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「50代の無職男性」は危険人物? 自殺者とホームレスの統計から見えた日本の地獄=鈴木傾城

病気、失職、転職失敗、借金、無学歴、無資格、事故、怪我、障害……。誰でも何らかの問題を人生で抱え、誰でも路頭に迷う可能性はある。最近はリストラも恒常的に行われている。50代で職を失うこともある。50代で職を失ってしまうと、よほどのエリートでもない限り、新しい職はなかなか見つからないのが普通だ。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)

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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。

ホームレスの前職はほぼ肉体労働者? 55歳を超えたら貧困へ…

「50代の無職の男性」に当てはまる人が自殺の危険が高い

平成31年3月28日に、厚生労働省社会と警察庁は『平成30年中における自殺の状況』を報告しているのだが、「何人自殺しているのか」ではなく「誰が自殺しているのか」に着目してデータを見ていると、興味深い実態が浮かび上がる。

2009年から2018年までのデータで、一貫して自殺者の多い性別は「男性」である。一貫して自殺者の多い年代は50代(50〜59歳)である。一貫して自殺者の多い職業は「無職者」である。

50代の無職の男性……。

これに当てはまる人が最も自殺の危険が高いということをデータは示唆している。
※参考:平成30年中における自殺の状況(PDFファイル) – 厚生労働省

職を失うと這い上がれない

病気、失職、転職失敗、借金、無学歴、無資格、事故、怪我、障害……。誰でも何らかの問題を人生で抱え、誰でも路頭に迷う可能性はある。最近はリストラも恒常的に行われている。50代で職を失うこともある。

50代で職を失ってしまうと、よほどのエリートでもない限り新しい職はなかなか見つからないのが普通だ。何とか職を見つけても、非正規雇用がせいぜいで、さらに条件の悪い低賃金の仕事になってしまう。

場合によっては肉体労働かもしれない。しかし、実のところ肉体労働をこなせるのは40代までがせいぜいで、50代の肉体労働はかなり苦しくつらい。

50代からはどんどん身体にガタが来るのだ。健康問題は原因が分かっている自殺者の自殺理由のトップでもある。健康を維持するのもカネが必要だが、仕事が見つからないのであればカネもないので健康も維持できない。

このあたりに「50代の無職の男性」の自殺率の高さが表れているのだと考える。

ところで、日本で「50代の無職の男性」を最も見かけるエリアがある。大阪あいりん地区の元ドヤ街である。さすがに今は道ばたにひっくり返って寝ているような人は少なくなったが、生活保護をもらいながらドヤに籠もっている。

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ホームレスになる前は肉体労働者

もちろん、ドヤに籠もらないでホームレスになっている人もいる。では、日本のホームレスは、何歳代が多いのだろうか。厚生労働省の出している『平成24年ホームレスの実態に関する全国調査検討会報告書』を紐解くと、このように書かれている。

「55歳以上が全体の7割以上を占める」

一流企業を失職してどうにもならなくなった男性が、最後にホームレスになったという転落話を私たちはしばしば聞く。

あるいは、ホームレスになる人々の中には、自営業をやっていて多額の負債を抱えたまま会社を倒産させてしまったとか、パチンコや公営ギャンブルにハマって多重債務者になったとか、そういった経歴の人間もいる。

しかし実際にホームレスを構成する大多数はそうではなく、別の人生のストーリーを持っている。

それは、「若い頃からずっと肉体労働をしていたが、年を取ったり、身体を壊したりしたのをきっかけに働けなくなり、ホームレスにまで落ちた」というものだった。

厚生労働省は「初めて路上(野宿)生活をする前にやっていた仕事」をも調査しているが、全体を見ると45.9%が「建設・採掘従事者」であったことが分かっている。他に多かったのは、「輸送、機械運転従事者」と「運搬・清掃・包装等従事者」である。どれもつらい肉体労働だ。
※参考:平成24年ホームレスの実態に関する全国調査検討会報告書(PDFファイル) – 厚生労働省

肉体労働は、55歳が限界というひとつの証明

あくまでもホームレスで大多数を占めるのは、こうした肉体労働をしていた人たちの生活破綻である。建設作業員などは社員であっても日雇い労働者に近く、怪我をしたり身体を壊したりすると途端に生活に窮する。

人間だから病気になったり、怪我をするのは誰にでも起こり得ることだ。そして、年を取れば取るほど身体が言うことを聞かなくなっていく。

ホームレスを構成しているのが「55歳以上が全体の7割以上を占める」ということは、肉体労働は55歳が限界だというひとつの証明になっている。

だから、肉体労働をして生きている人たちは、一般論で言えば、それができるのは40代の終わりまでだと考えるべきだ。50代に入ると、とたんに厳しくなる。タイムリミットは往々にして55歳になる。

