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不動産は株価から2年遅れて下落する…日本の土地がピークアウトするのは2022年頃=吉田繁治

人口減少に起因して、日本の不動産価格は2022年以降明確に下落すると考えられます。その背景について、いくつかの法則など活用して詳しく解説していきます。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2019年12月11日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

2020年代以降、わが国の不動産価格はどのように変化するか

ランチェスターの法則を活用して、地価と都市力の関係を探る

【都市力と人口集積、および地価】

近代都市の都市力は、「人口集積によるライリーの法則」で計算されていました。「都市力(=吸引力)は、近代化を表す人口数のおよそ2乗に比例する」というものです。

【ランチェスターの法則】

もともとは「戦力は、戦闘機の数の2乗に正比例する」というランチェスターの法則からきています。同じ性能の戦闘機がA軍20機、B軍15機で戦闘したとき、A軍の20機の比較戦力は400、B軍の15機の戦力は225になる。√(400-225)≒13である。20機側は13機(65%)が生き残って、15機側は全滅してきたという。

損害数はA軍7機:B軍15機です。戦国時代の武士の数でも、同じ法則が成り立っていました。武器の豊富な米国に、「精神力」で戦った日本軍が全滅した理由でした。

日本軍の幹部は、国民に「日本には不滅だった大和魂や神風がある」といい始めて、(戦争学では知っていたはずの)経験的・定量的なランチェスターの法則を無視したのです。最近の政府官僚の資料発掘では、天皇の言葉がなければ、政府は「戦闘力では全滅することが決まっている、本土決戦」の準備をしていたとするものが見つかっています。

1990年までの土地神話も、人口数と地価の定量的な関係は無視して「日本の土地は、どこまでも上がる」としていた点で、大和魂に似ている社会的な共同幻想でした。1990年代までは、土地を買わない経営者は馬鹿だと言われもいたのです。

金沢の地価の上昇を、都市力で計算

金沢には、46万人の人口に25万人/日の新幹線乗客が加わりました。往復の利用ですから、名寄せすれば1日に1/2の12.5万人です。従来の鉄道では、1/3の4.1万人でしたから、増加したのは8.4万人分です。平均1日滞在とすれば、国内インバウンドのように8.4万人の消費人口が加わっています。

以上は、居住者46万人の人口が54.4万人に増えたことと同じ、所得・消費効果です。「都市力のライリーの法則」では、(46万人の2乗=2,166):(54.4の2乗=2,959)…2959÷2166=都市力1.36倍

「ライリーの法則」からは、金沢市の地価は新幹線開通以前より36%以上上がることが、理論的な妥当値です。3年間、毎年10%以上は上がることが当然だったのです。

今後は、上がった価格に対する上昇なので、地価の上昇率は鈍っていくでしょう。新幹線の乗降客は、現在がピークと思われるからです。大きく増えること減ることもないという意味。

【不動産価格には粘着性がある】

地価と不動産は、統計の1年遅れと、「価格の粘着性(売買の変化が価格に反映するのに年数がかかる性格」と、超低金利があるので、ピークアウトは2022年頃からでしょう。

不動産価格に粘着性が高い理由は、売買取引が少なく、長期売買であることからです。株に比べた流通性(売買の回転率:上場株は1回転で260日)が低いからです。不動産の年間売買は14.3兆円あたりです(2016年:都市未来総合研究所)。回転率の高い地域でも、1年に1/50でしょう。もともと「不動」の資産です。

わが国の資産バブル崩壊のとき、全国の地価がピークアウトしたのは、株価が下がった1990年から2年遅れの1992年でした。1994年からは顕著に下がり、4年後の1998年が、多くの銀行が債務超過(時価資産<負債…自己資本のマイナス)になった、日本の金融危機でした。日銀はこの時期から、ゼロ金利政策にはいっていったのです。

銀行の自己資本が、時価のB/Sでマイナスになると、国民の信用は保っていても、銀行間の信用はなくなって、お互いの貸し借りができなくなり破産します。金融危機は、預金の引き出しより、レポ金融の金利高騰と、貸し借りの不能から起こります。

(注)金沢地区のREIT(不動産投信)があれば、その価格グラフでは、株に少し遅れますが、ほぼ6か月ずらせば、リアルタイムです。

Next: 人口が減少しても日本は滅びない…同じ島国の英国のように変化する



生産年齢人口の減少と、都市力および地価

人口が減少するとき、ライリーの法則で示す都市力はどうなるか。減少率の2乗より、もっと大きく低下するでしょう。

既存の住宅が余って売り超になる環境では、住宅価格は大きく下がるからです。人口増で、建築供給力も増加して価格粘着性があると同時に、需要増以下に価格上昇は抑えられます。

