香港デモ、南北朝鮮の決裂など国際情勢は再び大きな変化の時を迎えています。なかでも韓国のGSOMIA破棄はやり方を間違えており、孤立は避けられないでしょう。(江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ)
本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2019年8月23日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
GSOMIA破棄は取るに足りない? 韓国は焦ってやり方を間違えた
「第2の天安門事件」が起こる?
国際情勢は再び大きな変化の時を迎えています。各国とも激しく動いています。それらの事象をどうとらえるべきなのか、ひとつひとつみていきましょう。
とにかく中国の動きが不穏です。香港と言った方がよいでしょう。
すでに報じられているように、「逃亡犯条例」改正案に対する抗議活動が続き、事態の収束が見通せない中で、中国政府は軍部隊の投入による鎮圧も辞さない姿勢を示しており、情勢は一段と緊迫しています。
テレビ映像でも頻繁に惨状が映し出されています。見ていられないほどの状況ですね。
一部には、中国政府が強硬手段に出て、「第2の天安門事件」に発展するのではないかとの指摘もあるようです。
香港デモを喜ぶトランプ米大統領
この暴動に喜んでいるのは、トランプ米大統領でしょう。
トランプ大統領は、「習近平国家主席が香港の抗議活動家らと面会すれば、双方の対立は解消する」として、習主席に対話による解決を促しています。
他国の状況に口出しをして、習近平体制に圧力をかけています。
今回の事件は、世界のみんながその動向や行方を注意深く見ています。中国政府の対応が間違えると、想像を超える批判を受けることは必至です。
トランプ大統領はそのことを十二分に理解しています。「これは格好のネタだ」と感じていることでしょう。
これだけ話が表面化し、大きくなってしまったことで、中国政府は身動きが取れなくなりました。下手に動けば、国際社会からきわめて厳しい批判を受けることは間違いありません。
香港という自由な地域を力でねじ伏せようとすれば、それは世界の流れから逆行します。
「香港は中国の一部だ」などときめつけ、力業で弾圧すれば、米国からの圧力は今の比ではないでしょう。
このように考えれば、中国の弱体化は経済と政治の両面で今後相当なスピードで進展する可能性が出てきたといえます。それも米国の圧力がかなり効いたということになるでしょう。
一方、朝鮮半島にもおかしな動きがあるようです。
Next: GSOMIA破棄は自然な成り行き? 北朝鮮は韓国に見切りを付けた
北朝鮮と韓国が決裂
北朝鮮で南北関係を担当する祖国平和統一委員会の報道官は、「韓国と再び対座することはない」としています。
何があったのでしょうか。
韓国の文在寅大統領は、45年までに朝鮮半島の和平と統一を目指すと表明し、北朝鮮に対話を呼びかけましたが、北朝鮮がこれを拒否した格好になっています。
北朝鮮は米韓合同軍事演習に抗議し、短距離ミサイルの発射を繰り返しました。北朝鮮の報道官は、「南北対話が失速し、両国首脳による昨年の歴史的会談での合意の実行が行き詰まっているのは、完全に韓国の責任だ」と主張しています。
そのうえで、「米韓軍事演習は、北朝鮮に対する韓国の敵意の表れ」としています。
韓国の文大統領は、「北朝鮮による最近の懸念すべき行動にもかかわらず、対話に向けた勢いは揺るぎない」と強弁してます。
北朝鮮は韓国に見切りを付け始めた
北朝鮮報道官は、「米韓軍事演習が終了すれば、南北対話が再開されると考えるのは妄想だ」と一蹴しています。さらに、「韓国は将来の米朝対話の恩恵を得ようと口を挟んでいるが、そのような愚かなことはやめたほうがいい」とし、米国との対話の可能性に言及する一方で韓国をけん制した。
この発言からもわかるように、北朝鮮は韓国を見切り始めています。これは米国も同じです。軍事演習はしていますが、それはあくまで演習ですから、特段問題はありません。
しかし、北朝鮮はこの演習を利用して、韓国に揺さぶりをかけています、それも、ある種の米国のお墨付きをもらっているかのようにです。おそらく、そのような立て付けになっているはずです。
韓国の国際社会での地位は、もともとそれほど高いわけではありません。むしろ、重視されにくい国です。
しかし、米国と北朝鮮の間を取り持ったとの自負があります。もっと良い扱いをしてもらってもよいはずだという思い込みがあります。
しかし、米国も日本も冷たい対応をしています。もはや用無しともいえるほどの態度です。しかし、それは仕方がないでしょう。朝鮮半島の統一に向けた動きの中で、韓国は重要な位置づけにはなっていないことが背景にあるものと思われます。
Next: 焦ってやり方を間違えた韓国。GSOMIA破棄は取るに足りないこと
GSOMIA破棄は取るに足りないこと
それに対して、韓国は存在感を示すことが必要と考えたのでしょう。相当の焦りです。しかし、やり方を完全に間違えました。
そして、挙句の果てに、韓国は日韓防衛当局間で軍事機密のやりとりを可能にする軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると22日に発表しましたた。同日午後の国家安全保障会議(NSC)で破棄の方針を決定し、文在寅大統領が了承したといいます。
