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投資歴が長いのに、いつまでたっても儲けられない…そんな人に共通する特徴とは?=山崎和邦

株式投資を長く経験を積んでも通算してみると金融資産は増えていないか、または大幅に減らしてしまうタイプの人がいる。こういう人々には様々な共通性がある。(山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年12月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

当てはまっていませんか?儲けられない人に共通する6のタイプ

その1:ズボラな人

筆者は、株式投資を長く経験を積んでも通算してみると金融資産は増えていないか、または大幅に減らしてしまうタイプの人を多数見てきた。こういう人々にはいろいろな共通性がある。それを今からいくつか拾い出してみようと思う。その「共通性」の中には筆者自身も含まれている場合もある。それを承知の上で反省する意味も含めて一つずつ拾い出してみようと思う。

今回は(1)として「ズボラな人」を挙げたい。

ズボラな人は通算して見るとまずは儲けは残らない。几帳面な人が結果的には勝つ。売買の年月日・株数・単価を買った時・売った時、結果としての売買損益、(四半期ごとでも半年ごとでもいいが、時期を必ず決めて)定期的に評価損益を累計して出す、などを几帳面に続ける人が概ねは金融市場で資産形成する。これは共通の特色であると思う。「俺は売買は全部頭の中にある」という人も多いが、そういうことを頭の中に入れるよりはもっと他のことを頭に入れるほうがいいと思う。紙に書くことによって頭の中が整理され頭が空になる。それが良いのだ。「記憶するために書く」という目的以外に「頭を空にするために紙に書く」という意義がある。

世界史の上でスイスやイタリアの交易商人たちは共同出資して交易を営み、その資金や利益の配分を管理する必要に迫られて複式簿記を発明し、克明に記録した。これが成功したヴェネチアの商人たちであったが、フィレンツェのメディチ家は会計を疎んじ資金を枯渇させた。それはメディチ家が芸術家や学者を支援し、文化の中心になったからではない。会計を疎んじたからだ。

近代においてイギリスや米国のように会計監査制度を強化した国家は繁栄した。初代財務長官となったハミルトン、は厳密な複式簿記を国家財政に導入し法制度化した。これら国家単位で述べても、記録にズボラな君主や王様はデフォルトに陥る例が多かった。スペインのフェリペ2世もそうだった。このことは「帳簿の世界史」(ジェイコブ・ソール著、村井章子訳、文藝春秋社,2015年刊)に詳しい。複式簿記こそ資本主義の要だというような例を挙げて述べている。そしてルネッサンス期の絵画には王侯貴族が帳簿を広げている絵が多い。

投資行為の繁栄は帳簿の中にある。投資で得る幸せは青い鳥が運んでくるのではない。几帳面な帳簿が運んでくる

その2:評論家やアナリストの言う意見を鵜呑みにする人だ

鵜呑みは長良川の鵜に任せよ、と言いたい。

または、彼らの言うことの全く裏ばかりを考える人。「裏の裏は表になってしまう」ことは事実だ、ということを忘れている人。シャーロック・ホームズ「最後の戦い」で悪の天才モリヤーティ教授との対決での話にこれが出てくる。拙著に述べた。

Next: ほかに、おごる人、人の逆をする人、確率を錯覚する人など…



その3:勝っておごる人

おごるなよ、丸い月夜もただ一夜。おごるもの久しからず。日本海海戦で世界戦史に残る圧勝をした時の、連合艦隊解散の辞の最後の文言に曰く、「天は、普段の鍛錬を怠らず、戦わずして既に勝てる軍団に勝利の栄冠を授けるとともに、一勝に安んじて治安の夢に耽りたる者から直ちにこれを奪う。されば古人言えり、勝って兜の緒を締めよ、と」。

その4:人の逆をやればいいと思っている人

たいていの人は損ばかりするようだから、人々の逆をやれば良いと信じ込んで全てをそうする人。

現に筆者の友人に徹底してそれをやり通した人がいた。証券マンの薦める銘柄を必ず直ちに空売りした。儲ける時もあったが、おおむねは失敗した。

その5:確率の錯覚をする人、自分流の勝手な法則を生んでしまう人

確率の錯覚で「自分流の勝手な法則」を生んでしまう、「確率が生む珍法則」だ。市場は、過去を記憶して動く。だから確率の世界ではない。

ところがルーレットは黒が何回連続して出ても都度々々の確率は2分の1なのだ。過去の事象と無関係だ。それを忘れると「1913年のモンテカルロ事件」のようなことが起こる。

1913年、タイタニック号が沈没した年であったが、モナコのモンテカルロのカジノでルーレットが22回連続して黒が出たという珍事が起こった。それは(1/2)の22乗だから4,194万分の1の確率だ。それが生じた。ちなみに筆者の父母の命日は30年違いの同月同日だ、これは365分の1の確率だが、妻の両親の命日も同月同日だ。この2つの事象が生ずる確率は365分の1の自乗だから13万3,000分の1である。