生産年齢人口増のときは増加率の2乗に比例し、住宅以外の店舗も増え、オフィスも増えて、金沢のように不動産が上がります(ライリーの法則)。

生産年齢人口減のときは人口の減少率以上に、既存住宅の売り物件が増えて店舗、オフィス、公共投資も減って行き、既存住宅の価格下落は激しくなります。

数式で言えば、「(生産年齢人口の減少率の3倍)」くらいでしょうか。

日本全体の生産年齢人口は、2020年で7,341万人です。2060年は4,418万人です。国内消費は、生産年齢人口の総所得から、強制的に引かれる税と社会保険料(国民負担率42.8%:2019年)を引いた可処分所得から、お金を貯める貯蓄を引いたものに、移民とインバウンドの消費を加えたものです。消費税も当然、租税負担にはいります。
※参考:国民負担率(対国民所得比)の推移

つまり国内消費の未来は、移民またはインバウンド消費の急増がない限り、確定しています。消費税の増税の負の効果は、所得に対しては大きい。2014年に3%、2019年に2%上がりましたが、これで、実質所得は5%もマイナスしたのです(政府は、これを軽いものとして伝えています)。80%の世帯(4,000万世帯)の所得が減るなかで、5%のマイナスです。

ただし大きく言えば、生産年齢人口が4,418万に減った社会でも、広大な国カナダの生産年齢人口のまだ2倍です。日本が潰れると、案じる必要はない。人々の住宅が広くなります。レジャーを含み、生活は豊かになるでしょう。

もともと狭い国土の日本の人口は多すぎたので、狭い住居、狭い道路、混雑で、商店数と小さなオフィスも多く、「アジア的」でした。これが、シンガポール的ではなく、西欧的(特に、島国の英国的)になると考えておいて間違いはない。日本の40年後は、英国風でしょう。

人が減ると、人権への配慮が高まります。社会の集合的意識の変化が起こるからです。子供の虐待への激しい社会的憎悪、ブラック企業への非難は、子供が減ったことが根にあるものです。

1クラスに55人もいた時代は、いじめや教師の暴力があっても、本人の心理的な落ち込みは、今ほど深刻ではなかった。日本はお互いが1人1人を大切にする社会に向かっています。

Next: 日本の生産人口は、年間1.3%減少していく



【わが国の生産年齢人口の減少は、1年平均で1.3%】

この条件の中でわが国では、年間平均で1年に1.3%、生産年齢人口が減少します(2020年~2060年)。

住宅の購入では、金利と所得という条件があまり変わらない中では、
・人口が増えると増えて価格が上がり、
・減ると価格は下がります。
人口の絶対数は、地価の水準を決めますが、その増減は、地価の上昇・下降を決めるものでしょう。

以上が、生産年齢人口の増加とともに価格が上がり(1992年まで)、1995年からの減少とともに下がった住宅価格の意味です。

【総人口と生産年齢人口】

全年齢の人口では、2020年が1億2,410万人、40年後の2060年には8,674万人です。年率平均0.9%の減少。65歳以上が3,464万人と構成比が40%に増えるので、生産年齢の人口(15歳から64歳)だけでは1.3%減/年です(全国平均)。総人口×0.6≒生産年齢人口、です。

2060年は、10人のうち4人が65歳以上、15歳未満は0.9人、15歳から64歳が5.1人という、世界で初めての社会です。現在の出生数90万人/年(1年に200万人の出生だった団塊ジュニア(40歳が中心)の子供)では、これが変わらない。

全都市平均での1.3%/年の減少は、各都市の生産年齢人口減では「0.7%~平均1.3%~1.9%/年」に分布します。平均以下が50%、平均以上が50%です。
※参考:人口減少社会の到来-総務省

これからの地価の3カテゴリー

【第一類型:大都市(都市人口は80万人以上)】

生産年齢人口が、年平均で0.7%減少する、主に大都市の不動産価格:地価下落基準2.1%/年

年率平均2.1%の、地価下落が平均(分布は-4%~0%)

【第二類型:中都市(都市人口は10万人以上~80万人】

生産年齢人口が、年平均で1.3%減少する、中都市の不動産価格:地価下落基準3.9%/年

年率平均3.9%の、地価下落が平均(分布は-5%~-3%)

