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9月入学で加速する格差社会。「家庭に丸投げ」の公立学校が教育弱者を生む=午堂登紀雄

検討されている9月入学はデメリットの方が大きいでしょう。入学時期にかかわらず、休校が長引けば長引くほど、日本の格差は拡大します。学校が格差を広げる温床になりかねないのです。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)

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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。

「9月入学」がもたらす社会的混乱

新型コロナウイルスの影響による学校休校が長引いているため、新学期を9月にする案が浮上しています。先進国を中心に諸外国の多くは9月入学なので、足並みがそろって国益にかなうとの論調もあります。

もし今年度だけ9月に変更すれば、来年3月までに5か月分も遅れた学習進度を取り返すのはほぼ不可能なので、ゆとり世代ならぬ「コロナ世代」としていろいろ不都合が出てきます。

なので、恒久的な制度として9月を新年度としてスタートし、9月入学・8月卒業が検討されているのです。

しかし、これには大きな課題があります。

なぜなら、学生が8月卒業となれば、企業や官公庁への入社時期も9月に揃える必要があるなど、社会体制全体の変革を伴うからです。

事業年度の変更を余儀なくされるでしょうし、企業の中にも8月末に決算期を変更するところも出てきます。これは株式市場に少なからず混乱を与えるかもしれません。

ほとんどの学校は「何もせず放置」状態

受験や就職活動のサイクルもすべて変わるなど社会実験としては壮大過ぎて、メリットよりもデメリットの方が大きくなりそうです(海外と足並みを揃えたところで、そもそもそんなに留学する人がいるのか?という疑問が湧きます)。

それはともかく、入学時期がどうなるかとは関係なく、登校開始時期を後ろにずらせばずらすほど「格差」が広がる懸念が大きくなっています。

なぜなら公立校を中心に、ほとんどの学校で「ほぼ何もせず放置状態」「ただ宿題を与えるだけで何のフォローもなし」状態が続いているからです。

なぜオンライン教育は進まない?

3月から休校が始まり2か月以上たっても、未だにオンライン授業やオンラインチャットなどによるケアや交流が行われないのは、私がヒアリングしただけでも次のような理由が挙げられます。

「先生がどうやっていいかわからない(スキルや設備がない)」
「リアルにこだわり強硬に反対する教師がいる」
「教育委員会が情報漏洩などセキュリティのハードルを上げている」
「環境が整っていない家庭もあるため不平等になるから」
「やる気やスキルがある先生がいても、そのクラスだけスタンドプレーに走れない」

元々、学校現場はデジタル化が遅れており、ITリテラシーを持つ人材も少ない。そこに加え、「生徒児童の不公平になるくらいなら最初からやらない」という極端な平等主義により、教育は停滞しているのが現状です。

教育委員会も校長も「できる人、できるところからとりあえず始めてみる」「スキルのある生徒やその保護者を巻き込んで試行錯誤してみる」「完璧じゃなくていいから、まず動いてみる」という発想がありません。

それが「放置」「生徒任せ・家庭任せ」を助長しているわけです。

むろん、個々の学校や個々の先生たちの中には、率先して取り組み努力している人たちもいますが、やはり少数派です。

Next: すると「やる子はやる」一方で、「やらない子はやらない」わけで、その差――



放置すれば格差は拡大する

すると「やる子はやる」一方で、「やらない子はやらない」わけで、その差はどんどん拡大していきます。

さらに、休校が続きフォローもない、友達ともなかなか会えないとすれば、他人の努力量は目に見えないわけですから、自分の勉強が進んでいるのか遅れているのか、あるいは平均レベルの理解が得られているのかどうかすらわかりません。

受験を控えていない家庭では特に危機感も持てないでしょうから、ゲームやテレビばかりに興じ、登校してみたら圧倒的な差が付いているかもしれない。

私の周囲でも、「ゲームばかりしている」「夜更かしして朝が起きられないなど生活リズムが崩れている」という親の嘆きの声が聞こえています。

夏休みを削減してキャッチアップに充てようという動きもあるようですが、もしその学年で習得すべき内容をスキップして進級することになれば、次の学年に上がったら「勉強がわからない」ということになります。

すると、「だから面白くない」「だからますます勉強嫌いになる」という負のスパイラルに陥る危険性があります。

特に算数・数学など積み上げ型の教科は、前の学年で習ったことをベースにして難易度の高い内容になっていきますから、途中でつまづくとそこから全く理解できなくなってしまいます。

それは結果的に進学の選択肢を狭めてしまうことにもつながります。

本来、格差をつくらない義務教育のはずが、これではますます格差を助長します。つまり学校が格差を広げる温床になりかねないのです。

親の情報格差が子の教育格差を生む

私自身は、親は受験システムの手先になってはいけない、家庭は学校では鍛えられない能力を養うところだ、親は学力や偏差値とは違うモノサシを持つ必要がある、というのが持論ではあります。ですが、学校が放置プレイなのに親も放置していては、それこそコロナ世代まっしぐら。

そこで教育格差を広げないために、私の周りの保護者がやっている習慣付けと、私自身の考えをご紹介します。

まず、もし自宅にネット環境がなければこれを機会に導入する。ネットにつながるかどうかは情報アクセスに圧倒的な差を生みますから、これは必要な教育投資・情報投資です。

そして、保護者がコンテンツを探して子どもに提案してみる。子の年齢にもよりますが、親の情報格差がそのまま子の教育格差につながりかねませんから、親が率先して探す必要があります。

