11月6日、ぱど<4833>が「畑野幸治氏による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」を発表した。ライザップがぱどを手放した背景を解説します。(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)
ぱどが自社株について公開買い付けの意見表明があったことを発表
ぱどは、2018年3月期に黒字達成したものの再び赤字に
11月6日、ぱど<4833>が「畑野幸治氏による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」を発表した。
※参考:畑野幸治氏による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ(株式会社 ぱど)
<1.ぱど>
1987年8月:荏原製作所、凸版印刷等の出資により設立
1992年6月:MBO(マネジメントバイアウト)により荏原製作所より独立
2001年3月:JASDAQグロース市場に上場
・設立以来、情報サービス業、主として地域密着型無料宅配情報誌「ぱど」の編集・発行事業を営んできた
・「ぱど」事業の目的は、「情報を通じて 人と人 人と街をつなぎ 人も街も元気にする」ことであり、このビジョンのもと、当社は、事業展開の中心となる地域社会の皆様、お取引のあるお客様、株主の皆様及び社員という全てのステークホルダーの満足を追求することを経営理念としている
・しかしながら、当社の属するフリーペーパー・フリーマガジン市場では、紙媒体だけでなくインターネット広告との価格競争が恒常化するなど、厳しい経営環境が続いている
2017年2月:RIZAPとの間で資本業務提携契約(同年3月にはRIZAPに対する第三者割当増資を実施)
2017年3月期第3四半期:自己資本比率が2.3%まで低下
⇒ RIZAPの子会社となることが財務の安定、企業の存続及び今後の成長につながり、ひいては少数株主の方々の利益にもなると考え、実施
2017年3月期末:自己資本比率は29.0%にまで回復
2018年3月期:営業黒字を達成
2019年3月期:2015年3月期より5期連続で営業キャッシュフローがマイナス。再び重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況
⇒ 第三者割当及び業務提携等は当社の財務の安定と企業の存続に寄与するとともに、業績面では特に2018年3月期に一定の効果は上げたものの、継続的に当社の業績を大きく改善できたとはいえない
Next: ライザップがディスカウントTOBに応じた理由とは…
<2.RIZAP>
2019年3月期:連結経営成績において大きく赤字を計上。過去1年以内に同社グループ入りした企業・事業を中心に経営再建が当初の見込みより遅れていること、また、在庫や不採算事業の減損等、構造改革関連費用を含む非経常的損失等を計上したことが主な理由。
⇒ 当社は、RIZAPが今後の中心に据える美容・ヘルスケア分野とビジネスモデルが異なるためシナジー効果が必ずしも高くないこと、協業の効果も限定的であったことから、同社主導による短期的な収益改善が難しいと判断し、事業の整理・売却等を検討
<3.畑野幸治氏(「公開買付者」)>
・大学在学中:インターネット広告関連の事業を行う(株)Micro Solutionsを創業し事業売却
・公開買付者は、連続起業家として複数の起業を行い、新しい事業を生み出し事業を拡大させてきた経験がある
2019年10月中旬:RIZAPにサンケイリビングも加えた応募予定株主に対して、当社株式の取得に関する基本方針を説明したところ、本応募予定株主からも当該基本方針に関し前向きな返答があったことから、TOB価格を含む諸条件について金融機関を通じて協議・交渉を複数回にわたって行った。
10月下旬:応募予定株主に対し、2020年3月期第2四半期決算の業績を踏まえ当該市場価格から一定のディスカウントを行った価格とする旨の提案を行った。
11月6日:応募契約を締結し、TOBを実施することを決定
<4.株価推移(TOB価格:170円)>
11/1 206円、11/5 213円
11/6 211円、11/7 204円
RIZAPグループは6日、フリーペーパーなどを発行する子会社のぱどを売却すると発表した。M&A(合併・買収)アドバイザリー企業などを経営する畑野幸治氏がTOB(株式公開買い付け)で、RIZAPと同社の子会社が持つぱどの株式(発行済み株式の72.5%、約24億円)を取得する。ぱどは2019年3月期に最終赤字となり、業績が低迷している。TOBの期間は11月7日から12月4日。成立すればRIZAPに10億円の株式売却益が発生し、20年3月期の連結決算に計上する。
<感想>
本件は、RIZAPの事業の選択と集中の結果、肥大化したM&Aの出口戦略として、ディスカウントTOBに応じることにしたもの。
過去、何件もディスカウントTOBで株式を取得してきたRIZAPが逆に応募する立場になるのは何とも皮肉な結果であるが、今後も、その種の案件が継続するものと思われる。
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『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2019年11月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による