PayPay(ペイペイ)は、PayPayアプリの中に生活に関わるありとあらゆるサービスを入れて、スーパーアプリ化すると発表しました。スーパーアプリとはいったい何なのか、PayPayが目指すものは何なのかを探ってみたいと思います。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)
※タイトル、見出し、太字はMONEY VOICE編集部による(有料メルマガ『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2019年11月1日号「スーパーアプリとは何だ!!」より)
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消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
加盟店も大助かり?キャッシュレス戦争の次の舞台は「アプリ」へ
キャッシュレス時代のカードの持ち方
キャッシュレス決済でいつも悩むのは、クレジットカードは何枚持てばいいのかと言うことです。
7〜8枚も持ってシーンごとに使い分ければもちろんいいのですが、それでは年会費がかかりすぎるし、財布もパンパンになってしまいます。
というので、私はメインとサブの2枚持ちが最高といってきました。メインカードを中心に使って、サブカードで補填するという持ち方がやはり一番いいのです。
しかし、QRコードのスマホ決済が出てきてからは状況が大きく変わりました。
そこで、私は少し前から、「3点セット」という概念を提唱しています。これはクレジットカード、電子マネー、QRコード(アプリ)の3つで、それらを単独、または組み合わせて使おうと言うものです。
これがうまく働くのがスマホ中心で使う時です。
QRコード決済のアプリをスマホに入れ、クレジットカードをQRコードに紐付けて決済できる体制を作りながら、暮らしに役立つアプリをいくつも入れて「お得」を取るという戦略です。
こうしておけば、「効率よく買い物したり、きちんと公共料金を払ったりできるゾ」と、ちょっといい気になっていたのですが、すでに同様のサービスをするQRコード業者が現れていたので驚きました。
それが、PayPayのスーパーアプリ構想でした。
地方を軸に加盟店を増やし続けるPayPay
最初、PayPayは「100億円あげちゃうキャンペーン」で名を馳せましたが、現在はキャンペーンも「上限」というカセをはめたことで落ち着きつつあります。
むしろ地方での中小店の開拓に注力する方向に動いています。
その結果、1年足らずで140万店の加盟店を獲得、ユーザーも1,000万人を超えるほど集まり、QRコード陣営のトップランナーになりつつあります。
そこで、PayPayとしても、次のステージに移る必要があると考え、新しい展開を打ち出しました。
その進化のエンジンとなるのが、アプリです。PayPayは自らの決済アプリの中に暮らしに密着したアプリを集めて「予約から決済まで」を一気に完結させようと考えており、これをスーパーアプリ構想と呼んでいるのです。
その手本となっているのが、PayPay立ち上げのモデルとなったインド最大の電子決済サービス事業者「Paytm(ペイティーエム)」が行っているアプリ戦略です。
Next: インドの成功事例に続け? ソフトバンクグループが総力を上げて支援
決済のできるPaytmアプリの中に数多くのアプリが入っている
それらは暮らしに関係した生活アプリで、電気料金などの公共料金の支払いから、ショッピングの支払い、さらには、映画のチケット、飛行機やバス、レストラン、ホテル、アミューズメント施設の予約、さらにはタクシーの配車アプリなど、支払いが生じるありとあらゆる他社のアプリがあり、それと紐付くカタチでPaytmアプリで完結できるようにしています。
そして、Paytmの業績も、生活回りの様々なサービスをひとつに集約することで急速に成長しているといいます。
今後はPayPayでも、このやり方をそのまま導入しようとしています。
すでに、請求書を読み取るだけで支払いが終わる「請求書払い」のような暮らしに密着したアプリも入れていますが、これからは、一流ホテルの予約やレストラン、飛行機、鉄道、アミューズメント施設の予約ができるアプリやタクシーの配車アプリなども入ってきそうです。
配車アプリで、目的地をあらかじめ設定し、ピックアップのポイントも入れておくと指定のタクシーが来て、それに乗り、着いたら支払いまで完了しているというサービスです。
これが実現して、日常的に利用されるようになれば、日本でのタクシーの利用方法も様変わりすると思われます。
ヤフー、ソフトバンクグループが総力をあげてサポート
この他にも、ヤフー、ソフトバンクのグループ企業との連携も期待されています。
ヤフーショッピングやヤフオクなどのヤフーのサービスが直接PayPayアプリで使えるようになり、商品選びだけでなく、決済もより簡単に完了するようになります。
また、PayPay残高の範囲で株式投資ができるようにもなるし、ヤフー子会社のジャパンネット銀行で個人ローン貸付も可能になります。
要は、生活に関わるありとあらゆるサービスをPayPayアプリの中に入れて、スーパーアプリ化していく予定なのです。
Next: PayPayも加盟店も助かる? キャッシュレス戦争の次の舞台は「アプリ」へ
加盟店負担を減らすためにスーパーアプリが貢献
このアプリ事業は経営的にも貢献すると期待されています。
これまでPayPayは、決済手数料を加盟店からもらわずにやってきました。その際の収益をどこに求めるか、というのがいつも問題になっていたのです。
このアプリビジネスが本格化すれば、顧客を送客した際の手数料や購買データの提供などでヤフーと連携して、ヤフー側の広告の精度を高めることができれば、そこで料金が発生します。
これらの収益が確実に生まれるのであれば、今後も加盟店手数料がなくてもPayPay事業は継続できるので、アプリのビジネスに期待が集まるのです。
PayPayだけでマネタイズできるのであれば、何の心配もありません。
キャッシュレス戦争の次の舞台は「アプリ」
スーパーアプリ事業は、インドでは決済事業のPaytm、東南アジアでは配車サービスのGO-JEK(ゴジェック)やGrab(グラブ)などが採用し、それぞれが急成長を遂げています。
日本ではまず、PayPayがこの構想を取り入れ、他のスマホ事業者も同様のことを考えていくのではないでしょうか。
そう考えていくと、キャッシュレス時代は、ポイント還元からアプリへと軸が大きくぶれる時期になりそうです。
そして、暮らしに根ざしたアプリの囲い込みが業者間で熾烈になると思われます。
スーパーアプリの進化に期待
最初にスーパーアプリと聞いたときには、何が出てくるのかとワクワクしました。実際、私が思っていたのは、自分でいろいろなアプリを集めてきて、それを決済アプリに紐付けるといったものを考えていたのです。
ところが、今のところはソフトバンク系のアプリをスマホの中で揃えると言うものになりそうです。企業とするとやはりその方が効率が良いし、お金儲けになるということでしょうか。
ただ私が考えていた方が独創性を発揮できて、もっと面白い使い方ができるように思います。そうした使い方ができるようになれば、人類の進化も本物と言えるでしょうが。
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- スーパーアプリとは何だ!(11/1)
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『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2019年11月1日号)より抜粋
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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。