このように「ありえない偶然」は身の回りに起り得る。マイロン・ショールの二人のノーベル賞受賞者が取締役だったヘッジファンドLTCMが98年に破綻した、これも400万分の1という確率で起きたことだったそうだ。

このように極めて珍しい現象が起きると、それを理屈付けしたがって、「自分流の勝手な法則」を生んでしまう、これを「確率が生む珍法則」と筆者は言っている。たとえば筆者と妻の両父母の命日が同一だという13万分の1の確率を「13万組に1組の赤い線で結ばれた縁だ」とか、モンテカルロ事件は「タイタニック号の、あり得ない氷山との衝突と無縁ではない」というふうに、だ)。

そこで話を戻すと、カジノに集まった大富豪も小金持ちも、「黒が連続して出たのだから今度は赤だ」とカジノの全員が上記の下線部分を忘れて勘違いし「確率が生む珍法則」を生んでしまって、王侯・貴顕紳士淑女(★註2)も全員が持ち金を全て失ってカジノ経営者は史上最大の利益を得た。その場にチャーチルがいたという。(この人は大事件の真っ最中に現場にいたというめぐりあわせが多いらしく、1929年10月のNY株崩壊の日にウオール街に居たという)。チャーチルが死ぬ間際に「卿ほど功成り名を遂げた人にとっては後悔することはないでしょう」とインタビュアーが聞くと、彼はこう答えたという。「あの時、モンテカルロで黒に賭けておけば良かった」。これは有名な話しである。

(★註2)当時も昔も、欧州の貴族には「自由」がない。進学校も将来の地位も収入も、結婚対象範囲も、全てが既定路線だ。彼らが自由を求めて意思決定して行動できるためにカジノが生まれた。そして確率論の公式は中世のイタリアのカジノから生まれた。確率計算の公式を発明したのはジェロラモ・カルダーノという貴族でギャンブラーだった、これをガリレオが発展させ、ラプラスが引き継いだ。因みに「イギリス人は何にでも賭ける」という本があり、ロンドン1週間滞在中に読んだ。副題は「そのチャレンジスピリットの由来」、小林幸夫著、亜紀書房、2004年刊)

Next: チャートにはすべてが織り込まれている…しかし、妄信するものではない



その6:チャートを軽視する人と、その逆に妄信する人

罫線(チャート)を軽視する人と、逆に盲信して「ダマシ」(1960年半ばに日本に入国した「グランビルの法則」─移動平均法上の原則─で彼のいう「短期的・技術的な修正」、要するに短期的なテクニカルなダマシのこと)を一切認めない人。

チャートは森羅万象すべてが織り込まれる。それは、ヒトが株式市場という修羅の戦場でどう行動してきたかを示すものだ。「ファンダメンタル→それに反応する投資家の行動→株価変動」、この一連の流れの「それに反応する投資家の行動→株価変動」の部分だけを切りとって観察するのが罫線論である。一方、ファンダメンタリストは「ファンダメンタル→株価変動」を見る。

筆者の入社直後は「調査の野村」と言って、調査部(今の野村総研)が重視されてチャートは軽視または禁止した上司が多かった。その頃、筆者は本店営業部にいたが、課長が海軍兵学校・名古屋帝大の人だったが、罫線を軽んじなかった。また、隣の部にいた部長(のちに社長になった田淵節也・略称「大タブ」)が、京都大学卒の一応のインテリ層だったはずだが、「罫線に向かってモノを言うな。ここにすべてが語られている」と言っていた。筆者はそのころから罫線が好きで、調査部のいうことよりも罫線を信じて、隠れて見ていた。

その7:「老化防止のため」「勉強のため」などと多目的設定する人

目的の単一性、一行動一目的、これがクラウゼビッツ「戦争論」の要諦の一つだ。「老化防止のため」などと気安くいう人がいる。結果としてそうなるなら大いに結構だが、それが主目的なら多額な医療費を株式市場に払うことになる。

「勉強のため」という人も多い。それが結果的にそうなるなら大いに結構だが、それが主目的なら大いに授業料を市場に支払うがいい。

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第1部;当面の市況

第2部;中長期の見方

第3部;「日経平均の大底圏内をいわゆる「大通り銘柄」を買い、青春期相場・壮年期相場で資産を作る」というオーソドックスな方法が通用しなくなる可能性

第4部;COP25で早くも馬脚を顕したか小泉進次郎新大臣

第5部;式投資で長年の経験を積んでも儲けられない人のタイプ

第6部;読者との交信欄

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年12月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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image by : Kues / Shutterstock.com

山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年12月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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