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日本の不動産は落ち目? EU離脱後も上昇を続けるイギリス不動産と何が違うのか=俣野成敏

イギリスの不動産が盛り上がっています。なぜブレグジット後の今なのか? 日本の不動産とどのような点が違うのか?専門家に話を詳しく聞きました。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

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※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2020年3月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:俣野成敏(またの なるとし)
ビジネス書著者、投資家、ビジネスオーナー。30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資家として活動。投資にはマネーリテラシーの向上が不可欠と感じ、現在はその啓蒙活動にも尽力している。自著『プロフェッショナルサラリーマン』が12万部、共著『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが13万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが11万部に。著作累計は46万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を4年連続で受賞している。

1. 人口が減っている日本で不動産投資が加熱しているワケ

今回は「海外不動産(ロンドン不動産)」特集をお送りします。

本日は、海外不動産投資に詳しい金融の専門家・織田耕平さんにスペシャルゲストとしてお越しいただきました。「なぜ今、イギリスなのか?」「日本の不動産と、どのような点が違うのか?」
といったことについて、織田さんに詳しくお伺いしていきたいと思います。

プロフィール:織田 耕平(おりた こうへい)
国内の大手精密機械メーカー海外営業部に配属され、東南アジア・オセアニア地区のセールスマネジャーとして国際ビジネスの現場で経験を積んだ後、国内証券会社に転職。超富裕層を相手に、プライベートバンカーとして個人の資産形成から事業承継に至るまでを一手に引き受ける。そこで航空機を用いた資産運用法と、それによる高い節税効果に気づき、航空機専門商社に転職する。各業界を比較検討した結果、「これまでの経験すべてを活かせる場として、金融業界で生きていく」決意を胸に起業。シンガポールに居を移し、JIFPA(S)PTELTDを立ち上げる。現在は、JIFPAのCEOにて海外不動産コーディネーター、シンガポール富裕層へのコンサルティング、世界金融商品の開発等を手がけて
いる。

<ポイント:なぜ、日本の不動産投資はオススメできないのか?>

俣野:では織田さん、本日はよろしくお願いします。

今回は、海外不動産投資の事例として、イギリス不動産投資の現状についてご紹介いただきます。

そもそも論として、「なぜイギリス不動産なの?」と疑問に思われる読者の方が、複数いらっしゃるのではないかと思います。

織田:実は、私の会社でイギリス不動産を手がけるようになってから、すでに5年が経っています。私は、日本の金融機関でプライベートバンカーをしていた時から、世界3大不動産マーケットとしてのロンドンに注目してきました。

ちなみに、世界3大不動産マーケットとは、東京、ニューヨークのマンハッタン、それからロンドンのことを指します。

俣野:日本も、このところ不動産市場が活況を呈しています。私たち日本人にとって、日本の不動産投資ができるのであれば、それが一番手っ取り早いと思うのですが、いかがでしょうか。

織田:確かに、ここ数年、日本のマンション価格は上がり続けています。たとえば首都圏で2019年に供給された新築マンションの平均価格は5,980万円で、対前年比1.9%の上昇。1平方メートルあたりの単価は87万9,000円と1.2%の上昇でした。

東京23区に限ると、1平方メートルあたりの単価が100万円を突破しており、平均価格も17年以降は7,000万円を超えています(日経新聞Web版、2020年1月25日)。

だからと言って、日本で以後、不動産に対する大幅な需要が見込めるのか?というと、そうではないでしょう。ご存じの通り、日本では少子高齢化が進んでおり、人口も2008年をピークに減少に転じています。

Next: なぜ人口減少が見えている日本で不動産価格が上がっている?



なぜ人口減少が見えている日本で不動産価格が上がっている?

俣野:日本は今後、人口が減少することがわかっているにも関わらず、なぜ不動産価格は値上がりを続けているのでしょうか?