Next: また、有料コンテンツだからといって敬遠しないことも大切です。無料の――



子が自発的にやるなら有料でもOK

また、有料コンテンツだからといって敬遠しないことも大切です。

ややもすると無料のものだけを選びがちですが、子どもが興味を持つようなクオリティの高いコンテンツであるなら、この際そんなことは言っていられません。

なぜなら、親による強制では学習効果は得られないからです。

たとえばゲームアプリでも、漢字を組み合わせて解いたり、計数感覚が必要なパズルゲームがありますし、知能検査のような空間認識能力や推理力を養うゲームもあります。

タブレット端末を使った通信講座の中には、正解したときの盛り上げ方が大げさなものがあり、これはこれでうれしくなります。

イヤイヤやらされる勉強はそもそも面白くないし身にもつかない。子どもが「やりたい」「楽しい」と思うコンテンツでなければ、この長い休校を乗り切れないのです。

ウチの長男(年長)も「だって面白くないもん!」「やりたくないったらやりたくない!」「いやだいやだ!」などとまったく言うことを聞いてくれません。

なので、知育アプリを探しては「これはどう?」「これは?」と提案しつつ、書店に行っては「どれか読みたい本を選んできて」と本人の自主性に任せています。

「ごほうび」でゲーム化

もし親自身もリモートワークで家にいるなら、親子で一緒に机に座るようにしましょう。そうやって時間を揃えて親は仕事、子は勉強という規則正しい習慣をつけることです。

自宅が集中できなければ、(このご時世では難しいですが)ファミレスやカフェでもアリです。最近は無料Wifiを提供している店も多いですから、これなら自宅にネット環境がなくても大丈夫です。

子どもを家に残して親は仕事に出ているという場合、子どもだけで勉強習慣を持たせることはかなり難しい(というかほぼ無理)ことです。

そこでちょっとお金はかかりますが、たとえばオンライン家庭教師をつけるという方法があります。

それはさすがに経済的にも難しいという場合、「ごぼうび」を設定してゲーム感覚でやってもらうのもひとつの手です。

私個人としては勉強と引き換えに報酬を与えるというのは懐疑的ですが(報酬がなければ勉強しない、勉強は報酬を得るための苦行というのは本末転倒なので)、親が見てあげられないならやむを得ません。

「ドリル1ページごとに10ポイント。100ポイントで〇〇円のお小遣い(あるいはゲーム〇〇時間やってよい)」とか。

タブレット教材ならもっと簡単に進捗確認ができますし、兄弟姉妹がいれば競わせてもよいでしょう。

Next: なかなか学習習慣がつかない子でも、「この教科・分野だけは好き」という――



子どもが興味関心を持つ1教科だけ徹底的に先行させる

なかなか学習習慣がつかない子でも、「この教科・分野だけは好き」というものがあれば見っけものです。

それを徹底的に先行させるのです。

たとえば英語が好き(あるいは興味がある)なら、進度や学年の学習範囲に関係なく徹底的にさせる。歴史好きなら、市販の歴史書(マンガもOK)を買い与えて読みふけっても良いとする。

学校が始まって他の教科が遅れていても、掘り下げてきたそこが自信となります。先行している分、余裕が生まれますから、他の弱い分野のキャッチアップに時間を回せます。

結果よりも努力を誉める

自宅学習で大事なことのひとつは、たとえば「今日は〇〇ページも進んだの?すごくがんばったね!」などとちょっと大げさでも、親は子の努力をほめることです。

むろんドリルが全問正解できたといったことは子どもにとってもうれしいことなので、それをほめることも大切です。

しかし結果だけを褒めると、高得点をとればOK、でなければNGということになりますから、結果が出ないとがっくり挫折し、結果が出せそうなことしかやらなくなるかもしれません。

しかし努力を褒められれば、子は結果よりもがんばることが大事なんだと悟り、次にどんな場面に直面しても努力を見せるようになる期待があります。

叱らない

これも結構大事なことではありますが、子どもが勉強をサボったからといって、親はむやみに叱らないことです。

子どもはやりたくないからやらないわけで、それを強制させられれば、「勉強とはイヤなもの、つらいもの」という意識を持ってしまいます。

大人だって上司から「なんでやらないんだ」「サボるな」などと言われたら気分が悪いでしょう。

もしかしたら、「わからないからやらない」だけで、そこをサポートしてあげたら解決するかもしれません。計画を立てた方がやりやすい子もいるかもしれません。何か具体的な目標があったほうがやる気になる子もいるかもしれません。

なので仮に宿題や勉強をしてなくても、親は叱るのではなく、子のやりたくない理由を排除する手伝いをすることです。

Next: 学校だけが自分らしく振舞える場所だったのに、それを奪われている――



試行錯誤が進化を生む

学校だけが自分らしく振舞える場所だったのに、それを奪われている。部活だけが自分が輝けるところだったのに、春の選抜も全中もインターハイも中止となり活躍の場を奪われた。

家庭環境によっては、大きな孤独感に襲われウツ状態の子も少なくないと聞きます。友達とつながれない、先生とつながれない、でも家庭に自分の居場所がない。

親自身もストレスを抱え、それが子へのDVや虐待、家出や援助交際といった問題に発展するケースもあります。

先ほど「教育関係者が格差を生み出している」と書きましたが、それぐらいの危機感を抱き、意識を変えてITを活用し、試行錯誤に取り組んで欲しいと思います。

失敗を恐れれば挑戦できない。それでは進化しない。平等を重んじれば身動きが取れず、それは新たな不公平を生む。それは誰にとっても不幸なことでしょう。

そろそろ休校が解除になりそうなので、今からやっても無意味?

いえいえ、オンライン教育が浸透すれば、先生一人がしゃべって生徒児童は聞くだけという無味乾燥な授業はオンラインに代替され、「生身の人間同士がそこに集まるからこそ意味のある授業作り」が可能となるのですから。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年5月15日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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