マネーボイス メニュー

新型肺炎で世界市場は大混乱。急所「信用市場の悪化」でさらなる波乱が訪れる=馬渕治好

新型肺炎は金融市場でも暴れているが、先週末にかけて最も注目されたのは「信用市場の悪化」だ。内外株式を含めた世界市場は、一段の波乱に陥ると懸念される。(『馬渕治好の週次メモ「時の花」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週次メモ「時の花」』2020年3月9日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

今週(2020/3/9~3/13)の日経平均予想: 1万8,500~2万500円

(先週の予想:2万,500~2万2,500円/実績値:2万,613.91~2万1,719.78円)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

先週末にかけて、最も注目された出来事は、信用市場(借り手の信用度に依存する、融資や債券発行の市場)の悪化であった。

米国債券市場では、投資家がリスクを避けようとの姿勢を強め、BBB格債(投資適格債のなかで、最も格付けが低い債券)の利回りと、米国国債の利回りの差(その差が広がるほど、社債等が売られていることになる)は、長い間1.3%台で推移したが、2/28(金)には1.65%、3/6(金)には1.87%と、急速に拡大している。

ジャンク債(BB格以下の、投資適格債に分類されない、格付けが低い債券)と国債の利回り格差は、同様にしばらく4.0%前後で動いていたものの、2/28(金)には5.04%、3/6(金)には5.64%と、やはり大きく拡大した。

米国企業は社債発行で得た資金を自社株買いに充ててきたため、社債発行が滞ることにより、米国株価への悪影響も生じるだろう。

また、3/5(木)には臨時のOPEC(石油輸出国機構)会合が開催され、3/6(金)にはロシアなどOPEC非加盟国を交えたOPECプラス会合が行なわれた。ここで大幅な減産が打ち出されて原油価格が上昇すると、世界の景気が悪いのにエネルギーコストが上がる形となり、日本など原油消費国経済にとって、好ましくない、と警戒していた。

しかし実際には、想定外に減産交渉が決裂し、WTI原油先物価格は、先週末(3/6、金)は1バレル当たり41ドル台まで下落した。加えてサウジアラビアは、自国の生産シェア拡大のため、かえって増産を表明し、そのため週明け月曜日(3/9)のWTI先物価格は33ドル前後まで急落している。

WTI原油先物 日足(SBI証券提供)

こうした産油国同士のたたき合いが進み、産油国の財政が悪化して、そうした諸国の対外債務に対する懸念が広がる恐れが強まった。また、原油価格の下落は米国内のシェール業者の経営破綻の懸念を強めかねない。シェール業者は資金繰りをジャンク債の発行に頼っており、上述の米国内の社債市場の混乱に、拍車がかかる展開が、否定できない。

さらに3/7(土)には、産油国ではないが、レバノンが国債の支払いを延期する旨(債務不履行、いわゆるデフォルト)を発表した。レバノン国債のデフォルトそのものが単独で、世界市場を揺らすとは考えにくいが、「他の新興諸国の国債も、もしかすると危ないのではないか」という懸念を広げると、世界市場全般の波乱要因となるだろう。

こうした世界的な信用市場の混乱が上乗せされて、内外株式を含めた世界市場は、一段の波乱に陥ると懸念される。

Next: ついにコロナショックは為替市場にも。すでに波乱のドル円はどうなる?



今週(2020/3/9〜3/13)の米ドル円相場予想: 101.50〜105.00円

(先週の予想:107.00〜110.50円、実績値:104.99〜108.58円)

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

今週も、世界的に株式市場、債券市場、国際商品市場が波乱に見舞われそうななか、復活した「リスク回避のための円高」商状が、外国為替市場では一段と進むと懸念される。

特にこれまで、米国経済の安定性と米株価の堅調推移から選好されてきた米ドルが、その反動もあって対円で下落基調を強めかねない。

ただ、円高と世界的な信用市場の混乱が重なる状況(国内企業も足元の混乱で資金繰りが悪化しかねない)は、まさに中央銀行である日銀の出番であり(日銀は株価下落に対処する組織ではない)、打つ手が限られながらも、3/18(水)〜3/19(木)の金融政策決定会合では、「何らかの手」を打ち出さざるを得ないだろう(だから株価や円相場が一気に反転する、というわけではなかろうが)。

続きはご購読ください。初月無料です

【関連】新型肺炎で年金財源が枯渇する?「決定的な分岐点」を迎えた日本の株式市場=近藤駿介

【関連】副業しないと貧困へ。日本型雇用の終焉でむしろ急成長する4分野12企業とは=矢野恵太

image by:Tomoharu photography / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週次メモ「時の花」』2020年3月9日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目もすぐ読めます。

【関連】新型肺炎でついに世界同時不況へ。米中韓を襲う早期回復不能のマイナス成長地獄=勝又壽良

【関連】新型コロナ対策、なぜ子どもだけ?まさか年金・医療費削減のために高齢者を見殺しか=今市太郎

馬渕治好の週次メモ「時の花」』(2020年3月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

馬渕治好の週次メモ「時の花」

[月額1,650円(税込) 毎週月曜日]
毎週の、日経平均株価と米ドル円相場の見通しを、数値を挙げて解説します。前週の見通しと実際の相場を比較し、予想が当たったか外れたかが、わかるようにしています。注目される図表を取り上げる、「今週の一枚」のコーナーもあります。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。