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Amazonや楽天も潰される?中国第2位のECに急浮上「拼多多」とは何者か=牧野武文

中国の拼多多(ピンドードー)というECサイトを知っていますか?激戦の中国EC業界において、わずか創業3年でアリババに次ぐ第2位に浮上するなど勢いのあるサービスです。アリババやテンセントとは一線を画すそのビジネスモデルとは? 今回はこの拼多多が急成長した理由を解説します。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

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プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2020年2月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

わずか創業3年で会員数第2位に浮上。やがてアリババを倒す?

中国EC界の2強「アリババ」「テンセント」にまさかの伏兵?

中国で最も大きなECサイトは、アリババの天猫(Tmall)+淘宝(タオバオ)であるということはご存知の方も多いかと思います。

Tmallは越境ECの機能も持っていて、日本企業の製品もたくさん販売されています。化粧品、薬品、アパレルなどが中心で、みなさんの企業でもTmallと取引をしているかもしれません。また、11月11日の独身の日には大々的なセールを行い、たった1日で、2684億元(約4.17兆円)もの売上をあげることでも有名です。

第2位のECサイトは「京東」(ジンドン)です。アリババは、あくまでもマッチングが中心で、配送物流などは外部化しています。一方で、京東は大規模倉庫や配送物流まで自前です。

私たちに身近な例で例えると、アリババは楽天型、京東はアマゾン型と言えるかもしれません。

京東には、テンセントが出資をしているので、ECの領域でも、アリババ vs テンセントという構図になり、激しい競争をしてきました。2019年のアリババ(Tmall+タオバオ)の流通取引総額(GMV)は、約6兆元、京東が約1.7兆元と差がついていますが、伸び率ではアリババが25%、京東が31.7%と、京東が上回っています。

京東にしてみれば、アリババの背中が見え始めているというところまできました。

拼多多(ピンドードー)が会員数「第2位」に急浮上

ところが、2015年9月にスタートした拼多多(ピンドードー)が、瞬く間に利用者数を伸ばし、創業3年目の2018年7月には上海とナスダックに上場をしてしまいました。

GMVは4,716億元と、第2位の京東にもまだまだ及びませんが、アプリのMAU(月間アクティブユーザー数)では、2018年半ばに京東を抜いて、第2位に浮上し、会員数も2018年末には3.8億人となり、京東の3.0億人を抜いて第2位に浮上しています。MAUでは、アリババが8.5万人、拼多多が4万人、京東が2.5万人と、アリババの背中が見え始めています。

しかも、この拼多多は、ビジネスモデルがTmallとも京東とも違います。

中国ではC2B(Consumer to Business)、ソーシャルECなどと言われ、今までになかったものです。

Next: トイレットペーパー50ロールが約106円!? 誰もが拼多多の安さに驚く



消費者が価値を生み出している?

今回は、この拼多多とはどんなビジネスモデルなのか、強みはどこにあるかをご紹介します。

その前に、ちょっとだけ、前振りを。「C2B」という用語は、多くの方にとって馴染みがないと思います。B2C(消費者ビジネス)やB2B(法人ビジネス)は理解しやすくても、C2Bは初耳という人もいるのではないでしょうか。

ネットの用語辞典のようなものには「消費者が企業に対して商品やサービスを提供するビジネス形態」と説明され、リサイクル品買取ビジネスや太陽光発電による売電などが例として挙げられています。間違いではありませんが、これはC2Bのごく素朴な形です。

取引というのは、価値を生み出し、その価値を金銭に交換することです。家電メーカーは炊飯器という価値を生み出し、消費者はその価値に対して対価を支払います。これがB2Cです。

すると、C2Bとは、消費者が何らかの価値を生み出し、それに対して企業が対価を支払うということになります。アフィリエイトビジネスもC2Bです。アフィリエイトは、消費者がブログやウェブで集客をし、それを企業に送客して、報酬を得ています。

では、拼多多では、消費者がどんな価値を生み出しているのでしょうか。それを意識しながらお読みください。

拼多多の類を見ないビジネスモデル

拼多多のアプリやミニプログラムを開くと、まず驚くのがその安さです。

拼多多で最も売れている商品はトイレットペーパーです。あるトイレットペーパーは、50ロール(半年分)が6.8元(約106円)で売られています。1ロールじゃないですよ、50ロールまとめて6.8元なのです。とんでもない価格です。