繰り返される弾道ミサイル発射など北朝鮮の脅威に対抗する日米韓の安全保障の連携は、文政権下で後退を余儀なくされることになります。
もっとも、ミサイルについては、その意義は当メルマガですでにお話した通りです。なにも問題ありません。韓国の情報は必要ないとも言えます。
表向きは「大問題だ」というようにしなければなりません。しかし、米国と日本の連携、さらに北朝鮮の現在の位置づけを考えると、韓国からの情報はもはや無価値になっている可能性が高いといえます。
しかし、韓国側は、これを大ごとのようにし、日本のせいだと声高に叫びます。ことを大きくして、注目させたいわけです。しかし、その意味ももはやありません。
破棄を発表した韓国大統領府の金有根・国家安保室第1次長は、「日本政府が貿易管理上の優遇対象国から韓国を除外すると決めたことが、両国間の安保協力環境に重大な変化を招いた」としています。
そのうえで、「敏感な軍事情報交流を目的に締結した協定を持続させるのは国益に合致しない」とし、日本への不信感が破棄の理由としました。そんなことは、もはや日本にとってはどうでよいことです。
トランプも韓国のことはもうどうでもよくなっている
GSOMIAは朴槿恵前政権下の16年11月に締結されました。北朝鮮が核・ミサイル開発を進める中、日韓両政府による安全保障上の連携の「象徴」とされ、北東アジアの安定に向けた日米韓協力の支えとなっていました。
しかし、日本政府が安全保障上の懸念を理由に韓国向け輸出管理を強化して以降、韓国政府内で「韓国を信頼できないとする国と敏感な軍事情報を交換することが正しいのか」とする声が上がり、韓国国内でも市民団体などから破棄を求める声が上がっていたということです。
実情を知らないと、このような行動になるのでしょう。
日本や韓国でミサイル防衛の構築を進める米国は、韓国側にGSOMIAの重要性を訴え、維持に向けて働き掛けてきました。しかし、韓国政府は米政府にも破棄決定を伝達しました。
韓国の大統領府関係者は「米国はわれわれの決定を理解している」としているようですが、トランプ政権内の文政権への不信感はとっくに高まっており、信頼はほとんどなくなっています。
もはやどうでもよいとさえ言ってよいかもしれません。
Next: 日本の抗議は「ただのポーズ」? 韓国だけが孤立する事態に
日本の抗議は「ただのポーズ」
日本政府も、GSOMIAの破棄を決めた韓国政府に外交ルートを通じて抗議しています。しかし、これももはやポーズでしかないでしょう。
河野外相は、南官杓駐日大使を外務省に呼び、抗議しました。南大使は「本国に伝える」と回答し、破棄の正式な通告はなかったとされています。困ったものです。
河野氏は談話も発表し、韓国の決定について「地域の安全保障環境を完全に見誤った対応と言わざるを得ず、極めて遺憾だ」と表明した。
いずれにしても、もはや形骸化している日米韓の関係は、今回の韓国の無謀なまでの暴挙でより明確になりました。
米国の意向を理解しないと潰される
北朝鮮主導での南北統一プランに対して、よほどプライドを傷つけられたのでしょう。しかし、これは仕方がありません。韓国の国力と国民性などが、自らの首を絞めたといえるでしょう。
米国の意向をよく理解しないと、他の中東諸国と同じように、このような事態を招くことになります。
トランプ政権は、日韓両国の対立が北朝鮮の非核化に向けた取り組みや、中国への対抗などにおける日米韓3カ国の安全保障上の連携に悪影響を及ぼすことを懸念しているとされていますが、それも表向きのことです。
米国は早く在韓米軍を引き上げたいのです。コストもかかりますので、早く南北統一をして、韓国に対中監視をさせたいわけです。
在韓米軍が対北朝鮮に向けられたもであるというのが一般論でしょうが、実際には中国です。韓国と台湾から監視するわけです。
日本の国民も、このあたりの仕組みをそろそろ気づいてもよいころでしょう。
北朝鮮のミサイルもそうです。懸念すべきものではありません。すべてシナリオに乗って動いています。
Next: 韓国はもう世界の枠組みに入れない?米国を怒らせるとどうなるのか…
韓国はもう世界の枠組みに入れない?
韓国がその枠組みから自ら出ようとしています。そうなれば、今以上に苦しくなるのがわからないのでしょう。残念なことです。
しかし、いずれ自らの行動がいかに危険な行為だったかを思い知らされるでしょう。そして、謝罪して再び枠組みに入れてほしいと懇願することになるでしょう。
これを米国が許すのかどうか、よく見ておきたいと思います。
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- 「韓国の自滅で日米朝関係が盤石に」(8/23)
- 「国際情勢の混乱の裏側を知る」(8/9)
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『江守哲の「ニュースの哲人」〜日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』(2019年8月23日号)より一部抜粋
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