米朝会談と同日に行われた、トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告の公聴会。ここでロシアゲートをはじめとするマズい証拠が次々と飛び出し、事態は深刻になってきました。トランプ政権の2期目続投に暗雲が立ち込めたと言えます。(江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ)
本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2019年3月8日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
ロシアゲート絡みの証言も。野党は弾劾のタイミングを慎重に計る
米朝会談と同日、「トランプは詐欺師」との証言が飛び出した
ベトナムでの米朝首脳会談が始まった日に行われていたのが、米下院での元顧問弁護士マイケル・コーエン被告の公聴会です。
トランプ大統領は、「公聴会を開催したことが、米朝首脳会談が合意なしで終了したことにつながった可能性がある」としました。実際には最初から合意なしで決まっていたのですが、この公聴会の開催に対して抗議するためにこのような発言になったのでしょう。
さらにトランプ大統領は、「こんなことは、大統領が海外にいるときに例がないことだ。恥ずかしくないのか!」と批判しました。
しかし、トランプ大統領が批判する以上に、事態は深刻のようです。
トランプ大統領の顧問弁護士だったコーエン被告は、2月27日に下院監視・政府改革委員会の公聴会で証言しました。そして、トランプ大統領が過去10年間で約500回脅迫を指示したと明言しました。
大変なことになってきました。
まず、「トランプ氏は詐欺師」としました。そのうえで、コーエン被告は「私は自分の弱さと誤った忠誠心、トランプ氏を守るためにとった行為を恥じている。トランプ氏は人種差別主義者、詐欺師、ペテン師だと明言しました。
そのうえで、「証言を進める前に、私は議会に対し虚偽の証言をしたことを謝罪する」としました。
さらに、「前回の議会証言ではトランプ氏を守るためにきたが、今回はトランプ氏に関する真実を伝えるためにきた。トランプ氏は、米国を偉大にするためではなく、自分のブランドを偉大にするために出馬した。彼はよくこの選挙活動は政治史上、最も偉大なインフォマーシャル(テレビの通販広告)だと話していた」と暴露しました。
そのうえで、「トランプ氏は人種差別者だ。彼は黒人が率いる国で肥だめでない国はあるかと私に聞いたことがある。黒人は愚かだから自分には投票しないだろう」とも言いました。
さらに「トランプ氏は詐欺師だ。米フォーブス誌の富裕者ランキングなど、自分に有利に働く時は自分の総資産を過大に評価し、不動産税を減らすためには総資産を過小に評価する手段を使っていた」としました。
そうだとすれば、これはとんでもない人物であるといわざるを得ません。もっとも、いまの言動から想像がついてしまうのが問題でしょう。
ヒラリー陣営の自爆を事前把握
さらに、ウィキリークスのメール流出を事前把握していたとしています。
コーエン被告は「トランプ氏は民主党全国委員会(DNC)のメール流出を事前に知っていた。2016年7月、ロジャー・ストーン氏は、(ウィキリークスの創設者)ジュリアン・アサンジ氏との電話の後で、ヒラリー・クリントン氏の選挙陣営に打撃を与えるメールが数日後に出てくるとトランプ氏に伝えた」としました。
そのうえで、「トランプ氏は素晴らしいことじゃないかと応答した」といいます。核心に迫る話になってきました。
一方、情けない話も暴露されました。
トランプ氏は不倫関係にあったポルノ女優に対する口止め料の支払いをコーエン被告に依頼し、そのことに関して彼の夫人には嘘をつくよう頼んだというのです。
コーエン被告は「私が立て替えた口止め料を払い戻すためにトランプ氏の個人の銀行口座から発行された小切手のコピーを証拠として提出する。トランプ氏は選挙資金法に違反する犯罪計画の一部として、個人口座から口止め料を支払った」としました。
証拠が出てきてしまいました。
さらに、ロシアゲート絡みの話も暴露されました。
Next: あのロシアゲート絡みの証言も。トランプ弾劾の日は近い?