【第三類型:小都市:都市人口10万人未満】

生産年齢人口が、年平均で1.9%減少する、小都市の不動産価格(中市部):地価下落指基準5.7%/年

年率平均5.7%の、地価下落が平均(分布は-7%~-4%)

(注)郡部の郊外や田舎では、その地域にある、中核都市の地価下落の2倍くらいでしょう。

2019年時点の全国の地価は、「低金利+インバウンド増加」によるミニバブルでしょう。これは2020年までは、大都市部で続きます。

21年から怪しくなり、22年からは、はっきりした下落(上記3類型)に入るでしょう。2020年を起点に、わが国の地価は地域の生産年齢人口の増減による都市力の影響を直接に受けるでしょう。

Next: 正規雇用の平均収入の変化が、地価に与える影響とは?



これからの1人当たり所得という要素

わが国の正規雇用の平均年収は420万円(男性521万円、女性276万円)です。2012年からは、年率平均でほぼ1%上がっています。

所得の増加率が約1%で今後も同じなら、地価は上記のように各都市の生産年齢人口の減少に正比例して下がるでしょう。

人口80万人以上の大都市部平均で-2.1%、10万~80万人未満の中都市部平均で-3.9%、10万未満の小都市平均で-5.7%と大きくなります。

【所得の長期増加期待が、3%や4%に上がると…】

2020年以降の1人当たり所得が長期で3%/年で上がるという期待になると、2%部分は地価の下落を2%少なくする要素になります。

生産年齢人口の傾向では大都市区分で、地価は年-2.1%の傾向であっても、所得増加の効果から、ほぼ0%で推移するということです。

4%の期待上昇に変わることができれば+3%で、1%の地価上昇期待です。(注)金融危機の時は、2年間くらい下がりますがその後は、リーンマン危機のあとのようにリバウンドします。

これは単年度の賃金上昇ではなく、長期的な期待での上昇率です。「これからさき、将来賃金は平均3%で上がる」という集合知での期待です。平均の3%は個人別には、5%~1%の分布になります。

およそ2025年から、5GとAIの産業過程への効果的な利用が進めば、社員数は減る中で生産性は上がり、1人あたり平均賃金で3%から4%の上昇になる可能性はあります。(注)4%以上はない。

1人あたり賃金が4%上がると、日本の地価では大都市部+1%、中都市部-0.5%、小都市部-2.5%くらいになっていくでしょう。ここが、わが国経済が目指す、最大の可能性の要所です。地価は、経済に基礎になるものです。

東京と大阪の地価の、生産年齢人口仮説での検証

以上の、地価の決定要因としての「生産年齢人口仮説」が正しいかどうか、現在の東京都大阪府で調べます(基準地価:2019年)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東京都の平均地価 343万円/坪  生産年齢人口894万人
大阪府の平均地価 118万円/坪  生産年齢人口522万人
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    地価比  2.9倍   生産年齢人口比 1.7倍

1.7の2乗は2.89です。生産年齢人口の2乗では、2.89倍になります。東京と大阪の地価の比は、上記のように2.9倍です。見事に比例しています。

この意味は、東京都の生産年齢人口が、大阪府の522万人(58%)に減ったときは、大阪府の現在の地価(平均118万円と1/3)に向かって、下がるということでもあります。

(注)ただし所得が1%より多く伸びた分と、金利上昇の修正が入ります。所得が3%(現状+2%)伸びても、ローン金利が3%(現状+2%)になると所得効果は金利上昇効果で相殺されます。

東京都の広さは2,188平方キロ、大阪府は1,899平方キロと、他の府県より狭く、人口の密度は類似して高い。これが、東京と大阪の地価(本稿では基準地価)が、生産年齢人口の2乗に完全に比例した理由です。

県単位では、東京・大阪より人口密度が低いところが多く、これらの県では県の平均地価と生産年齢人口を横比較した関係には、東京と大阪のような近い面積のような比例関係にはなりません。

(注)面積を全国一定にして、その地区の生産年齢人口の2乗で見れば、東京と大阪の地価に比例します。

ただし、その地域の地価の将来は、生産年齢の減少率の約3倍になることは変わりません。

Next: タワーマンションが増加しているのは、相続税評価が低いから



東京の金融的な収益物件の価格上昇は大きい

住宅需要には、居住ではなく、金融収益を求める賃貸物件の需要も含まれています。2008年の賃貸物件は、全国で2,200万戸です。古いアパートには、空き家が多くなっていて、すでに410万戸(18.6%)が空き家と言われていました。1年間の貸家の新規供給は、約30万戸です。

