マネーボイス メニュー

副業しないと貧困へ。日本型雇用の終焉でむしろ急成長する4分野12企業とは=矢野恵太

年功序列・終身雇用といった日本型雇用は終焉を迎えました。いよいよ副業“当たり前”時代に突入ということで、今後に急成長が期待できる4分野・12銘柄をご紹介します。(『アレス投資顧問』矢野恵太)

【関連】2020年に狙うべき国策テーマ銘柄は?今年2年目の「ゴールデン・スポーツイヤーズ」関連=矢野恵太

プロフィール:矢野恵太(やの けいた)
東芝グループでエンジニアを経験後、金融業界に転身。上場証券会社、独立系投資顧問会社で営業・企画・マーケティングなどを担当。2017年にアレス投資顧問を共同創業。青山学院大学の亀坂安紀子教授と、ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー教授が共同で実施している株式市場の国際比較調査に協力するなど、金融市場の発展に向けた業務にも従事。日本ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」の資格を持ち、ワインのテイスティングで鍛えた鋭い嗅覚で株の銘柄を発掘する「株ソムリエ」。

副業時代の成長企業はこれ!鍵を握る4分野を投資のプロが解説

年功序列・終身雇用は終焉へ

政府が17年に発表した『働き方改革実行計画(PDFファイル)』では、「労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」と記されました。そのため、日本企業でも副業が事実上解禁されております。

しかし、先日に経団連から発表された内容は、サラリーマンの方々には一定の衝撃を与える内容だったのではないでしょうか。

経団連は21日、2020年春闘で経営側の指針となる「経営労働政策特別委員会報告」を発表した。経済のデジタル化や国際競争に対応し、年功型賃金と終身雇用を柱とする日本型雇用慣行を見直す必要性を提起。賃上げは前向きな検討が「基本」とし、基本給を底上げするベアも容認したものの、全社員一律に報いる方法だけでなく職務や成果を重視した配分が適切だと記した。

出典:賃上げは成果重視、経団連指針 年功・終身雇用見直しを提起 – 共同通信(2020年1月21日配信)

ここにきて官民の歩調があってきたことで、戦後から長く続いた日本型雇用制度がいよいよ崩壊を迎え、労働市場は大地殻変動を起こすことになりそうです。

「複業(副業)」が成長企業の鍵になる?

先日、『これからの「複業」新時代を考えるシンポジウム ー副業から複業へー』に出席してきました。

本業の片手間の「副業」ではなく、「本業を複数持つ」。すなわち「複業」の意識が、個人のキャリア形成だけでなく企業を成功に導くとのことでした。

そこで今回は、今後本格的に増加することが予想される複業(副業)の関連銘柄について、4つのプレイヤーごとにチェックしていきたいと思います。

Next: 複業(副業)時代の成長企業はこれ! 鍵を握る4つの分野とは?



成長企業その1:複業希望者をマッチングする企業

まずは大地殻変動を起こすであろう労働市場で、複業(副業)希望者をマッチングさせる企業に注目します。

・クラウドワークス<3900>

クラウドワークス<3900> 日足(SBI証券提供)

同社では、20年1月8日から企業が副業・兼業したいハイクラスな人材とマッチングし、仕事を依頼できる新サービス「CrowdLinks(クラウドリンクス)」を開始しています。前述のシンポジウムには同社の吉田社長も登壇されておりましたが、大手電機メーカー、メガバンクなどとの話も進んでいるとのことでした。

・みらいワークス<6563>

みらいワークス<6563> 日足(SBI証券提供)

19年10月1日、株式会社groovesと、地方中小企業と都心部で働くプロ人材のビジネスマッチングサービスを展開する合弁会社「株式会社スキルシフト」を設立。

Next: 伸びるのは「複業環境をサポートする企業」。とくに注目すべき3社は?



成長企業その2:複業環境をサポートする企業

実際に副業する際には、契約、勤怠、給与を含め、様々な制度面の管理が必要になってきますので、これらをサポートする企業にも商機が広がることになりそうです。

・クロスキャット<2307>

クロスキャット<2307> 日足(SBI証券提供)

株式会社Scalarと共同で、社員の副業を含む総労働時間を把握するとともに、分散台帳技術を用いて副業申請時の届出情報や副業先での勤怠情報の改ざんを防止する新たな勤怠管理のサービスを開発しております。改ざんされないことが担保できれば、副業先での労災事故発生の際、有効な証跡として活用が期待できるため、三井住友海上火災保険株式会社と連携して補償サービスの付与なども視野に、さらなる充実化を図る方針です。

・フリー<4478>

フリー<4478> 日足(SBI証券提供)

質問に答えるだけで、副業時の確定申告に必要な書類が作成可能なサービスを展開。

・弁護士ドットコム<6027>

弁護士ドットコム<6027> 日足(SBI証券提供)

法律相談サイトを運営しており、法律面での相談ニーズが高まることになりそうです。また同社の創業者、元榮太一郎会長も上記シンポジウムに登壇されておりましたが、同社の代表取締役会長、弁護士、さらに参議院議員と、「3足のわらじ」を履いてまさに複業を実践されております。

Next: 注目は「複業する個人をサポートする企業」。プロが目をつけた3社は?