とにかくほとんどの生活用品が、とんでもない安さなのです。日本人が初めて100円ショップというもの体験した時の驚きの10倍ぐらい、中国人も驚いたのではないでしょうか。

しかし、あまりに安すぎて、なんか怪しいと思ってしまいますよね。実際、拼多多では当初、偽ブランド品、粗悪品による事故が多発しました。

そのため、都市住民からは「貧乏人のEC」と見下され、地方都市や農村の消費者が主に使っていました。日本企業もこの安さでは出品しようがないため、ほとんど視野に入っていなかったのだと思います。

ところが、拼多多の本質が知られるとともに、都市にも「隠れ拼多多ユーザー」(拼多多を使っていると言うのは少し恥ずかしいことになっています)が増えていき、最近では都市の人も堂々と「拼多多にハマっている」と言い出す人が現れています。

地方都市と農村から始めて、急速に利用者数を増やしているのは、都市への進出がうまくいっているからです。拼多多はただの「安かろう、悪かろう」の激安ECではなくなっています。

Next: やがてアリババを倒す? 拼多多の人気に火を付けた3通りの購入方法



拼多多の人気に火を付けた3通りの購入方法

拼多多の基本的な構造は、共同購入ECやギャザリングと呼ばれるもので、日本でもスマートフォンが登場する前の2000年代半ばにブームになりました。出品されている商品の価格が、購入者が集まれば集まるほど安くなっていくというものです。

しかし、すぐに廃れてしまいました。その仕組みを悪用する業者が多かったからです。

ありがちなのは、高い価格設定で始める業者。そもそも底値で売っても利益が出るような価格設定にして、「安くなった感」だけで売ろうというものです。また、「売れている感」を出そうと、サクラの共同購入者を使うところもありました。その時は、ついつい勢いに飲まれて買ってしまったものの、後で冷静に考えると、高い買い物だったということが多く、悪いユーザー体験が蓄積をして、利用者が離れていくことになりました。

拼多多のようなソーシャルECでは、買い方が3通りあります。「単買」「参団」「開団」の3つです。

「単買」は普通に購入する方法で、普通のECと変わりありません。先程の50ロールのトイレットペーパーを単買すると、10.9元(約170円)になります。これでも十分に安いですが、単買をする人はあまりいません。多少高くてもいいので、すぐに届けてほしいという場合だけです。

一般には「参団」という方法を使います。これはすでに成立しているまとめ買いグループに参加をする方法です。これだと6.8元で購入できます。条件に設定されている人数が集まらない時は不成立になり、買うことはできませんが、あまり心配はありません。なぜなら商品ページには「後1人参加で成立」というグループの一覧が表示されているので、そこに参加をするだけで割引価格で商品を購入できます。まれに、キャンセルする人が続出して不成立ということもないわけではありませんが、普通はこの参団という方法を使って購入します。

もうひとつの買い方「開団」が、拼多多の醍醐味であり、ビジネスモデル上のポイントになっています。これは自分でグループを作る方法です。商品ごとに「○○時間内に○○人」という条件が決まっていて、この条件をクリアできれば、最低価格で購入できるというものです。先程のトイレットペーパーでは、価格は6.8元から始まり、人が集まれば集まるほど下がっていきます。これは開団した人だけの特典です。大量の人が集まると、最終的には9割引や実質タダになってしまうこともあります。

「共同購入EC × 中国市場」で何が起きた?

では、どうやって共同購入者を集めたらいいでしょうか。放っておいたら、誰も共同購入者にはなってくれません。ここでSNSを使うのです。

拼多多で開団すると、そのことをWeChatなどのSNSにアップすることができます。これで友人が集まっているグループに報告をして、共同購入者を募ってもいいでしょう。あるいは、グループのQRコードが発行されるので、これにコメントや音声、動画などをつけて宣伝をしてもかまいません。グループに参加したい人は、QRコードをスキャンすれば参団することができます。

ここまで拼多多の構造を見てきて、お詳しい方は、「日本で以前流行した共同購入やギャザリングとさほど変わっていないのではないか」と思われたと思います。

確かに、構造は共同購入ECそのものです。しかし、中国には独特の風土があり、ある意味使い古された共同購入ECというビジネスモデルが、中国では違った効果をもたらすと直感したところが、創業者の黄崢(ホワン・ジェン)の手柄です――

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中国独自の「お客さんがお客さんをつれてくる」現象

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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』(2020年2月3日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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