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株価上昇はピークを打つのか?日米ともに注意しておきたい景気ピークアウトの気配とは=山崎和邦

今年に入ってから、株価は上昇が止まらない。しかし、米国の景気はピークアウト、日本企業の業績も底入れはまだ見えない。ではなぜ、株価は上がり続けるのか。(山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年3月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

米中貿易摩擦の影響が、日米景気に根深く影を落とす

約3か月ぶりのレベルに戻したが、デッドクロスは抜けず

週末の朝方に発表した法人企業統計では設備投資額が増加したので、米中不安が強まる中でこの動きは買いの動機になった。

ただし28日、円ドル相場が111.77円までつけたが、輸出銘柄の代表格トヨタ・ソニー・キヤノンが安かったのは現今相場の根底にある影を暗示する。

が、平均株価は約3か月ぶりのレベルにまで戻り、移動平均線は25日・75日・90日・100日の全部を抜き、26週と概ね並んだがデッドクロスはそのままになっている。(26週21669円<週末25日21054円)。

米景気もピークアウトの気配

先週半ば27日は、昨年12月13日以来の2ヶ月半ぶりの高値に戻した。FRBの利上げ見送り観測と上海などのアジア株の堅調さが背景となった。

市場では4月に、日銀の追加緩和をめぐる観測が台頭する気配がある。想定したよりも弱い景気、2%目標には到底届かない物価目標、これに悩む日銀ではあるが、米欧などの世界の金融政策が利上げ停止という方向に転換すれば、日米金利差縮小→円高となる。

これを防ぐには無理に無理を重ねた追加緩和しかない。昨年7月~9月期のGDPは▲2.6%だった。これは自然災害が響いたことは事実である。しかし、その大幅マイナスに対して反発率は極めて低く、昨年10~12月期のGDPは+1.4%増にとどまった。

GDPが意外に弱いのは米中貿易摩擦が根底にあるからであろう。その現れはコマツ・日立建機といった建設機械株がそろって下落していることである。中国景気の不透明感と北米の建設需要のピークアウトが響いている。日米での建機株の下落はそういうものが背景にある。

中間反騰の賞味期限

2ヶ月半ぶりの高値圏をとり、3月の決算期末を控えた国内金融機関などの戻り売りを浴び、戻り高値圏の膠着相場が続いた。日本企業の業績に底入れはまだ見えない

トレンドが下降相場であっても途中の中間反騰は必ずある、このことを既報で何度も述べた。しかも何回もある。今回の中間反騰は後付け講釈付きに色々な好材料が並べられるが、その本質は10月2日の大天井から12月25日の「陰の極」までの5,500円幅の下げの自律反騰である。下がったものは上がるし、上がったものは下がる。それだけのことだ。

自律反騰である以上は、普通、賞味期限はそう長くはない。JPモルガンが過去4回の平均の安値を100としてTOPIXの推移を図示し、「ベアマーケットラリーは通常2ヶ月」というものを27日の日経新聞で示している(日経新聞27日版の20ページ証券欄の左上)。これは大変参考になる。過去4回の平均は安値からの自律反騰は、天井を打つまでの期間が2ヶ月から2ヶ月半程度となっている。そして安値からの株価上昇率は約15%となっている。

今回の場合にその15%を機械的に当てはめれば、21,800円がらみとなり、これは10月2日と12月25日との半値戻りは21,700円弱であり、その辺でつじつまが合うところではある。そうなると今は既にその近くまで来てしまっていることになる。誠に夢のない話しで恐縮だが事実を述べればそういうことになるであろう。

Next: この先、日本企業の先行きは?



日本企業の業績の先行きに対する警戒感

先週週初には、昨年12月初め以来の約3ヶ月ぶりの高値を回復した。トランプが中国との閣僚級会議で「構造問題などで充分進展があった」とツイッターで説明したことを契機として、本質的な解決をともかくとして束の間の安心感でも買い材料としようとする目先筋の動きである。

当メルマガ既報で既述したように、株価構成の基本は当該企業の企業価値であるから、それの目に見える実体としては決算である。当然のことだ。それについて企業収益の先行きを占い見る場合に、公式見解としては中期計画が中勢的には最も注目される。上場企業は19年3月期に3年ぶりの最終減益になる見通しである。20年3月期についても警戒が強まっている(日本経済新聞の集計)。

中期的な成長を示したい中期計画においても「目先は厳しい」という内容を含めることが多く、それ自体が企業の弱気心理の現れである(野村證券)。

日本企業の業績の先行きに対する警戒感が上値を抑えているのは間違いない。企業自身が発する中期計画が警戒信号めいている表現がちらつくからである。筆者の後輩で投資信託の運用者が言うには、普通は投資信託の運用銘柄として選んだ銘柄を持つ場合は、少なくとも2~3年は保有つもりで買うが、今は1~2年かまたは1年単位であるとのことである。

