消費増税が実施されましたが、その直前の9月末には不思議な光景を目にすることになりました。軽減税率対象の食料品を含む、意味のない買いだめが続出です。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2019年10月5日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
情報弱者は損をする。日用品以外の駆け込み需要は起きず経済危機
増税前に日用品を買い漁る人々
消費増税が10月1日に開始されてから1週間ほどの時間が経過しているわけですが、その直前の9月最後の週末や30日月曜日のリアルな流通店頭の現場では、かなり不思議な光景を目にすることになりました。
ひとつは、ホームセンターやカテゴリーキラーに車で乗り付けて、大量にトイレットペーパーを買い漁る主婦が1人や2人ではなく、大量出現したこと。
古い話で恐縮ですが、73年末の石油ショックにともなうトイレットペーパー不足で主婦が狂乱の買い占め騒動を起こした不気味な場面を彷彿とさせる光景を目の当たりにすることになりました。
また100均の店に顔を出すと、こちらも異常とも思える顧客が山のように商品をかごに入れて長蛇の列で会計を待つという、かなり不思議な光景を目にすることになりました。
どうもこうした状況は特定の店ではなく、それなりに広範に起きてしまった事態のようです。
たしかにチリも積もればなんとやらですから、2%といっても馬鹿にはならず、必需品はこの際前倒しで買い集めておくというのは、わからない話ではありません。
しかし、400円のトイレットペーパー1年分12パックを前倒しで購入してみたところで、たかだか増税分は96円程度ですし、100均の商品100個を購入しても、増税分を得するのは200円ですから、買いだめするにしても「そこじゃないのでは?」と疑問がわくような消費者行動が非常に目についた次第です。
なぜ消費税据え置きの食品まで買い漁る?
もう1つ言えば、増税の対象になるわけではない食品を買い漁る人も多かったようで、どうしてこうしたことが起きてしまったのか、かなりクビをかしげさせられる状況でした。
こうした事態が示現するのは、もはや多くの消費者が、消費ではいわゆる最寄り品(日用品や食料品など、近くの店で頻繁に購入するような商品)だけに特化して購買を常態化させており、値段の張る買回り品(耐久消費財や趣味品)にほとんど手を出していないからこそ、こういう動きが顕在化するのかも知れません。
しかし、それが一部の人だけでなく、相当数の顧客が同種の購買行動を見せたということは非常に興味深いものがありました。
高額品の駆け込み需要がほとんどなかったということも合わせて考えてみると、顧客の増税に関するインサイト(物事を見抜く力)がかなり異なっていることがわかります。
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ポイント還元から完全に乖離した個人商店と顧客が出現
今回の増税では、キャッシュレス払いによるポイント還元も導入されています。
日頃からスマホとほにゃららペイを使いこなし、さらにクレカやデビットカードも多数保有してベストプラクティスが何なのかを常に掌握している向きは、確かにポイント還元をそれなりに謳歌している印象があります。
しかしその一方で、スマホも使わない、デビットカードも利用しないという昔ながらの層は、完全にデバイスとツールの視点でポイント還元から乖離したところにたたずんでいるようです。
これがどのぐらいの層になるのか、今後は非常に注目されることになりそうです。
こうした状況は消費者側だけではなく、サプライサイドの個人商店事業主にもみられるようで、このポイント制度のことをまったくよくわかっていない小さなお店の店主というのも目立ち始めています。
地方都市の個人商店の店主と話をする機会がありましたが、まったくこの仕組をわかっておらず、そもそもカードで決済するようなビジネスではないところは完全に取り残されているようで、情弱がひどく目立つ状況です。
非常に興味深かったのは、5%のキャッシュバックの対象になる業者がAmazonの中で商品供給していると、Amazonでも5%が適用になる商品が出現したことで、こういうこともあるのかと驚かされました。
安倍首相「消費者不安を取り除けた」
安倍首相は今回の増税で駆け込み需要が起きていないことを記者から聞かれ、「消費者不安を取り除けた」などと、正月でもないのにおめでたい、意味不明な発言をされています。
足元の消費者状況はそれよりはるかに深刻で、不安どころか正確な増税の情報が高齢者を中心にうまく認識されていないのではないかと思われる次第です。
国は今回の増税に関して、74億円も導入して「ゆるきゃら」を含む広報を実施するようですが、広告業界に近いところにいらした方なら察しがつくように、一般の消費財で1つのキャンペーンに74億円も投入する企業というのは、もはや本邦勢にはほとんど存在しなくなっています。
そのくらい巨額な資金を投入しているわけですから、よほどの効果が上がることが成果として求められるわけです。
ただテレビスポットなどが流れるだけでは、現状の消費の現場の乖離を埋めることができないのではないかと危惧します。
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消費者最大の増税防御策は「お金を使わない」ことか
パレートの法則ではないですが、こうした制度変更があると、上の2割の層は正確かつ着実に情報を得て適切な購買行動を実現することができるものと思われますが、残りの8割は完全に取り残されるのが世の常となっています。
それが結果として消費の縮減になって現れると、年内にも国内景気はさらに悪化して取り返しのつかないところに陥るのではないでしょうか。
そんなに危機感を煽ってお前は一体なにがしたいのかとお叱りを受けるかも知れませんが、消費の現場ではかなり妙な状況を呈していることだけは無視できません。
今回の消費増税2%は、確かにキャッシュバックを構造的に完全理解するのは難しいものがありますが、8%にとどまる商品すらもしっかり理解できていない消費者が実に多いことに驚かされます。
高齢化が進んでいるのだから仕方ないと言ってしまえば、それまでです。
しかし、社会の仕組みの変化にまともについて行かれない国民が多くなっていることに、改めて唖然とさせられるものがあります。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2019年10月5日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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