ロシアゲート絡みの証言も
コーエン被告は「トランプ氏が大統領選中にロシアと共謀したかについての直接的な証拠は知らないが、その疑いはある」としました。
「17年の夏、トランプ氏の長男などの選挙陣営のメンバーがロシア政府の関係者と面会したとの報道があった時にピンときた」とし、「16年6月にトランプ氏の長男がトランプ氏に対して小声で面会の準備は整ったと伝え、トランプ氏が私に知らせてくれと返答したのを覚えている」としています。
最後に、ロシアの不動産プロジェクトで「ウソ」をついたとしています。
ロシアにおける不動産プロジェクトのモスクワ・タワーの交渉は、選挙キャンペーン中に数カ月間続いたとしました。「トランプ氏は選挙活動中、交渉について指示していたが、そのことについて嘘をついていた」としました。「なぜなら、彼は当選すると思っておらず、モスクワの不動産プロジェクトで数億ドルの収入を得ると知っていたからだ」と明言しました。
そのうえで、「私は昨年の秋、連邦裁判所の裁判で、ある個人の指示と連携のもと、その個人の利益のためにとった違法行為に対して罪を認めた。このある個人とはトランプ大統領だ」としました。
ここまで具体的に話が出てきてしまうと、トランプ大統領は言い逃れはできないでしょう。
民主党は今後、トランプ氏のビジネスと2016年大統領選でのロシアとの関係について徹底究明する構えです。
与党もトランプ大統領を助けきれない?
「コーエン氏の証言はプロセスの始まりだ。終わりではない」と、監視委員会のカミングス委員長は指摘しています。18年の中間選挙で民主党が下院の支配権を握ったことで、カミングス氏は同委員長となっています。
一方の共和党側は、コーエン被告の人格と信頼性に矛先を向けて応酬しました。しかし、コーエン被告はこれを何とか乗り切りました。
コーエン被告の克明な証言の多さと、コーエン被告が16年大統領選のロシア介入疑惑について捜査するモラー特別検察官だけでなく、ニューヨーク州南地区連邦検察にも協力しているという事実はきわめて重大でしょう。
これでは共和党も「かなわない」「トランプ大統領を助けきれない」といった論調になる可能性があります。
Next: トランプにとってマズい証拠が続々と出るも、野党が弾劾に慎重な理由とは?
野党はトランプ弾劾に慎重姿勢
一方、民主党は攻勢を強めつつも、大統領弾劾の発議には慎重論もあるようです。
民主党下院トップのペロシ議長は、トランプ氏の弾劾発議は急がない考えを改めて強調しています。
世論の支持を固める前に弾劾を急げば、トランプ政権の打倒を目的とした政治的な狙いと米国民に受け止められ、逆に民主党の支持率を落とすリスクがあります。ペロシ氏はそれを懸念しているのでしょう。
今後は、トランプ氏とロシアの不透明な関係を巡る疑惑「ロシアゲート」の捜査終了の時期と報告書がポイントになるでしょう。
捜査を仕切るモラー特別検察官は、捜査報告書をまとめて司法長官に近く提出する見通しです。報告書は議会が大統領弾劾を判断する材料となります。
司法省が捜査結果を開示すれば、議会はトランプ氏の弾劾の是非の判断を迫られることになります。
トランプ氏の不正行為が発覚すれば、弾劾を求める声が一気に強まるでしょう。ただし、そこには慎重さが求められることでしょう。
トランプ政権に2期目もあるか?
いずれにしても、トランプ大統領の素行が徐々に表に出始めています。すべて事実だとすれば、結果は別として、大統領にふさわしいとは言えないことだけは確かでしょう。
しかし、それでも彼を選択したのが米国の上層部です。
あとは、今年1年のトランプ大統領のパフォーマンスをみて、もう4年大統領を任せるかどうかを決めることになります。
現状ではどのような評価をしているかは知る余地もありませんが、いずれ方向性が出てくるでしょう。今後のロシアゲートの行方を含め、じっくりとみていきたいところです。
大どんでん返しがありそうですね。
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米朝首脳会談の合意なしは想定通り
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- 「トランプ政権の弱体化が進展」(2/22)
- 「トランプ政権の崩壊シナリオ」(2/8)
- 進展しない米朝関係と疲弊する中国(1/25)
- 2019年は国際社会の再構築元年に(1/11)
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- 「米中間選挙の結果と今後の展望」(11/9)
- 「米中間選挙を前に国際情勢は混乱」(10/26)
- 「トランプ政権の先鋭化と中国の動き」(10/12)
『江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』(2019年3月8日号)より一部抜粋
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