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ファーウェイ、欧州を植民地化?伊に3300億円投資する狙いと日本孤立の危険性=原彰宏

ファーウェイがイタリアに3年間で3,300億円を投資すると発表。一部では欧州植民地化として批判されていますが、ファーウェイが受け入れられる理由もあります。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年7月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

欧州・中国・ロシア・朝鮮半島 vs 日本に? 中国の強かな世界戦略

中国による欧州植民地化計画?

7月15日、ファーウェイ・イタリアのトーマス・ミャオ最高経営責任者(CEO)はミラノで記者会見し、「(イタリア)政府は米中間の問題に影響されないオープンで透明性のある政策を取っている」と述べ、「今後3年でイタリアでの物品調達に19億ドル(約2100億円)、オペレーションとマーケティングに12億ドル(約1300億円)、研究開発に5200万ドル(約56億円)を投資する」と表明し、世界中の驚きの中、一部メディアは「中国による欧州植民地化計画」の始まりと非難しました。

イタリアへの3,300億円投資の内訳は上記にもあるとおり、

・物品調達:約2,100億円
・研究開発:約56億円
・販売促進:約1,300億円

その結果、イタリアに1,000人の直接雇用、2,000人の下請け雇用が生まれるとしているのです。

米中貿易戦争において、米国が世界各国にファーウェイ製品を使わないように要請していましたが、強行にファーウェイ製品を締め出す動きは「ファイブアイズ」と呼ばれる、英米を中心とした5ヵ国の諜報に関する協定国の一部にしか見られていないようです。

5Gは、大量の情報を高速かつ瞬時に送るには欠かせない技術ですが、電波送信距離が短いことから多くの送信基地が必要になってきます。

ファーウェイ基地局の世界シェアは?

英国調査会社IHSマークイットによれば、ファーウェイ基地局の世界シェアは

・2016年
エリクソン:27.7%
ファーウェイ:25.3%
ノキア:23.6%
ZTE:12.3%
サムソン:3.5%

・2018年
ファーウェイ:31.1%
エリクソン:27.0%
ノキア:22.0%
ZTE:11.0%
サムソン:5.0%

となっており、基地局数においてファーウェイがリードしているのは一目瞭然です。

5G普及において、基地局数の普及率から見て、新たな基地局設定費用を考えれば、ファーウェイと組むのは理にかなっているのでしょう。

ただファーウェイの基地を経由することで安全性が問われているというのも、中国という国への信用の問題なのでしょうね。

ただここに至るまで、ファーウェイは、地道に、それこそ手作業で一本一本電柱を建ててまわったことによります。とくにアフリカを網羅したのはこの手作業で、当時日本企業は「アフリカに電柱を建てて何の利益があるのか」とファーウェイの動きを無視していたのが、今に至ってこれだけの差に広がったというのですから、日本企業の先見性が問われますね。

Next: 排除しているのはトランプ勢だけ?ファーウェイが選ばれる理由



ファーウェイが選ばれる理由

ファーウェイが選ばれる理由は、基地局数シェア世界1位だけではありません。

ファーウェイには5G基地設営において「極単(超シンプル)」という手法があります。

「帽子をかぶせるだけで5Gは作れる」と表現していますが、いまある4G基地局をそのまま使う技術があるようです。

「ファーウェイ・マジック」と呼ばれるそうですが、5G基地局を設置するには、今まではトラック1台分の材料がないと造れないものを、ファーウェイは、リュックサック1つ分に集約できるようにしました。それゆえとても軽くひとりでも設置可能で、まさに道路が狭く坂が多いイタリアではもってこいの技術です。

・軽い(20kg)
・ひとりでも設置可能
・4G基地局にそのまま設置可能

まさに基地局の省エネ化をすすめた「ファーウェイ・マジック」は、ファーウェイによれば「他社の追随はムリ」と断じています。

圧倒的優位性ということなのでしょうね。

中国におけるイタリア投資の意味

中国の狙いは「G7の取り込み」であるといわれ、G7の一角を崩すのが「イタリア投資」であるとしているようです。

とにかく一帯一路構想にG7を取り込みたいのです。

「陸のシルクロード」の先はロンドンだったのですが、英国EU離脱騒動により、まずは「海のシルクロード」の先であるイタリアに照準を合わせてきました。

イタリアやギリシャは「海のシルクロード」の上陸先で、一帯一路構想の要衝となっています。

「政治的・経済的に混乱中で狙いやすい…」

それが中国がG7切り崩しのためにイタリアに照準を合わせた要因の1つで、国民性も、中国とイタリアは似ているそうです。歴史的に見ても漢帝国とローマ帝国にはつながりがありますからね。