総新築100万戸付近のうち、30%が貸家用と見ていいでしょう。厳密な区分はできません。買ったものを貸す個人需要があるからです。

住宅のストックでは、72.0%が持ち家、27.3%が貸家です。貸家の平均面積は、42.5平米(2010年代は51平米)、持ち家は122.6平米(同124平米)と約3倍の広さです。貸家には単身の住まいが多いからです。

子息への相続税への対策として、貸家を作る(または買う)人も多い。その貸家に親族以外の人が住んでいる場合の相続税の評価額は「家屋の固定資産税の評価額×30%」と、とても低いからです(大きな節税になります)。

(注)空室が一時的(1か月等)なときは、賃貸に含めてよい。

理由は、借りた人の居住権があるからとされていますが、政府のホンネは「貸家建設の促進」です。日本では1980年代まで、「住宅は足りず、狭い」とされてきたからです。これは事実でしたが、生産年齢人口が減った1995年のあと25年で「住宅数は余って、空き家が800万軒台(16%)」になっていますが、税制を作る国政の意識は追いついていません

なお土地部分の固定資産税評価額は、基準地価とほぼおなじ公示地価の約70%です。建物部分は、建築費の約50~70%です(3年ごとに自治体が改定)。(注)細かい規定があるので詳細は税理士に相談。

(注)2018年度の、新築住宅着工戸数は95万戸(前年比+0.7%)です。

タワーマンションが増えた原因は、相続税評価が低い税制にある

近年、東京や大阪では、高層のタワーマンションが多い。少し変に思うのが「高層の階」は、同じ広さでも1.5倍や2倍も高いことでしょう。単に、「見晴らしがいい」ことだけではない。実は、相続税の固定資産税の評価にカラクリがあります。

「タワーマンションの建物部分の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま使います。タワーマンションの販売価格は下層階と上層階で大きな差がありますが、固定資産税評価額の取扱いは下層階と上層階であまり違いはありません」…不思議な規定ですね。高層部分を高く売る建築業と、高く買う富裕者に得をさせる税制です。

1.5億円で買った高層階と、7,000万円の下の階は、広さが同じなら固定資産税の評価額はほぼ同じになる…それを貸していれば、相続税評価はその30%です。

(注)正確には1階上がるごとに、評価額0.25%上がりますが、40階上でも10%高いだけなので、ほぼ同じと見ていい。1階の評価が3000万円なら41階は3300万円程度です。

つまり、高層階のタワーマンションの新築や中古を多く買って、貸家にしておくと、数十億円の資産なら、相続税がごく少なくて済みます。

(注)明らかに節税が目的と認定されると、税務署から否認されるケースもあるという。

Next: 異次元緩和とゼロ金利は、東京の収益マンション価格に影響を与えた



東京圏の収益物件の価格は、約2倍に上がっている

以上のような税務的な事情から、今も金融収益が目的の「収益物件」の価格は、居住用住宅より上がり続けています。2019年も下落はしていません(統計データは約1年遅れです:データ:健美屋)。

地区  12年の価格  19年4-6月  指数
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
23区    1200     2242   186
一都三県  1000     1956   196
横浜市    750     1204   160
埼玉     600     1140   190
千葉     600     1017   170
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※参考:「 収益物件 市場動向 年間レポート 2018 」< 2018年1月~12月期 >-健美家

東京圏(1都3県)では2012年に対し、19年の収益物件(賃貸用)は指数で196、約2倍に上がっています。最近の7年、毎年10%上がって、2019年には2倍です。東京圏だけが、高い上昇を続けています。

2013年4月からの異次元緩和とゼロ金利のインフレ効果は、東京圏の収益マンションに発現したのです。

3年で地価が30%以上上がった金沢も、あと4年続くと東京圏の収益マンションと同じ上昇率の2倍になりますが…どうでしょうか。北陸新幹線の大阪との開通(経済効果試算4.3兆円)は2030年がメドですが、公式には未定です。

大阪から金沢に、特急サンバーバードで行っても2.5時間で、東京に行く時間と同じです。それに、ローカル線のように揺れます。これが、1時間20分に短縮。名古屋より少し(20分)遠い感じです。

東京23区の居住用を含むマンションの1平米単価は、2007年が85.6万円(坪282万円)、2018年は113.8万円(375万円)が平均であり、32%のアップです。1年では3%上昇です。これは、住宅ローンの低金利効果だけと見ることができるでしょう。

