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「沖縄独立」のスイッチを押すのは政府側?玉城デニー知事が語る、絵空事とは言えない事情

沖縄だけが多くの米軍基地を受け入れている実態や、政府の米国追従姿勢が強くなるにつれ、沖縄の「日本からの独立」を求める声も大きくなってきているようです。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年6月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

独立は目的ではなく手段。トランプ過剰接待を沖縄はどう見た?

EU議会が「EU離脱派の議員」を多く抱える不可思議

5月末に欧州議会選挙がありました。

日本で言う議会選挙ではなく、複数の国によって支えられている「EU」という集合体の運営を行う議会に、各国が議員を送り込むというもの。選挙は各国で行われ、議員は各国の人口によって配分されます。

最も多いのがドイツで、議員定数751人のうちドイツは96人。次いでフランスの74人。一番少ないのがエストニア、キプロス、ルクセンブルグ、マルタの6人となっています。

注目されたのは、3番目に多いイギリスの73人です。EUを離脱する交渉を進めているだけに、出ていくというイギリス議員を受け入れるのかどうかという問題もありながら、今回イギリスでも選挙が行われ、ブレグジット党(いわゆるEU離脱党)がそれまでの2大政党をおさえてトップの議席を確保した「皮肉さ」が注目されます。

他国においても、反EUとみられる極右勢力が議席を伸ばしています。

これが今後のEUの不透明さを増すことになり、世界的リスクと認識されることになるのでしょう。

EU議会が、EU離脱を主張している勢力を抱える不可思議な構図を抱えることになります。

「独立」が各国のテーマに

「独立」というキーワードを拾っていけば、イングランドスコットランドが、英国EU離脱を機に、英国連邦からの独立を考えているのでは?とも見られています。

スペインにおけるカタルーニャ地方(カタルーニャ共和国)独立の話も、ことあるごとに取りざたされています。

日本においては、明治維新での、函館政府の話は歴史で習うところです。アイヌ民族独立の話はこれ以降も語られる話ではありますが、沖縄独立・琉球王国復活という話が、最近の米軍基地問題からクローズアップされて、最近ではかなり真剣みを帯びて語られるようになってきました。

沖縄で「日本からの独立」を求める声

沖縄県だけが多くの米軍基地を受け入れている実態や、日本政府の米国追従姿勢が強くなるにつれて、沖縄の日本からの独立を求める声も大きくなってきているようです。

橋下徹前大阪市長は、沖縄が基地問題を解決する手段として、日本政府に対して中国軍艦を寄港させるくらいの強い姿勢を示さないとダメだという発言をしています。

沖縄が中国を選ぶ…

絵空事のような話であったのが、日本政府の態度を沖縄県民がどう捉えるかで、現実味を帯びてくるのではないかとも言われてきています。

Next: 絵空事ではない?琉球新報「沖縄が味方に付けるべきは中国、ロシア、北朝鮮」



琉球新報「沖縄が味方に付けるべきは中国、ロシア、北朝鮮」

もうこの話が絵空事ではなくなっているような雰囲気で、ここに来ていろんなところから「沖縄独立」というワードを耳にするようになりました。

急に意識しだしたのでよく聞こえる感覚に陥るという「カクテルパーティー効果」なのかもしれませんが、実は沖縄県の日本から独立する話は、随分以前から語られていました。

2019年3月31日に地元メディアである琉球新報Web版で「島人の目」のコーナーで「苦難覚悟で沖縄独立も」と題して、沖縄独立をテーマとした記事が掲載されています。

辺野古移設反対が多数を占めた県民投票の結果を受けても、安倍政権が「基地負担を軽減するため辺野古に新基地を造る」と沖縄を愚弄(ぐろう)する言葉を吐き続けるなら、もはや島はさらなる苦難を覚悟で独立を志向したほうがいいのかもしれない。その場合、沖縄が味方に付けるべき相手は中国、ロシア、北朝鮮のうちの1国。または3国全て。

出典:【島人の目】苦難覚悟で沖縄独立も – 琉球新報(2019年3月31日配信)