Next: 誰もがホームレスになりうる? 55歳以上が全体の7割以上を占める社会とは



「堕ちないための金」を積み立てておくということ

50代と言えば、まだ死ぬ年代でもない。死ぬどころか平均寿命から見るとまだ30年も残っている。

したがって、50代を過ぎても生きるためには、肉体労働ではなく、マネージメントやその他、体力を消耗しないで生きていける何らかの仕事に就けるようにしなければならない。

それがなかなか難しいのが低学歴の人たちだ。肉体労働がキツくなると分かっていても上に這い上がれる人は多くない。

本人の能力が低いからではない。企業は高学歴の人間をマネージメント職につけて、低学歴層を現場につけるからだ。社会はそのようになってしまっているのである。

それであれば、50代に向けて堕ちないように「準備」をしておかなければならない。準備とは要するに「堕ちないためのカネ」を積み立てておくということだ。しかし、日雇いのような仕事が続くと、その「積み立てる」ということ自体が難しい。

積み立てるどころか、多重債務に堕ちていくのも実はこういった人たちが多い。借金慣れしていくと、やがてその借金が返せなくなって一気に多重債務者になる。多重債務に堕ちると、もう這い上がるのは難しい。

だから、少なからずの人たちが自殺し、少なからずの人たちが貧困ギリギリの生活になり、少なからずの人たちはさらに堕ちてホームレスとなる。

資本主義はカネがすべての世の中だ。それは自由な世の中の、唯一の絶対ルールと言ってもいい。底辺に堕ちれば堕ちるほど、そのルールはより非情なレベルになって弱者に襲いかかっていく。

カネがなければ、世の中に食べ物が満ち溢れていても、自分だけは飢えて死ぬ。食べ物が大量に余っても金のない人間に配るのではなく、破棄するのが資本主義である。自国に餓死しそうな人がいても関係ない。カネがなければ飢えている人がいても破棄するだけだ。

「55歳以上が全体の7割以上を占める」ということ

国が発展している時代であれば、仕事がいくらでもあるので、こういった人たちも救済されることがある。高度成長期はどんな人であっても仕事に恵まれた。

しかし、経済大国としてのピークを過ぎて経済が縮小していく時代に入ると、普通の人であっても運が悪ければホームレスに転がり落ちていくこともある。

日本もそうだが、経済大国としてのピークを過ぎた国は、社会保障費の増大に苦しんで財政不足に陥る。そのため、社会的な弱者に落ちてしまった人は救済されるのではなく逆に突き落とされる。

バブル崩壊後は経済政策の失策で立ち直ることもできず、少子高齢化も放置されてきた日本は、いよいよ敗者が見捨てられる段階にきた。最初は確かに肉体労働に就いてきた人たちが50代を過ぎて働けなくなって転がり落ちる傾向が続く。

しかし、ブルーカラーだけが地獄に落ちるのではなく、その次にはホワイトカラーの地獄が待っているのである。

内需が減退して売上が上がらなくなり、それでいてグローバル化によって競争が激しくなり、さらに雇用を削減するイノベーションが進むことによって、企業はホワイトカラーを大量に削減するようになるからだ。

Next: トヨタですら終身雇用に白旗。自殺者とホームレスの統計から地獄が見える



50代の無職の男性は、社会において絶望の崖っぷちに立っている最も危険な人

真面目に会社に勤めていても、その会社が社員をリストラしていく。

日本を代表するトヨタですらも、豊田章男社長が2019年5月13日に「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と言うようになっているのだ。

社会環境が変わったことで、お堅い職業であったはずの銀行員でさえも不要になってしまう。誰が「要らない」と言われて放り出されるのか。ハイテクに疎く、それでいて高賃金をもらっている「50代」である。

若年層は生活破綻しても親の住居に潜り込んで部屋に籠もっていれば、生きていける可能性はわずかに残されている。しかし、50代の人間が生活破綻したら誰も助けてくれない。

不幸が重なって堕ちても、世の中からは自己責任だと言われて救済はほとんどない。経済的に追い詰められた人に、温かく金を与えてくれる人はひとりもいない。50代の無職の男性は、社会において絶望の崖っぷちに立っている最も危険な人である。自殺者の統計とホームレスの統計はそれを示している。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年1月15日)
※タイトル・見出し・太字はMONEY VOICE編集部による

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