ただイタリア側も、もろ手を挙げて中国を歓迎しているようではなく、中国による植民地化を気にしているようでもあります。

マイク・ペンス米副大統領が昨年、保守系シンクタンクでの講演で、中国の「借金外交」を非難していました。お金を貸して港や設備を取り上げるというやり方を痛烈に避難していました。

Next: 欧州・中国 vs 米国・日本の構図が完成?中国の欧州植民地化疑惑は…



欧州植民地化疑惑は…

「G7を切り崩したい」というのが中国の狙いであることは読み取れます。

中国が欧州を植民地化するのでは?との疑惑は、2015年AIIB構想で、イギリスを味方につけたことにあるようで、そのあとドイツやフランスが参加を表明、その後カナダも参加、G7でAIIB構想に参加していないのはアメリカと日本だけとなりました。

2018年のイタリアと中国の貿易量は500億ドルを突破しました。

2005年からファーウェイが欧州進出、英国ブリティッシュテレコムと契約を結ぶことで信用を得て、ドイツやフランスにもファーウェイは進出し、欧州市場でのモバイルはフェーウェイがシェアトップとなりました。

このまま中国と欧州との関係が密接なものになっていくと、

欧州・中国 vs 米国・日本

という構図が見えてくることになってきますね。

おりしも欧州トップが総入れ替え(5年に1度)する時期で、今が中国にとっては大きなチャンスとも言えます。

EU側も中国資本の欧州進出に危機感を抱きながらも、経済的な結びつきをないがしろにはできない事情もあり、3月にEU首脳会議でBrexitとファーウェイ問題を話し合った際にも、結論は12月末まで先送りとし、ファーウェイへの対応は27カ国(英国を除く)で自由に決めることになりました。

バックドアをつければ情報は抜き取れる

バックドアとは、情報セキュリティ用語で、

「コンピュータに設けられた通信経路のうち、正規の経路や手段を経ずにシステムへ侵入するために設けられる接続経路

となっています。

不正侵入者が一度マシンに侵入した後、再度このマシンへの侵入を試みる時の仕掛けをつければ、情報は抜き取られることになります。

ファーウェイは、バックドアを付けないことを契約で明確にしているそうですが、それを信用するかどうやって検証するかが問題だとしています。

膨大な研究開発投資で成長している

ファーウェイは中国国営企業ではなく民間の非上場企業です。中国政府はファーウェイより国営通信会社のZTEを支援していました。

ファーウェイは国家と距離をおくために、本社を北京から遠く離れた深センに置き、政府や株主の規制を排除するために非上場を貫いてきました。

任正非CEOの経営ポリシーは長期的視野を持つことで、だから金融と不動産には手を出さない姿勢をとってきました。

長期的研究開発にお金をつぎ込むのがファーウェイ哲学で、毎年売上の10%以上を研究開発につぎ込むことを「ファーウェイ基本法」としています。

現在の研究開発費は、売上の15%もあるそうです。

Next: ファーウェイはトランプに叩かれだしてから中国国家と密接になってきた



中国国家と密接な関係になってきたファーウェイ

むしろ米国がファーウェイを叩き出してから、ファーウェイと中国国家と密接になってきたそうです。ファーウェイは一切広報活動はしてこなかったのを、米国との問題があってから、任正非CEOがテレビに出るようになったそうです。

日本からのファーウェイへの部品調達額は7,300億円、米中摩擦による大損失を被っていると言っても過言ではありません。

米国にとってもファーウェイに替わる会社はノキアかエリクソンかサムソンぐらいしかないとまで言われています。

日本では、スマートフォンに搭載されているプロセッサーや、マルチメディアIP、ソフトウエアに至るまでそのの技術が活用されている英半導体設計大手ARMを買収したソフトバンクにも注目されます。

ファーウェイの「スマートシティ構想」

役所内の大型モニターでタッチした地域の物価や人の流れ、交通状況や天候が一瞬でわかる…
戸籍・納税・各種届など全ての役所の業務を統合される…。

ビッグデータが社会の流れを円滑に便利にしていきます。

中国のアリババ本社入り口には大きなモニターがあり、街中の交通状況が映し出されていて、時間帯や車の流れで信号を調整して渋滞をなくすシステムを稼動させているそうです。