かなり踏み込んだ内容とはなっていますが、日本という国の一部である限り、希望ある沖縄の未来は展望できないという思いが強くあるのでしょう。

沖縄がいつも犠牲になる

先の知事選で、故・翁長知事の意思を継いで当選した玉城デニー氏による発言が、「沖縄独立」というキーワードを強く注目させたようです。

それが今年4月26日の定例記者会見で、河野洋平元外相が会長を務める日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として4月16~19日に訪中した際、面談した胡春華副首相に対し「中国政府の提唱する広域経済圏構想『一帯一路』に関する日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と提案したことを明らかにしたことが、波紋を広げているようです。

胡副首相は「沖縄を活用することに賛同する」と述べたということですが、橋下徹前大阪市長は「この程度の反逆ではまだ手ぬるい」として冒頭ご紹介した中国軍艦寄港発言へと繋がっていくのです。

この記者会見では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設工事に関し沖縄防衛局が本部港塩川地区から埋め立て用の土砂の搬出を開始したことについて「県民投票や衆院3区補欠選挙で示された民意を一切無視して工事を強行しており、民主主義を踏みにじるものだ」と批判しています。

そして、今回のトランプ大統領大接待です。

Next: 火に油を注ぐトランプ過剰接待、沖縄の声を束ねる玉城デニー知事の考えは?



沖縄の声を束ねる玉城デニー知事の考えは?

米国追随、従属姿勢との批判もありますが、安倍総理のそもそもの政治信条が、米国追従が国益にかなうとする立場ですから、その支持母体の意向からも当然の行動とは思われますが、沖縄県民から今回の大接待はどのように映ったのでしょうか。

実は玉城デニー知事は、沖縄の将来像として、「自治州的な一国二制度」がベストだとの認識を示しています。AERA(2019年3月5日)記事に、玉城デニー知事のインタビューが紹介されています。

多くの県民が望むのは、政府から「これだけの財源と権限で沖縄の行政をしっかりやって下さい」と任される一国二制度です。沖縄の地理的優位性を生かして、アジアに向けた日本の玄関口、日本の中のアジアのフロントランナーとしての位置づけを明確にしたい。

出典:玉城デニー知事が描く沖縄「自治州的な一国二制度」とは? – AERA(2019年3月5日配信)

中国からも東南アジアからも近い沖縄を経済や文化交流の中心にするという構想が、玉城デニー知事にはあるようです。おそらく「一帯一路」に関する発言も、その構想の一環なのかもしれません。

例えば沖縄にいる自衛隊が、アジア各地の災害に真っ先に駆けつけるという存在になれば、諸外国から信頼と安心感を持って受け止められるでしょう。独特な歴史、文化、地理的特性をもっている沖縄だからこそ、一国二制度に移行すれば日本にとっても沖縄にとっても将来展望がより広がると思います。

出典:同上

このインタビューの中では、日本からの独立は否定されています。

「真剣に米軍基地問題を考えて」独立は目的ではなく手段

沖縄が日本から独立することが目的なのではなく、日本政府が真剣に沖縄県における米軍基地問題を考えて欲しいという思いがあり、その手段として出てくるのが「独立」という言葉なのでしょう。

なにも沖縄県民が日本からの独立を願っているわけではないと思われます。

Next: 沖縄独立のスイッチを持っているのは、沖縄ではなく「国」である



沖縄独立のスイッチを持っているのは、沖縄ではなく「国」である

故・翁長前知事は、一向に米軍基地問題が進展せず、国側が結論ありきで臨んでくる姿勢に業を煮やしているときでも、沖縄独立論への考え方は「議員も自分の支持者とも話して、そういう方(独立論者)はそう多くはないとご承知と思う」と述べ、否定的な考えを示していました。

沖縄独立問題は、にわか湧き上がった問題ではなく、静かに、それでもことあるごとに論じられてきた問題もあります。

沖縄独立のスイッチは、沖縄県側にあるのではなく、国側が有しているような気もしないではないですね…。

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image by:Lance Cpl. Nicole Rogge at Wikimedia Commons [public domain], via Wikimedia Commons

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らぽーる・マガジン』(2019年6月3日号)より一部抜粋
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