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岩田社長の退陣は確定…ロハコ事業をめぐる、アスクルとヤフーそれぞれの言い分

23日にアスクルの岩田社長から、ヤフーの退陣要求に対する反論。それに対しヤフーは、24日、岩田社長の再任に反対する決議権を行使しています。(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)

ヤフーとプラスは、総会を待たず岩田社長退陣の決議権を行使

アスクル:ヤフーに対する法律意見書他

2019年7月23日、アスクル<2678>が、「ヤフーからの社長退陣要求に関する一連の件に関する法律意見書取得のお知らせ」と「アスクル独立役員会 記者会見実施のお知らせ」をプレスリリースした。

以下はその内容他。

1.上村達男名誉教授の意見書のポイント

(1)総論:
日本では一般に株式を多数有していれば資本の論理により、社長の不再任は免れがたいという思い込みがあるようだが、資本の論理とは出資に対応する財産権の問題であり、株式については利益配当請求権ないしキャピタルゲインの帰属のような問題にはそのまま妥当する。

しかし、議決権は企業のあり方や企業社会のあり方を左右するいわば企業社会におけるデモクラシー関与権であり、株主がそうした権利を行使するに相応しいとされてきたのは、欧州では株主とは個人や市民であるという強い規範意識の存在を理由とする。

アメリカは日本と同じかというと、支配株主の忠実義務を始めとする責任論が権利行使と一体である(支配株主は会社ないし少数株主に対する忠実義務を負う)。

株式を多数有していれば無条件に責任なき支配が貫徹されるわけではない

(2)プラス(P社)社長及びヤフー(Y社)から派遣された当社常勤取締役及び非常勤取締役の任務懈怠責任

1)取締役の責務とは、第一義的に法令・定款の遵守であり、会社の事業目的を遂行するために尽くすべき義務を負う。

2)P社社長である当社社外取締役、並びにY社から派遣された当社常勤取締役及び非常勤取締役の言動はいずれも、当社取締役としての注意義務を怠った(過失がある)という次元ではなく、Y社(ひいてはP社)の立場に立って当社を害する意図、すなわち悪意に基づく言動といえる。彼らは当社取締役として、当社に敵対的な対応をとったのであるから、当社に生じた損害について、損害賠償責任を負う

(3)ガバナンス・システムの信任を受けた当社社長の再任拒否というY社の行動は、グローバル・スタンダード及び経産省の実務指針を無視するものであること

(4)Y社及びP社は濫用的買収者に準ずる者であること

(5)Y社による一連の行為は業務・資本提携契約に違反すること

※参考:ヤフー株式会社からの社長退陣要求に関する一連の件に関する法律意見書取得のお知らせ‐アスクル株式会社(2019年7月23日公開)

2.独立役員会としての意見

<岩田社長退任の是非>

大株主から経営陣に対して業績悪化・低迷への責任を指摘する声があることは重く受け止めるべき。 とはいえ、指名・報酬委員会で次期取締役候補者について議論・決議した後、 株主総会直前に「トップを交代せよ」と言われても現場は混乱するだけ。かえって企業価値にマイナスになる。 本年総会では、指名・報酬委員会の決定した取締役候補者(岩田社長を含む)を選任し、必要であれば、来年に向けた指名・報酬委員会で、Y社の意見も踏まえて十分な時間をかけて議論すべきである。

※参考:「アスクル株式会社 独立役員会 記者会見」実施のお知らせ、資料について‐アスクル株式会社(2019年7月23日公開)

3.株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え

<会社法>

第八百三十条 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(「株主総会等」)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。

株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

⇒ 法令に違反している訳ではない
⇒ 無効の確認の訴えをすることはできない

4.取締役選任議案(第2号議案) に対する、ヤフーの議決権行使のお知らせ

アスクルの中長期的な企業価値向上、株主共同利益の最大化の観点から、抜本的な変革が必要と判断し、インターネットを用いた方法により議決権を行使

1)岩田社長の再任に反対

2)業績低迷の理由である岩田社長を任命した責任など総合的な判断から、独立社外取締役の戸田一雄氏、宮田秀明氏、斉藤惇氏の再任にも反対

※参考:アスクル株式会社の第56 回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案)に対する、当社の議決権行使のお知らせ‐ヤフー株式会社(2019年7月24日公開)

<プラスも同様の議決権を行使>

※参考:アスクル株式会社の第56回定時株主総会における 取締役選任議案(第2号議案)に対する当社議決権行使に関するお知らせ‐プラス株式会社(2019年7月24日公開)

<感想>

本件は、ヤフー/プラスからの社長退陣要求に対する会社側の反論他。

会社側が法律意見書や独立役員会の意見を発表したのは、世論を味方に付ける戦術に見えたが、翌日には両社は独立社外取締役を含めて反対の議決権行使を発表

社長と独立社外取締役の退陣は確定し、会社法830条2項の株主総会決議の無効の訴えも不可能。アスクル社員への影響が大いに気になる。

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image by : 編集部

元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2019年7月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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