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「7pay」不正利用続出でお先真っ暗。どこで「ファミペイ」と差が付いたのか?=岩田昭男

7月1日開始の「7pay(セブンペイ)」で不正利用の報告が相次いでいる。アカウントを乗っ取られ、登録したクレジットカードから勝手に何十万円もの金額をチャージされて使用されるという。運営もユーザーに警戒を呼びかけているが、出足から大きくつまづいてしまった状況だ。同日にサービスを開始した「ファミペイ」はどうか。それぞれの戦略について解説したい。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

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プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。

キャンペーン合戦を傍観するだけの「セブンペイ」に未来はない?

乱立する◯◯ペイ、どれを選ぶべき?

PayPay、LINE Pay、楽天ペイなどのコード決済が20種類も出ているので、「その中から何を選べば良いかわからない」という人が多いようです。

確かに20種類もあれば、どれを選んでいいか迷うはず。しかし、その答えは意外に簡単です。ライフスタイルで選ぶべきなのです。

通勤で使いたいのか、買い物で使いたいのか、旅行で使いたいのか、健康増進で使いたいのかなど。それには、よく行く店で利用できるコード決済を持つのがよいというのが正解です。

セブンイレブンの「7pay(セブンペイ)」

7月1日はセブンイレブンファミリーマートが、それぞれセブンペイファミペイをスタートさせた記念すべき日なので、今回はコンビニで使うコード決済について考えてみたい。

まずは、コンビニの王者のセブンイレブンであるが、ここは以前からnanacoという電子マネーをうまく使っている。nanacoは、電子マネーには珍しくポイント優位の設計で、他社が0.5%の還元率のところを2倍の1%のポイントを付けて有利な展開をしている。

そして新たに出たセブンペイは、当然、nanacoにない機能をたくさん搭載していると期待されている。

24時間営業と還元率の関係

しかし、このところセブンイレブンは、24時間営業を嫌うオーナーたちが働く時間を自分たちで決めたいと言い出して窮地に立たされている。

折からの働き方改革もあって長時間労働が社会問題化したために、結局、経営陣はオーナー側の要求を飲むことになった。

それに合わせるように、7月1日からnanacoのポイント還元率が1%から0.5%に減らされた

これについては、「全体の売り上げが落ちると見た経営側が、ポイントの原資で補おうとしている」といった見方もあったが、それはちょっと考えすぎだろう。

むしろセブンペイへの付け替えと見るべきだ。

Next: 使うメリットが少なすぎるセブンペイ、普及させる気があるのか?



セブンペイの還元率は最大1.5%

セブンペイの還元率は基本0.5%であるが、7月〜8月は0.5%をプラスして1%として、nanacoに代わる新たな主役に育てようとしているように見える(9月はそれに0.5%を加えて1.5%まであげる予定)。

さらにセブンイレブンにしては珍しく、セブンペイの導入に合わせて、PayPay、LINE Pay、メルペイ、それに中国のアリペイとWeChatPayの5ブランドの受け入れを発表した。

ローソン、ファミリーマートがコード決済に寛容な姿勢を見せていたから、それに刺激されてのことだろうが、セブンイレブンがオープンな姿勢を見せるのはこれまでにないことだ(コード決済が認知されたということかもしれない)。

コード決済「3ブランド」が早くもキャンペーンで盛り上がる?

そして早速、これらのコード決済陣営のうち「PayPay・LINE Pay・メルペイ」の3社は、7月11日から21日まで、セブンイレブンでの買い物で支払い金額の20%還元を行うと発表した。

これには当然セブンペイも続くと思っていたが、なぜかそのキャンペーンには参加せず、1%還元のままで押し通すようだ。

これには驚いた。せっかくの会員獲得のチャンスをみすみす逃すことになるのである。

20%還元をやっている横で、同じものを買っても1%還元にしかならないのでは、セブンペイを使おうという気にならない。今からでもいいから20%還元を一緒にやるべきだと私は思う。

ただ、実際には、セブンにとっては、他のコード決済が勝手にやってくれてもそれで儲かるのだから、それで十分とみているのかもしれない。金持ち喧嘩せずか。

ファミリーマートの狙い「金融事業」参入へ

一方のファミリーマートは別の勢いがある。その大株主は伊藤忠商事である。同社はこれまでも金融分野への進出をうかがっていたがそのチャンスがなかった。

今回、初めてファミペイという自らの決済手段を持ち、それを使ってTカード中心の現体制を一新して、伊藤忠商事中心の体制を作り上げようとしている(「カードの日」と「ファミランク」など順次廃止)。

さらに有利なのは、昨年末のPayPay祭りに参加してコード決済の熱狂の中で貴重な経験を積んだことである。 PayPay以外では、ビックカメラとともにコード決済の中身が一番わかるプレイヤーと言えるだろう。

ファミリーマートは、祭りの顛末もすべて見ていて、その成功と失敗、メリットとデメリットも目の当たりにしてきた。それがこれから役に立つだろう。

Next: ファミペイは「総額88億円あげまくっちゃうキャンペーン」を投入、勝算は?



「総額88億円あげまくっちゃうキャンペーン」

まず、宣言しているのは今回のキャンペーンを「総額88億円あげまくっちゃうキャンペーン」と名付けている点だ。それに沿って様々な景品を用意して全体を盛り上げようとしている。

これなど、PayPayがやったことをなぞっている。また来年の2月までをキャンペーン期間としているが、長期に設定したのは単価の低いコンビニに考慮してなのか。

それからファミリーマートの特徴は、クーポン戦略を打ち出していることだ。ファミチキや焼き鳥といった名物商品がただでもらえるクーポンをいろいろ出してくれる。これも目玉の1つだろう。

ポイントについては200円で1ポイントが貯まる。さらに7月いっぱいは買い物すると20%の還元してくれる。それだけでなくアプリにチャージをすると15%還元が受けられる。これも大きな目玉だ。

軍配は「ファミペイ」か

24時間営業の問題とnanacoの改悪が重なり混乱気味のセブンペイと比べると、自前の決済ツールを得たうえにPayPay祭りの成功体験を生かして進撃を始めたファミペイ。

両者は対照的なスタートを切ったようにみえるが、秋には10月の消費税キャンペーンを控えていて、これから戦いは熱を帯びてくるだろう。

中でもファミペイは、言ってみればコンビニ版のPayPayと言えるから大いに期待したい。

セブンは外から招いたコード決済事業者をうまく使って、儲けをあげようとしている。内部の問題が解決すれば徐々に体制を整えてくるだろうから、それほど心配はしていない。

Next: セブンとファミマの「いいとこ取り」で得をするなら?



セブンとファミマの掛け持ちでおすすめのツール

消費者の立場に立って、セブンとファミマの2つのコンビニがあって掛け持ちで使うなら、どう使うのが良いかを考えてみよう。

まず、セブンを使う場合はメルペイをお勧めしたい。7月11日から21日まではメルペイを使うと20%の還元を受けられる。

ほかの日はファミマで買い物をする。ファミペイアプリにチャージすると15%の還元を受けられる(7月いっぱい)。買い物しても7月は20%の還元を受けられる。これを繰り返せば還元金額はどんどん大きくなる。

またセブンでメルペイ+IDを使うキャンペーンが始まれば、70%還元になるから大きなお得を取れる。キャンペーンの時期は限られているので、その時に集中して使うようにするのがうまいやり方だ。

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  • スマホ決済。いよいよコンビニに波及(7/1)

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達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2019年7月1日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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