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村上世彰“父娘”強制調査は国策なのか?「東芝はどうなんだ」疑念も

証券取引等監視委員会は11月25日、金融商品取引法違反の容疑で、村上ファンド元代表の村上世彰氏(56)や村上氏の長女(27)の自宅など関係先の強制調査に乗り出した。第一報が伝わった大引け直前に「村上関連銘柄」が売り込まれたほか、今回の強制調査は東芝の粉飾問題などをうやむやにするための「国策」ではないのかといった見方も一部で浮上している。

“父娘二人三脚”の新生村上ファンドに「待った」 また国策かの声も

村上元代表と長女の関係先に強制調査

旧村上ファンドの村上世彰元代表(56)が、複数銘柄の株価を意図的に下落させるなど相場操縦をした疑いがあるとして、証券取引等監視委員会は11月25日、金融商品取引法違反の容疑で、村上元代表や投資会社代表を務める長女の自宅など関係先の強制調査に乗り出した。

村上元代表は東大法学部卒業後の1983年、通産省(当時)に入省。退職後の1999年に投資会社を設立した。現金や優良資産を持ちながら株価が安い銘柄に着目し、昭栄への敵対的TOB(株式公開買付)や、増配や自社株買い提案を前提とした東京スタイル株の買い占め、阪神電鉄株の買い占めなどを次々に仕掛け、「モノ言う株主」の代表格として一世を風靡した。

2006年にニッポン放送株をめぐるインサイダー取引で東京地検特捜部に逮捕され、懲役2年・執行猶予3年の有罪判決が確定。その後はシンガポールに拠点を移し不動産投資などを手掛けたが、近年、投資会社「C&Iホールディングス」を通じて本格的な株式投資活動を再開していた。

村上元代表の長女、村上絢氏(27)はモルガン・スタンレーMUFG証券を経て、今年6月に投資会社「C&Iホールディングス」代表に就任したばかり。黒田電気<7517>の株式を大量取得し、村上元代表ら4名を社外取締役にする株主提案を行って注目を集めたが、8月21日の臨時株主総会で否決されている。

「村上関連銘柄」が急落

強制調査の第一報が入ったのは、東京株式市場大引け直前の25日14時57分頃。これを受けて黒田電気<7517>三信電気<8150>エクセル<7591>アコーディア・ゴルフ<2131>などの「村上関連銘柄」が急落した。

黒田電気<7517>は報道直後の14時58分過ぎから売られ始めた。

黒田電気<7517> 1分足 2015/11/26(SBI証券提供)


黒田電気<7517> 日足 2015/11/26大引け時点(SBI証券提供)

直前に2609円だった株価は、わずか2分あまりで安値2400円まで売り込まれる場面があった。ただ引けには買いも入り、25日の終値は前日比195円(7.4%)安の2448円となっている。

村上元代表やC&Iホールディングスが大量保有する「村上関連銘柄」は、その「モノ言う株主」としての存在感もあいまって、人気マネー誌などで大々的に取り上げられることも多く、個人投資家を含むマーケットの高い関心を集めていた。

Next: 本当に黒田電気絡みの相場操縦なのか?市場関係者の見方は



「黒田電気の問題では」日本取引所グループ清田瞭CEO

今回の強制調査について日本取引所グループの清田瞭CEOは、25日夕方の会見で、「村上さんグループが関与してきた黒田電気という株についての問題ではないか」としたうえで、「引き続き不正行為が入り込まないような監視体制をさらに強化していきたい」との見解を示した。

「モノの言いようが問題」北浜流一郎氏

株式アドバイザーの北浜流一郎氏は、25日夜に配信した無料メールマガジンの中で、

私は村上ファンドの企業に対する姿勢に問題があったのではないかと見ています。
旧村上ファンドの代表、村上氏はマスコミ的には、「物言う株主」の代表的な存在とされていたため、今回再び捜索対象になったことで、「企業に対して物を言う」ことが封じられつつあるような印象がありますが、「企業に物を言う」とは、企業に対して株主価値の向上を求めてはよいものの、威圧的、高圧的な要求の仕方であったりしてはならないのです。
日本版スチュワードシップ・コードでは、「対話(エンゲージメント)」によってそれを達成すること、とわざわざ定めているほどです。「物を言う」のに、株を大量に所有することにより、企業が困惑したり、恐れるような高圧的な姿勢で要求するのは許されないということ。
出典:北浜流一郎の「一株開運」資金倍増株リッチ新聞 – まぐまぐ!

として、「モノの言いようが問題」との意見を述べた。

C&Iホールディングスの株主提案に肯定的な意見も

一方で、C&Iホールディングスによる黒田電気<7517>への株主提案については肯定的な意見もある。例えば、当サイト(マネーボイス)に寄稿する公認会計士の平林亮子氏は、2015年9月30日付の記事で、

(否決された株主提案について)私は逆に、賛成もそれなりにいたことに新しい流れを感じました。村上氏が社外取締役になることが、黒田電気にとって良いことかどうかはわかりません。ただ、黒田電気の取締役はどうやらみなさん還暦前後。もう少し若い年代の方々が参画していくことも大切なのではないかと思います。それは黒田電気に限った話ではありませんが、新陳代謝をしなければ、企業も衰えていくだけ。若年者を取締役にすれば解決する問題ではありませんが、そうした柔軟性をどんな企業にも持っていて欲しいと感じます。
安易な会社の乗っ取りでは困りますが、こうした株主提案が、今後、もっともっと出てくるようになって、議論が活発になるのは良いことであると信じています。
出典:新生・村上ファンド「C&I」が気づかせた“新陳代謝”の重要性 – マネーボイス

として、企業のあり方に一石を投じる試みだったと一定の評価をしている。

「相場操縦」の具体的な手口は不明

今回の相場操縦の疑いは、黒田電気<7517>に関連したものとする見方がある一方で、「黒田電気以外の銘柄」で「過去に類を見ない新手口」で行われたとする報道もあり、現時点では具体的な手口は不明。今後の調査の進展が待たれる。

Next: 強制調査は国策なのか?「じゃあ東芝はどうなんだ」の声



強制調査は国策なのか?「じゃあ東芝はどうなんだ」の声

明確な根拠はないが、今回の強制調査は東芝の粉飾決算問題や、マンション杭打ち工事データ改ざん問題をうやむやにすることを目的とした「国策」ではないかとの見方が一部で浮上している。

村上世彰氏語録(2006年)

「みなさん、たぶんね、僕のことがすごい嫌いになったのはね、むちゃくちゃ儲けたからですよ。たぶんむちゃくちゃ儲けましたよ。こんっなに儲けていいのか、と思うぐらい」

「ルールの中で一生懸命株取引をして儲ける、これ何が悪いんだろう?そういう世界なんじゃないんですかねこの世界って」

「法律を犯してしまった以上、私は基本的に、今日をもってこの世界からは身を引く」

村上絢氏語録(2015年)

「今回、弊社が推薦する社外取締役候補は、すでに経歴をご存じいただいているとおり、それぞれに専門分野を有しており、その知識と経験を活用して、今後、さらなる黒田電気の企業価値向上に尽力していただけるものと、弊社は期待しております」

文/さぶまりん山田

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