建築単価アップの要因としては、2011年の東日本大震災後の建築特需から、工事単価が20万円/平米(2011年)から26万円/平米(2016年)と30%上がった要因が大きかった。

住宅需要の増加で上がったのではなく、作業員不足からの建築単価のアップで、販売価格が上がりました。一方では、住宅ローンの金利2.0%や1.5%から0.5%に下がったため、上がった30%部分の負担感の増加が少なく、住まい用物件も買われてきたのです。

東京の新築マンション(12.1万戸)の平均面積は、58.8平米と狭い。2LDKがやっとという広さです。ロンドンや香港のように、狭い。平均価格は6,068万円。世帯年収の7倍が、ローンを組んで生活ができる限度でしょうが、世帯年収で、6,068万円÷7=867万円が下限になります。

概略では、30代の夫婦でほぼ1,000万円の年収がないと、2,000万円くらいの頭金を父母から貰わない限り、子供ができ、生活の余裕をもった6,068万円のマンションは購入できない。

平均は6,000万円でも、渋谷区では同じ60平米くらいで1億円を超えます。文京区、目黒区、世田谷区で6,500万円、墨田区、板橋区、足立区、大田区では4,000万円~5,000万円です。

東京都の世帯の所得分布は、700万円以下が76.6%、700万円から1,000万円未満が12.9%、1,000万円から1,500万円未満が7.1%、1,500万円以上が3.0%です。

住民のうち、世帯所得で上位10%の階層が買えるのが東京のマンション価格でしょう。
※参考:予測される東京の将来の姿(案)-東京都総務局

Next: この先、東京の不動産価格はどうなっていくのか



これからの東京の不動産価格

東京は1945年(戦後)の349万人から、1962年には1,000万人を突破し、2020年には1,355万人のピーク人口へと一貫して増えています(東京都庁の報告書)。2015年から全国が人口減になっても、東京の人口は減らなかったのです。

しかし、2020年から様相を変えます。846万人の生産年齢人口が、2060年には568万人と67%に減るからです(33%減)。これから40年間、毎年平均1%、生産年齢人口が減っていく時期に突入し、逆向きなることはない(1-0.67のマイナス40乗≒1-0.99=0.01)。移民の大量流入がない限り、これです。

政治的な配慮の少ない公務員が多い東京都総務局の推計は、他の人口推計より低い。2012年からの内閣府は、経済予想やGDPの集計では0.*ポイントの政治的な配慮が多い(課長が行う鉛筆舐め)。

2013年の住宅ストック数は736万戸です。世帯数は650万世帯です。空き家は81.7万戸(総住宅の11.1%)です

これからは、があります。東京の住民も高齢化したからです。東京には、他の都市より70歳以上になった団塊の世代が多い。

早ければ、オリンピックが終わる20年夏から、はっきりと下がるかもしれない(人々の気分の低下)。選手村も空くからです(1万人が一時的に宿泊)。上がったホテル料金も急落します。増えたレストランの売上も減ります。

首都圏の新築マンション契約率は、64%~70%台です(2016年~2019年)。19年10月は、消費税の2%上げのあとのため、契約率が42.6%に急落しています。近畿圏(大阪府4,009万円)の落ち込みはわずかですが、東京圏は大きい。6,000万円はすでに、価格コンシャスであるべき水準に上がっているからです。

2022年からの東京都の不動産は、
(生産年齢人口-1%×3倍)+{所得効果(2%-1%)}+{住宅ローン金利効果(0.5%-0.5%)}=-3%+1%=-2%、の下落過程にはいるでしょう。

毎年2%ずつ下がって行くのが中央値であるということです。

価格が上がった金沢の不動産を皮切りに、以上のように考えました。自分の地域の、長期不動産価格の予想に以下の公式を使ってください。

(地域の生産年齢人口減少率*%×3倍)+{所得効果(*%-1%)}+{住宅ローン金利効果(0.5%-0.*%)}:*に数値を入れるだけです。

日本の住宅価格全体が、低金利効果の上にのっています。0.5%の住宅ローン金利(35年フラット)など、信じられますか?住宅ローン控除(ローン残の1%を、所得税から、10年間、マイナスできる:最大40万円×10年:確定申告)をいれれば、実は0.5%のローンは実質、約0.5%のマイナス金利です。

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※太字はMONEY VOICE編集部による

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