中間反騰・自律反発の範囲、中勢的な見通し

12月25日の「陰の極」においては、PBRが1倍を割り込む水準まで売られた。アベノミクスの最盛期、壮年期相場の最中でも2016年2月に6,000円安をした時には日経平均銘柄の平均PBR1.0倍、同年6月のBREXITショックの時もPBRは1.0倍、昨年12月の「陰の極」でもPBRは一瞬1倍、古くはリーマンショック時に一瞬0.8倍台後半、民主党の政治不作為時代にも一瞬0.8倍台後半があった。そこより下はなかった。

そうするとPBR1倍というのは一応の目途となろうか。

現在のプラス材料として見込めるのは、米中貿易協議の前進と英国のEU強行離脱の回避への期待である。

この2つの「かすかな期待」を頼りとする「“陰の極”からの自律反発としての中間反騰」が現在のところであろう。

世界株価の牽引役だったNYでも、米経済指標の弱点が見え始めた。日本企業の予想増益率も他国に比べて見劣りがする。期初計画を実績が下回ればその後の株価は軟調に推移する。一方米国ではトランプが打ち出した大型減税の政策効果が7月には剥げ落ちる、そこで景気減速が鮮明になるであろう。

米景気が落ち込めば日本企業も無傷ではいられない。そこで株価はそれを先行して動くことになろう。米景気は少なくとも来年には確実に後退に入るであろう。米景気は今までの周期からしてもその他の弱含み指標からしても来年中には景気後退に陥る可能性がかなり強い。強いて確率的に言えば70%以上であろう。日本の場合に次のショックに見舞われた時に政権担当者も金融当局もほとんど打つ手がないのは懸念材料である。

FRBが利下げしても日銀の利下げ余地はほとんどない。来年に景気後退が来れば、大幅に円高に見舞われ、日本企業も2ケタ台への減益幅になる恐れは否定できない。暗い話しばかりで恐縮であるが、事実を追うとこのようになるであろう。

Next: 米国をはじめ、いま世界の株価が好調な理由とは?



「20年間で5回」という「PBR1倍という物差し」

平均PBRが1倍、すなわち全銘柄が解散価値に等しくなった時というのは一つの異常事態であり、これは相場の大底圏内と見なしても良いのではないかという考えがある。筆者は概ねこの考えには賛成である。

過去20年間を振り返ってみると、PBRはリーマンショックの2月・3月に1倍を割っていた。瞬間安値が0.86倍である。そして民主党政権の時代に2012年1月に1倍を割っていたことが2~3ヶ月ある。瞬間安値は0.89倍である。

次にアベノミクスの壮年期の元気な頃、2016年2月のいわゆるチャイナショック、同年6月の所謂BREXITショック、この時には1.08倍であった。そして昨年の12月、この時には1.1倍であった。このように20年を振り返ってみても1倍前後ということは4回しかない。16年の2月1回、6月1回と見れば5回である。

世界同時株高の中の日本株

昨年のような老年期相場の末期では、本稿で言うところの「一足一刀の間境」をもって市場と対峙せずに、市場の真ん中に入っていたならば、おそらく市場に振り回されることが多かったと思う。ああいう時は手が出ない、というのは落ち着いた見方であり当然である。また1月以降のように動きが緩やかで市場に活気がないという時も手が出せない。個人投資家はあまり出てはいないであろう。

外国勢の先物主導で動いているに違いない。その連中は世界の先行きがどうなろうと日本経済がどうなろうと米国景気がどうなろうと短期的に自分が儲けさえすればいいのだ、という考えで動くから、いちいち付き合ってはいられない。なぜこんなに一生懸命日本株を買うのかと思うほど威勢良く買う日がある。これは筆者の当てずっぽうの推測であるが、「10月の消費増税は止めると決定した」というデマ・ニュースを耳に入れて買ってきたのではないかと思えるような動きだ。

ところでNY株は安値から81%上がった。NASDAQも65%上がった。中国でさえ去年の1月安値から見れば32%上がった。ドイツも1月安値から見れば35%上がった。年末以降から見れば日本は7%しか上がっていないし、12月安値から見ても13%しか上がっていない。

「米国大統領の就任3年目のNY株は高い」というアノマリーがある。翌年の選挙に向けて景気刺激策を前触れして予告するからだ。トランプの就任後3年目は今年に当たる。したがって、NY株は今年は高いということになる。しかしこれは所謂アノマリーであってこれを信ずるか否かはまた別な話しだ。

こういう時はどうするかと言えば、マーケットの現象を見て考えるしかない。

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米朝会談、合意文書発表見送り、米側の準備不足と見る

当面の市況-1;2ヶ月半ぶりの高値に戻したが活況はない

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目先市場の一安心感と依然残る中国マクロデータへの不信観

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“誇り高きジョンブル”は愚かだったのか

米中相互の読み違いが貿易戦争を悪化させた

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世界一の世界景気敏感株たる日本株

米中は一定の合意で歩み寄るか、一時休戦のシナリオか、交渉期限延長か

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米中貿易戦争と日米貿易摩擦の違い

既報で述べたしセミナーでも詳述した「霞ヶ関文学」の登場

H様よりの「質問」というよりは「交信」

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年3月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年3月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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