織田:これは単純な話で、要は買い手がいるからです。その買い手が誰かと言うと、ほとんどが“銀行の貸し先”です。ですから、「買い手は銀行がつくっている」と言うこともできます。

本来、不動産投資をリスクとリターンの関係から考えた場合、物件の購入希望者は、頭金として、だいたい1~3割の自己資金を出さないと融資してもらえません。これは、日本でも世界でも基本は同じです。

ところが、2016年2月から、日銀がマイナス金利政策を始めました。この政策によって、金融機関は、日銀の当座預金にお金を置いておくと、手数料を取られるようになりました。

銀行は、お金を貸さざるを得ない状況に追い込まれたわけです。

そのため、一時は年収数百万円のサラリーマンでも、頭金なしのフルローンで億単位の投資用物件を購入できた時期があったようです。現在は、金融庁の指導もあって、正常な状態に戻りつつありますが。

日銀の黒田東彦(くろだはるひこ)総裁が、2012年から始めた異次元金融緩和政策によって、大量のお金が市場に放出された結果、お金の行き先は、主に3つに分かれました。「海外市場」「国債」「不動産」の3つです。

海外市場については、たとえば2018年5月に発表された、アイルランド製薬大手シャイアーを買収した武田薬品の例が挙げられます。

買収するに当たり、武田薬品はJPモルガンチェース銀行、三井住友銀、三菱UFJ銀、みずほ銀、農林中央金庫、三井住友信託銀行から融資を仰ぎ、後には国際協力銀行(日本の政策金融機関)も加わりました。7兆円弱もの巨額買収が実現したのは、これだけの金融機関が出資に応じたからです。

2つ目の国債に関しては、日銀が国債を購入する代わりに市場に資金を供給していることは、ご承知の通りです。そして、3つ目が不動産です。

私たちは普段、銀行に資金を置いています。これを預金と言い、銀行にとっては「資金を調達している」状態に相当します。ですから、彼らは私たちに対して、調達金利を支払わなければなりません。それが、預金金利に当たります。

今の金利は、私たちにしてみれば、たった0.001%かもしれませんが、銀行にとってはコストですから、手持ちの資金を運用しないと赤字になります。

マイナス金利の導入前、金融機関は日銀の当座預金に預け入れをしているだけで、0.1%の利息がつきました。当時は、日銀の当座預金にお金を入れておきさえすれば、調達コストはペイできたのです。

そもそも銀行は、お金を貸さなければ商売ができません。なのに、それをせずに、お金を当座預金に眠らせておいた理由は、バブル崩壊で長い間、資金を貸し出せる状態ではなかったからです。

ところが、せっかく景気が持ち直してきた後も、銀行はリスクを取って資金を貸し出そうとはしなくなってしまいました。日銀の当座預金にお金を入れておけば利益が出るので、リスクを厭う気持ちがあったのでしょう。

マイナス金利とは、ある意味、日銀の荒療治だったわけですが、これによって銀行は、貸さなければ確実に赤字に陥ります。そこで、銀行の資金が向かった先というのが、担保が取れる不動産でした。

日本の不動産投資を過熱させた要因は、ここにあったのです。

俣野:今の日本の不動産市場の活況は、実態に即したものでなかった、というのであれば、いずれ値崩れを起こす危険性があるのでしょうか?

織田:「いつ、この市場が崩れるのですか?」と問われたならば、その答えは「銀行がお金を貸さなくなった時」です。その時が、日本の不動産マーケットが崩れる時でしょう。

結論:現在の日本の不動産市場の活況は、見せかけに過ぎない

Next: なぜEU離脱後もイギリスの不動産は盛り上がっている?



2. EUを離脱したイギリスの不動産が盛り上がっている理由とは

<ポイント:不動産投資で大事なのは「需給バランス」>

俣野:ここまでのお話をまとめますと、「買い手が大勢いるからといって、その市場が必ずしも将来性があるとは限らない」ということになるかと思います。

それでは、不動産投資を検討する際の見るべきポイントを、お話いただけますでしょうか?

