後々生じることが分かっている、サブリースの逆ざやを埋めるために建築時に大きな粗利を上げなくてはならないというビジネスモデルが生みだした必然と言えるでしょう。

Next: やりきれない大家と1万4,000人の住人たち、引っ越しシーズンに転居できるのか?



借り主、大家さんへの影響

レオパレス社は2月7日に法令違反の疑いのある物件が1,324棟あったと調査結果を発表しています。そして、最大でおおよそ1万4,000人の方に他住居への引っ越しを依頼することになるとのことです。

引っ越し費用および、それにより発生するレオパレスの空室の賃料についてはレオパレス社側が負担するとのことですが、サブリース契約を結んでいないオーナーについては定かではありません

レオパレスを退去せざるを得ない入居者は、新たに別のレオパレスに移るのか、同社の関係しない全く別の賃貸物件に引っ越すことになりますが、引っ越し費用が3〜4倍に高騰している4月の引っ越しシーズンに、果たして引っ越しすことができるのか疑問が残ります。

レオパレスオーナーについては、サブリース契約によって当面の賃料収入は保証されますが、いつまでも保証が続くのかは明らかになっていません。

オーナーによっては改修工事が2年後、3年後になることもあるそうですので、それまでの間、保証を続けてもらえるよう契約内容をしっかりと見直さなくてはなりません。

「元レオパレス」が大量に売りに出る?

2018年、レオパレスの界壁問題が発覚した後、大量のレオパレスが売りに出ていることが(不動産業者の物件登録サイト)レインズにて確認されました。

【関連】不動産投資に異変? 最近やたらとレオパレスが売りに出ている件=姫野秀喜

そして、その時点ですでに一部の金融機関ではレオパレス物件については融資審査を行わない(融資しない)方針を打ち出していました。

金融機関が融資をしないのですから、一般の投資家では物件を買うことはできません。

一部のレオパレス物件は業者などに安く購入されたとのことです。

今後はそういった元レオパレス物件が市場に出てくることが予想されます。

元レオパレス物件を転売する業者が、きちんと界壁などを改修しているのであれば問題ありませんが、もしも改修されず見た目だけを変えて転売しているのであれば要注意です。

2018年4月より宅建業法が改正され「ホームインスペクション(住宅診断)の説明」が義務化されました。

これは中古住宅(共同住宅を含む)を売買する際に、ホームインスペクションという中古住宅の診断調査を行ったか、行うかということを説明するというものです。調査の実施を義務化したわけではないので注意してください。

今後、投資家としては物件の外観が元レオパレスと思われるものについては、慎重に調べる必要があります。そして、元レオパレスだと判明した場合は、ホームインスペクションによる界壁調査を売買の条件に加える必要があると考えます。

また、レオパレスオーナーは、できるだけ早く界壁調査を行い、レオパレス社に改修工事を行ってもらう必要があります。そして改修工事を完了した際には、第三者による界壁調査を行い、その調査報告書を大切に保管しておいてください。

その調査報告書こそが、レオパレス物件を少しでも高く売却できるためのキーとなるからです。

きちんと界壁が改修されているという第三者の調査報告書を銀行に提出することで、買主側の融資が出る可能性が高まるからです。

Next: かぼちゃの馬車ほか不祥事が続く不動産業界、投資家にとってはむしろチャンス?



「不動産投資」への影響は限定的?

2018年1月のかぼちゃの馬車に始まり、TATERUの問題、そしてレオパレスの界壁問題と、不動産の不祥事に事欠かない1年でした。

融資は引き締まり、三為業者(転売屋)や不採算アパートを販売していた業者が多数撤退しています。

そんな中でのレオパレス界壁問題に関する追加報道ですが、私は不動産全体へ与える影響は限定的だと考えています。

というのも、融資が出ても出なくても、本当に儲かる良い物件はもともと一握りしか存在しないからです。

私は毎日、投資不動産情報を見続けていますが、書類スペック上、採算が取れそうな物件の数は全体の3%程度です。そして、実際に購入すべきと判定できるものは、その3%のなかの10軒に1軒、すなわち0,3%程度です。

成功できる不動産の数はそもそも極めて少ないため、レオパレス物件が購入対象から外れたとしても、さしたる影響は出ないと考えるからです。

融資についても悲観はしていません。たとえ、レオパレス物件は融資してもらえなくても、それ以外の極めて希少な儲かる良い物件を持ち込めば、融資をしてもらえるからです。

大切なのは金融機関がどういった姿勢で融資審査を行っているかを知り、その審査に適合し、かつ自身の収益性に合致する物件を持ち込むかなのです。

自身の収益性を財務三表により適切に把握し、事業計画を銀行に説明できる投資家であれば、市場全体が落ち込んでも問題ないのです。

むしろ融資が出にくくなればなるほど、しっかりした投資家にとってはチャンスが広がります。

不動産投資家はレオパレスによる不動産全体への影響をただ恐れるのではなく、きちんと理論武装して、目の前に突然現れるチャンスをつかんで欲しいと思います。

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image by:Ned Snowman / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年2月14日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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