信号操作で救急車などの緊急車両が、いかに早く効率的に現地にたどり着けるかをビッグデータで検証し実証しています。キーワードは「ビッグデータ」です。

ファーウェイ「スマートシティ構想」では、
・スマート教育:カリスマ教授の授業配信実施
・スマート医療:身分証に健康データを内臓 自宅で血圧測定や脳スキャンが可能
・スマート航空:複数のターミナルビルの運用をデータにより統合
・スマート油田:運営のデジタル化で採掘の効率化
というのがあるそうです。

ファーウェイはこれらに関連する情報を提供するだけとしています。それも比較的安く提供しているそうです。

だからファーウェイは世界に急激に広まったとも言えます。

ファーウェイは「電子の土管屋」と言われ、ようは「つなぐだけ」の会社で、たとえば、システムだけを提供して車自体は作らないという理念のようです。

ファーウェイは、ビッグデータに強みがあると言えます。

確かに、ITと社会主義は親和性が高いと言われています。それがディープラーニングの差に表れてきています。なにせ14億のビッグデータがありますからね。

そのビッグデータを活用して効率的社会を実現するのが「スマートシティ構想」なのでしょうね。その中核をファーウェイが占めようとしているのでしょう。

Next: 中国にはプライバシーという概念がない? 景気が良ければ気にしない主義



プライバシーの考え方

もともと中国にはプライバシーという概念がないようです。

中国では「プライバシーか便利かどちらかを選べ」と言われたら、迷わず100%「便利を選ぶ」と答える人が圧倒的に多いそうです。

「ボタン1つですべてができれば良いじゃない…」。それが中国のIT技術躍進を支えているのですかね。

でも、IT社会が成熟していくことは、まさにプライバシーという概念がなくなることにもなります。それはなにも中国がどうのという話ではなく、今でも日本は大量の米国製品を使っていて、それはイコール米国に大量に情報が抜かれているということにも繋がります。

すでに日本は、米国に情報管理されているということを理解しなければなりません。米国国内では、国民のプライバシーは国家に管理されていると言えますからね。

日本では「情報統制」という言葉に不幸な歴史が重なり、国家による個人の権利が著しく制限されることにアレルギーを感じているところは否めません。

今の行政を見れば、あるいは政権のあり方を見れば、とても個人情報をゆだねる気にはならないのも理解はできます。

景気とプライバシー意識

景気が良いから、すべてに鈍感になっているとも言えます。

中国の国是は「高成長率」です。景気が良いことで、他のすべてに眼を瞑れるわけで、ひとたび景気が悪くなれば、大きなハレーションが起こることになりかねません。

まさに「薄氷の上の安全・安心」なのです。それは日本も香港も同じ、そして中国も同じなのです。

日本は景気が良いから政権交代を望まず、現状維持を良しとするわけで、そのために政府はなんとしてでも景気は良い状態を保ちたい、あるいは景気は良いと印象づけたいのです。

中国はデータを改ざんしてまでも景気を良く見せると言われていますが、もはや日本もその点は同じですね。

景気とプライバシーの関係は、切っても切れないものだと考えられます。景気の良さですべてを封じ込む、景気の良さでごまかすとも言えます。デメリットを見えなくするのですね。

Next: やがて日本は孤立する?中国の世界戦略とは



中国の世界戦略

アジアにおける中国の存在感が増し、極東上空で中国とロシアの戦闘機が並んで飛ぶ様を見れば、米韓日の関係を壊しに来たと推測する専門家の意見もあります。

朝鮮半島が統一され、中国やロシアとの関係が強固なものにあれば、米国は中国に歩み寄ってくると思われます。

そして、日本は孤立します。

もし米国が日本を差しおいてAIIB参加表明をすればどうなるでしょう。

欧州・中国 vs 米国・日本

の構図は、今回のことで見て取れるとして、

欧州・中国・米国 vs 日本

いや

欧州・中国・ロシア・朝鮮半島(韓国・北朝鮮) vs 日本

となるのが恐ろしいですね。大丈夫でしょうかね。

マーケットにおいても、欧州株は中国景気によって左右されるようになっています。世界勢力地図は大きく変わってくることでしょう。

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らぽーる・マガジン』(2019年7月29日号)より一部抜粋
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