成長企業その3:複業する個人をサポートする企業

厚生労働省労働基準局提出資料『副業・兼業の現状① 所得別の副業比率(PDFファイル)』によると、年収1000万円以上の層の平均副業率が6.4%(平成29年調査)なのに対して、18年のサラリーマンの平均年収(441万円)の層では、2.1%(平成29年調査)で3分の1程度にとどまるなど、複業機会は高スキルを持った人材が有利となる可能性が高いだけに、今後は平均的なサラリーマン層によるスキルアップ需要が高まることになりそうです。

・ランサーズ<4484>

ランサーズ<4484> 日足(SBI証券提供)

フリーランス・副業希望者向けに、様々な職種のスキルアップ&稼ぐノウハウの講座を用意しており、新インフラ「Freelance Basics」を展開しております。

・TAC<4319>

TAC<4319> 日足(SBI証券提供)

資格取得の専門学校「資格の学校TAC」を中心に、ITエンジニア向けのパソコンスクールなども展開。

・ユナイテッド<2497>

ユナイテッド<2497> 日足(SBI証券提供)

傘下のキラメックスが、プログラミングやアプリ開発を学べるオンラインスクールTechAcademy(テックアカデミー)」を運営。人材不足といわれるAI分野では、AIの構築に必要な機械学習・ディープラーニングを習得できる「AIコース」も展開しております。

Next: 見逃せない「複業で社員を送り出す・受け入れる企業」4社は?



成長企業その4:複業で社員を送り出す・受け入れる企業

経済産業省が出している、『兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言(PDFファイル)』によると、副業による企業側のメリットとしては、①人材育成、②優秀な人材の獲得・流出防止、③新たな知識・顧客・経営資源の獲得、などが挙げられております。

・ライオン<4912>

ライオン<4912> 日足(SBI証券提供)

2020年春をめどに、人事部が社員に副業を紹介する制度を始める。人材紹介会社と提携し、幅広い仕事を取りそろえる。副業は社員が自ら探すのが一般的だが、関心があっても自分で見つけるのが難しいケースが多い。紹介までするのは珍しい。所属企業の枠を超えて事業を創造するオープンイノベーションを促すきっかけになる。

出典:ライオン、人事部が副業紹介 本業での貢献を期待 – 日本経済新聞(2020年1月12日配信)

1/31には19年12月期の業績予想を下方修正。売上高は3.5%、営業利益は3.9%引き下げ、減収・減益見通しですが、同社が事業を展開するトイレタリー市場の規模は、矢野経済研究所によると18年度から19年度見込み比で1.8%増にとどまるなど、成熟しているだけにイノベーションの推進は急務といえるでしょう。
※参考:矢野経済研究所 2019年度のトイレタリー市場規模

・サイボウズ<4776>

サイボウズ<4776> 日足(SBI証券提供)

同社は12年から副業を解禁(副業例:カレー屋、ユーチューバー、カメラマン等)しているパイオニア的な企業ですが、株価は13年以降7倍近く上昇。自社でも複業採用を取り入れております。

・三菱地所<8802>

三菱地所<8802> 日足(SBI証券提供)

19年10月、新事業のさらなる成長に向けて、外部人材との新たなコラボレーションを実現するために、ビジネスプロフェッショナルの新しい働き方に対応した「副業・兼業限定」で人材登用を実施。

・みずほFG<8411>

みずほフィナンシャルグループ<8411> 日足(SBI証券提供)

19年6月、メガバンクで初めて社員の兼業や副業を今年度後半にも認める方針を明らかにしておりますが、ベンチャー企業などで経験を積み、グループの新ビジネスに生かしてもらう狙いのようです。一方、高い人件費と余剰人員が業績の足かせになっている面もあるだけに、副業解禁とあわせて、このあたりの体質改善が進めば、リーマンショック以降低空飛行が続く株価の浮上も見えてきそうです。

人生100年時代、日本型雇用制度の崩壊などを考えれば、今後は個人として複業(副業)を活用したキャリア戦略が重要になりそうです。

昨年話題となった老後2000万円問題などを考慮すれば、上記銘柄などをチェックしつつ、複業として投資をしてみるのも1つの戦略ではないでしょうか。

アレス投資顧問では、引き続き将来性の高いビジネス・話題の企業をウォッチし、成長が見込める注目銘柄を皆さんにご紹介していきます。

【関連】楽天「送料無料」騒動で客離れ加速。なぜAmazonやYahoo!と差がついたのか?=栫井駿介

【関連】大塚家具「父娘共倒れ」の可能性? お家騒動から早5年、両社とも経営危機へ=山岡俊介

【関連】韓国、新型肺炎で3度目の経済危機へ?カギを握るのは崖っぷちのウォン相場=勝又壽良

image by:MAHATHIR MOHD YASIN / ShutterStock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年2月4日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。