織田:プロが注視しているのは、基本的に「需要と供給」だけです。いわゆる需給バランスを見ています。当然ながら、需要が供給を上回っていれば、価格も上がっていきます。需要が一定なら価格も安定しますし、供給が需要を上回れば価格は下がります。

大多数の人が不動産投資で失敗している要因は、その多くが需要と供給の中身を見誤っているからに他なりません。

俣野:その一例が、先ほどお話しいただいた日本の不動産市況ということですね。

反対に、需給バランスが良いのがイギリスのロンドン不動産、ということでしょうか?

織田:はい。目下、それ以外の海外地域は、ほとんどが供給過剰になっています。先ほど挙げた世界3大都市の中でも、もっとも価格が安定しているのがロンドン不動産です。需要が常に供給を上回っているからです。

これには、いくつかの要因があります。まず、イギリス人は持ち家派の人が多いということ。持ち家比率的には65%前後と、日本の61.2%(2018年、総務省)と大差ありませんが、日本人のように「一生に一度の買い物」とはなりません。

たいていのイギリス人は、ライフスタイルに合わせて数回、購入と売却を繰り返します。それを可能にしているのが、イギリスの住宅価格の上昇です。この30年ほどの間に、イギリス全体で見ても、住宅価格は3倍以上に値上がりしています(Web版『建築討論』2016年夏号)。

需要が供給を上回っている要因の2つ目は、大ロンドン開発計画です。話は、18世紀末の産業革命までさかのぼります。イギリスが他国に先駆けて、いち早く産業革命を成し遂げると、ロンドンは急速に都市化が進行しました。

ロンドンには、職を求めて全国から人が押し寄せ、工場による環境汚染や人口過密による住環境の悪化、劣悪な衛生状態、貧困や犯罪の蔓延など、今日見られる都市問題が、一足早く噴出しました。

やがて人々の間で、環境の劣化に対する問題意識が芽生え、これらに触発された田園都市論やグリーンベルト構想が持ち上がります。

グリーンベルトとは、都市の無秩序な開発と拡大を阻止することを目的に、「街の周りを緑地帯で覆う」という考え方で、1938年にグリーンベルト法が可決。1944年には、大ロンドン計画に基づいた土地開発がスタートしました。

現在このグリーンベルトは、ロンドン以外の都市にも複数採用されています。

このように、イギリスでは産業と自然、住環境とのバランスを考慮した開発が、早くから行われてきました。これが、ロンドン不動産の需要が高くても、供給を増やせない理由です。

さらに、イギリスでは景観等の問題から、基本的に建物を上に延ばすことができない上に、年代物の建物は保護対象になっている場合があります。

つまり土地がなく、需要に応じた供給を増やせないということが、ロンドンの不動産価格が一定で落ちない理由なのです。

Next: 理由はもう1つ? なぜロンドン不動産では需要が供給を上回っているのか



なぜロンドン不動産では需要が供給を上回っているのか

織田:もう1つ、ロンドン不動産の需要が供給を上回っている理由として、2016年以来のポンド安が挙げられます。不動産価格自体は下落していませんが、通貨安になってくれたおかげで、特に海外の投資家にとっては、非常に購入しやすい状況が生まれました。

たとえば、イギリスの国民投票でブレグジットが決まる1年前の1ポンドは190円前後でした。それが、いまだに140円前後で推移しています。EU離脱が不安要素と見なされ、依然、通貨は最安値圏にあります。

これら、マーケットの底堅い動き、一次的に値が落ちても回復が早いというのが、ロンドン不動産の強さなのです。

俣野:2060年まで人口増が見込まれているイギリス(経済産業省『世界経済の動向』)は、何より不動産に対する実需があるという点で強いですよね。

織田:おっしゃる通りです。

結論:過剰な供給がされている物件には近づかない

3.「不動産投資=インカム・ゲイン」とは限らない

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俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2020年3月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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