GPIFは10月1日、管理運用業務担当の水野弘道理事兼CIOの再任を発表。老後2,000万円不足の元凶が年金運用の失敗にあるだけに、続投にも疑問符が付きます。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2019年10月3日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
なぜ運用に集中しない?国内株や為替での忖度PKOはやめるべき
意外な続投?GPIFの水野CIO「再任」へ
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は10月1日、管理運用業務担当の水野弘道理事兼CIO(最高投資責任者)の再任を発表しています。
事前の憶測では、9月末をもって同CIOは退任という話になっていたように思います。
しかし、誰が引き留めたのか知りませんが、またしてもCIOを続けることがわかりました。
この水野CIOは、2015年に着任してからすでに57兆円もの収益を上げ、しかも円高局面では本邦の金融当局に代わって円高を阻止するためのPKO買いを行って円を救っているなどという謎の評価も出回っています。
ですが、果たしてそんなに賞賛されるべき人物なのか?これについてはかなりの疑問があり、かしげたクビが元に戻らないぐらいおかしい気分になります。
実際、国内のメディアで金融に詳しい向きからもGPIFの投資のやり口に関しては相当な疑問が集まっているようで、いつまでやるのかは知りませんが、また昨年までの下手くそ投資が延々と続くのかと想像すると、辟易とする思いがこみあげてきます。
昨年度はかろうじて1.52%の収益確保
GPIFが昨年10~12月期に四半期最大の14兆円強の損失を計上し、分散投資したすべての市場でマイナスになるという前代未聞の運用損を計上したことは、すでにこのメルマガでもご紹介しています。
しかし、利益が出た市場の内訳をみますと、
外国株式:3兆1,411億円
国内債券:5,959億円
外国債券:6,975億円
といずれも黒字となっています。
そして、国内株式は2兆732億円の赤字と、国内株運用が突出して損失の大きな状況になっています。
米国カルフォルニア州職員退職年金基金(通称カルパース)は資産規模が40兆円ほどですから、GPIFはそれの4倍近くある巨艦だけに運用が難しいということは確かにありえるわけですが、水野CIOが着任してからの4年の運用利率を比較してみますと、
<カルパース>
15年:-0.2%
16年:10.1%
17年:11.1%
18年:3.4%
<GPIF>
15年:-3.8%
16年:5.9%
17年:6.9%
18年:1.5%
と、お世辞にも高い運用益ではない点が非常に気になるところです。
18年は第3四半期に大損をしたので必死に取り返したのでしょうが、14兆円の損失がなければ10%以上の利益を確保していた可能性が高いだけに、どうして大きな損を出してしまうのかについて、もっと精査すべき状況であると思われます。
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国内株や為替での妙な「忖度PKO」はやめるべき
まぁ国に極めて近い組織ということで、安倍政権や財務省に何かといい顔をしたいという気持ちはわからなくはありません。
しかし、民間企業の投資資金ではなく、国民から保険の名目で集めた資金での運用ですから、大損したら髪の毛がぜんぶ抜けるくらいの緊張感をもって取り組んでいただきたいわけです。
水野CIOは、カルパースの理事会で「全資本市場に分散投資した結果、14兆円損しました」などとのんきに発表している場合ではないことを、もっと真剣に考えていただきたいところです。
とくに日本株で大損をしている点は非常に納得がいかないところがあり、結局、自ら日銀とともに買い支えに入っているから、こういう状況に陥るのではないかと勘繰りたくなる次第です。
もちろん投資の世界ですから、儲かることもあれば、損が出ることもあるでしょう。
しかし、世界の名だたるペンションファンドと比較して、GPIFだけが大暴落相場でもないのにとりたてて運用利率が低いというのは、明らかに問題があることと示唆しているといえます。
見直しは5年に1度では済まないのが足元の相場状況
このGPIFでもう1つ「いかがなものか」と思うのは、投資方針を5年に1度しか見直さないという点です。
いまどき少なくとも半年に1度、さらにやる気のあるところなら四半期ごとに投資方針の内容と実相場に乖離がないかどうか常にチェックして戦略を変えることぐらいは、当たり前の話なわけです。
しかし、どうもここは親方日の丸、かつ損失が出ることに対する罪悪感というものをまったくお持ちでないようで、このあたりの機微のレベルの低さには呆れるものがあります。
かの有名な天才投資家ウォーレン・バフェットが率いる持株会社バークシャー・ハサウェイでさえ年間のS&Pの上昇率を超えたパフォーマンスが出ない世の中ですから、5%程度の収益をコンスタントに上げることの難しさは相当なものです。
とはいえ、国の人工値付け相場に加担するようなことでその利益率を下げているのでは、お話になりません。
GPIFは足元では、電力発送電や鉄道などのインフラや国内不動産に投資をしたりして、分散投資先を増やしているようです。
そんなことをする必要が本当にあるのかどうか、またまたかしげたクビが折れるぐらいかしげたくなる状況です。
Next: 「老後2,000万円」不足の元凶は、とにもかくにもGPIFの運用失敗にある
外債投資積極化で円高阻止という話もあるが、どこまでワークするか
このGPIF、2019年度の運用計画で、為替差損のヘッジを講じた外国債券の資産構成割合を運用上限が近づいている外債から、国内債券に変更すると発表しており、為替変動に伴う損失をヘッジしないオープン外債の額が3兆円程度になるのではないかという見方も出ています。
確かにドル需要は出るのでしょうが、その一方で、どこかで円高が走って慌ててヘッジで円買いをすれば為替には逆の影響も出てくることになるため、果たして為替にどれだけ貢献するかが注目されます。
逆にオープンのままなにも手立てをしなければまた収益激減ですから、運用結果はろくなことにならない可能性が出てくるわけで、このあたりもかなり心配です。
真剣に年金を運用して欲しい
金融庁がなぜか年金が2,000万円足りなくなるというレポートを発表し、すぐさま撤回するという茶番劇のような話が出回っています。
そもそもこの2,000万円の不足の元凶は、とにもかくにもGPIFの運用に起因しているわけですから、もっと真剣にやって欲しいというのが個人的な強い希望です。
真面目にやっていないとは言いませんが、ベストプラクティスからは程遠いのが現状です。
この年金の危機的状況にあるなかで、ほかに適格者のCIOはいないのでしょうか?
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2019年10月3日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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