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いま本格的に投資できない理由はこんなに…米中問題、消費税ほか世界を覆う不透明感=山田健彦

ファーウェイ問題や、メイ首相の辞任表明によるブレグジットの方向感など世界で先行き不透明感が強まる今。本格的な投資は控えたほうがよさそうです。(『資産1億円への道』山田健彦)

世界中で先行き不透明な状況が多すぎて方程式が解けない

当面はお小遣い程度の儲けで利確を

日本市場では局所的に上げている銘柄もありますが、トレンドを形成するほどには、上昇は長続きしていません。ほとんどの銘柄が、下落トレンドまたはもみ合い状況です。

先人は『あなたの周りを見回して、皆が「今は買う場面ではない」と言っているなら、そこが絶好の買い場だ』と言っていましたが、資金が潤沢にある機関投資家なら話は別ですが、個人投資家の場合は上昇トレンドに入った、と確信してからの参入でも、ここまで株価が下がった以上、遅くはありません

そうはいっても、何もしていないと市場参加者としての勘が鈍ってしまうので、打診買い程度に収めておき、少し利が乗ったら深追いせずに利確を徹底することが大事と考えます。

どのくらいの利が乗ったら利確するか、ですが筆者は「お小遣い程度」と考えます。金額にして5千円から1万円程度です。繰り返しますが、深追いは禁物です。

市場の行方が読めないのは、市場動向に影響を与える変数が多すぎるからです。

ちょっとあげてみただけでも、以下のようにいくつもあります。

米中貿易戦争の行方が見えない

いまだに中国がファイティング・ポーズを保ったままというのは予想外。実は中国にはまだまだ隠し玉がある。一つは、米国国債の最大の買い手は中国だということ。彼らが米国への対抗手段として米国国債を一気に売却すると、金利は急上昇し、米国の株式市場は一気に急落する。これは株高を頼みとするトランプ政権を窮地に陥れる。むろん、世界中の株式市場も急落必至となる。

トランプ大統領は、それを予想してかFRBに「金利を下げろ!これで中国に勝てる」と連呼している。余談だが、そうなった場合、日本とアメリカの金利差が縮まり円は対ドルでも上昇に転じる。これも日本の株式市場にとっては気掛かりな材料だ。

中国のもう一つの隠し玉は通貨安への誘導だ。通貨安は、その国の輸出に寄与する。

ただ、その場合、外国人投資家は為替の評価損を被ることになる。そうなれば外国人投資家が中国市場から資金を引き上げ、中国は資本流出に見舞われる可能性がある。

その他にもアメリカの強硬策を受け、個々の企業の経営が苦しくなるとそれらの企業が持っている米国株や世界各国の不動産の売却に動き、市場は混乱する可能性が高い。

Next: 米中の問題を加速する、ファーウェイの現状とは?



米中ハイテク覇権争い、ファーウェイに対する締め付け

ファーウェイは元人民解放軍所属の軍事技術関係者が創業。創業当時の資本金は微々たる額(日本円換算で20万円程度しかなったという説もある)だったが、中国軍、中国政府が積極的に資金援助、投資をして日本を含む世界中から優秀な技術者を高給で引き抜き、急成長してきた。米国企業からの半導体供給を止められても既に自前で生産するノウハウは取得済みとも言われる。

トム・クランシーの「米中開戦」でも同社がモデルの会社が出てくるが、監視カメラ技術、ネットワーク技術、顔認証技術で抜きん出た技術力を持っており、政府関係者、政治家、主要メディアで世論に対する影響力のあるライター等かなりの数の動向はファーウェイ経由で中国政府が把握している、ともいわれる。
※参考:あなたの顔も映っているかも、中国製監視カメラは世界中に―Blomberg(2019年5月23日公開)

イギリスのEU脱退問題

メイ首相が辞任を表明したことで、イギリスとEUは喧嘩別れになる確率が俄然上昇してきた。これはヨーロッパ経済にかなりの打撃を与える。通貨でも日本円は対ドルでこそ、そこそこ安定しているが、他の主要通貨に対しては全面高になってきている。
※参考:合意なき離脱が再び視野、英次期首相レース開始-5つの留意点―Blomberg(2019年5月25日公開)

原油価格への影響が大きい中東情勢

アメリカの対イラン強硬政策での落とし所が見えないイランはかつてのペルシャ帝国だが、イスラム教シーア派の盟主としてイスラム世界の主導権を握ろうとしている。

イスラム世界の主導権争いにはトルコ(かつてのオスマン・トルコ帝国、イスラム教スンニー派)、それにサウジ・アラビア(イスラム教スンニー派の盟主)も加わっている。

サウジはオバマ前大統領が親イラン政策を推し進め、イランと天敵関係の同国は一時、ロシアに接近していたがトランプ大統領のイラン敵視政策で親米に戻ってきた。

トルコはスンニー派の盟主の座をサウジと競ってきたが、アメリカがサウジに擦り寄るのを嫌ってアメリカと距離を取り始めて、トランプ大統領の不興を買っている。

ということで中東情勢も混沌としていてこれは、原油相場が不安定になる、との懸念を生んでいる。

Next: さらに、日本国内でも問題は山積み状態…



消費増税はあるのか?

国内に目を転じると、消費増税問題がある。政府は「リーマンショック級の不況とならない限り増税は行う」としているが、日本も含め世界的に景気のピークを予感させるような経済指標が相次いで発表されているのが投資家の懸念を呼んでいる。

消費増税を強行することで、日本はリーマンショック級の不況に突入する可能性大」という経済学者も少なからずいる。
※参考:消費増税ならアベノミクスは失敗、延期より凍結必要-本田悦朗氏―Blomberg(2019年5月25日公開)

参院選はどうなるのか?

現在の所、参院選では大した争点は無さそうだが、仮に自民党が大敗したら外国人投資家の売りを東京市場は浴びるかもしれない。投資家は政治情勢の不安定化を一番嫌うからだ。

マイナス金利政策はどうなるのか?

日銀の黒田総裁がマイナス金利政策を打ち出してから、相当な期間が経つ。「物価上昇率2パーセント」を打ち出してからはさらに時間が経っているが、一向に目標は達成される兆候がない

もしトランプ氏が日本の総理だったら、黒田総裁はとうの昔に「無能」の烙印を押され、更迭されていたろう。

ところで仮に消費増税が強行され、日本がリーマンショック級の不況に陥ったとした場合、恐ろしいことに日銀には何も打つ手は残っていない。せいぜい通貨安への誘導くらいだが、これにはアメリカからの非難を覚悟する必要がある。

また低金利政策は年金生活者を直撃している。そこに消費増税などすれば、以前にも増して消費抑制行動に彼らを走らせる。低金利政策こそが景気悪化の主要な原因だ、という説もあるが、あながち的外れとはいえまい。

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資産1億円への道』(2019年5月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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