新型コロナウイルスの拡大が一段落し、経済活動を徐々に再開させる国が増えてきた。そこで注目されているのがブロックチェーンを使ったあらゆるネットワーク。特に、映画業界においてステイホームで需要が著しく伸びた動画配信サービスや、さらに求められる著作権の管理について考察していく。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)
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中国におけるブロックチェーンの発展
今回は、映画産業におけるブロックチェーン導入の概要を紹介する。また後半では、この分野ですでに稼働しているプロジェクトを中心に紹介する。
その前に、中国におけるブロックチェーンの発展について、ひとこと言及しておきたい。
新型コロナウイルスの蔓延がやっと落ち着き、行動規制を緩和し、経済活動を再開する国や地域が増えてきた。そうした状況で、予想を越えた経済の回復が見られる地域もある。
新型コロナウイルスの拡大にもかかわらず全米50州で経済活動を部分的に再開させたアメリカでは、7月期から9月期の第3四半期、ならびに次の第4四半期では、それぞれプラス20%の急速なGDPの回復があるとの予測もある。
そうしたなか、急速な回復を示しているのが、新型コロナウイルスの蔓延を最も早く押さえ込んだ中国である。製造業は、すでに8割が回復している。これからアメリカ経済が回復すると、さらに急速な回復が見込まれる。
そうした状況で、経済成長の新たなけん引力として期待されているのが、ブロックチェーンである。
すでに世界最初の法定デジタル通貨である「デジタル人民元」や、新型コロナウイルスの感染経路を特定するために人々の行動をブロックチェーンに記録するシステムなど、行政や経済を含む社会のあらゆる領域でブロックチェーンが適用されはじめている。
それに合わせて、民間、国営をを含め様々なプロジェクトが立ち上がっている。
中国の「ブロックチェーン・サービス・ネットワーク」
まだ新型コロナウイルスの蔓延が続いていた4月16日、中国政府は「ブロックチェーン・サービス・ネットワーク(BSN)」というプロジェクトを立ち上げた。
これは、低価格でブロックチェーンの導入支援を行うプロジェクトだ。
それは、積み木で遊ぶような感覚で、あらゆるタイプのサービスにブロックチェーンの導入ができるようにするという。企業のほか、ブロックチェーンの導入に関心のある個人にも支援を提供する。
「ブロックチェーン・サービス・ネットワーク」は、国営のプロジェクトだ。そのため、支援を受けるための料金は安い。1年間の継続支援の提供でわずか300ドルだ。日本円では3万円ちょっとだ。
このようなプロジェクトの立ち上げで、中国におけるブロックチェーンの適用は急速に進み、経済の復興を後押しする役割を果たすことだろう。注目したい。
映画産業におけるブロックチェーン
それでは今回のメインテーマを書く。映画産業におけるブロックチェーンの適用についてだ。
世界各地でロックダウンや社会的活動の自粛要請が相次ぐなか、日本をはじめ各国の経済は大きく落ち込んだ。
しかし、そのようななかでも成長したのが、「NetFlix」や「Hulu」などのオンラインの映画配信サービスだ。これらのオンラインサービスのプラットフォームでは独自の映画も製作し、映画産業に新しい風が吹いている。
そうしたなか、オンライン配信との高い親和性で注目されているのが、ブロックチェーンの導入だ。いまこの分野では、次のような4つの方面でブロックチェーンの導入が期待されている。
Next: 過去10年間で映画産業は大きく変貌した。「NetFlix」「Hulu」「amazon」――
1)販売および流通ネットワークの役割
過去10年間で映画産業は大きく変貌した。「NetFlix」「Hulu」「amazon」「Apple」などのオンライン映画配信のプラットフォームが台頭し、映画が視聴される方法は劇的に変化した。
そしてこの傾向は、新型コロナウイルスのパンデミックでロックダウンや行動規制が世界的に導入された状況で、映画のオンライン配信は自宅に巣籠もりした人々にとって、格好のエンターテイメントになった。
経済が落ち込むなかでも、この分野の成長は著しい。
しかし、現在の映画オンラインサービスは中央のサーバーが集中管理する中央集権的なシステムが一般的だ。そのため、映画制作者とオンライン配信サービスとの間では、利益分配に関する多くの面倒なプロセスがあり、時間がかかる。
もし、こうした状況にブロックチェーンを導入できれば、利益配分のプロセスは大幅に短縮される。
導入が期待されるのは、プログラムの自動実行機能を有するイーサリアムのブロックチェーン、スマート・コントラクトである。映画制作者とオンライン配信サービスとの関係にスマート・コントラクトを導入すると、映画の配信で発生した利益の配分契約は自動実行され、既存の繁雑なプロセスは簡素化される。これによるコストカットの効果は大きいので、それを視聴者に還元することができる。
2)著作権と所有権の管理
映画業界にとって、著作権の保護は複雑でコストのかかる仕事だ。著作権侵害に対する保険は、映画スタジオの主要な費用になっている。
一方、小規模で独立した製作者と配信業者にとって、訴訟と罰金の発生は彼らの存在を脅かす主要な問題となる。さらに、高品質のオリジナルストーリーのアイデアを持つコンテンツ作成者や、興行収入を大きく伸ばす独立した映画を制作しているコンテンツ作成者は、著作権が侵害される恐れが絶えずある。
ブロックチェーンを導入すると、アイデア、ストーリー、脚本、キャラクターなどの取引の記録を作成することで、著作権侵害に対処できる。
ストーリーのアイデアや台本の作成者は、コピーをブロックチェーンに登録し、著作権を登録する。また、制作に関心のあるスタジオへの権利の譲渡、そしてオンライン配信サービスへのタイトルの配信権の譲渡などのやり取りも、ブロックチェーンに記録される。
さらに、契約内容を自動実行できるスマート・コントラクトを使用すると、テレビや航空会社への配給、商品のライセンスの管理、国際リリースなどへの権利の割り当てをマネージし、契約内容を自動実行できる。
Next: オンラインでの映画の違法ダウンロードは大幅に増加する傾向にある。この――
3)デジタル著作権侵害との戦い
コンテンツを保護し、違法な配信を追跡する機能が改善されているにもかかわらず、オンラインでの映画の違法ダウンロードは大幅に増加する傾向にある。
このような違法ダウンロードを元にして販売される海賊版は、映画スタジオにとって大きな損失になる。しかし、映画の収益や制作における権利を保護するのに十分な力のないコンテンツ作成者やスタジオもある。
ブロックチェーンは、アイデアや作品の記録を作成することにより、この問題に対処できる。
ブロックチェーンは、スマート・コントラクトを利用して、正当な映画のアップロード、スクリーニング、ストリーミングを行う。ブロックチェーンのシステムが記録し、それを通して配信されたコンテンツのみが正当な作品であると認定される。
そのような状態であれば、ブロックチェーンに記録されていないコンテンツの存在がオンラインで発見された場合は、コンテンツ所有者や検索エンジン、またサイト管理者、インターネットプロバイダーに通知し、アクセスできないようにすることができる。
4)小規模の製作者に平等な機会を与える
映画制作の分野では、独立系の小規模なプロダクションが製作した作品が注目されることは滅多にない。
それというのも、映画館やオンライン映画配信サービスへの作品の配給は、大手の配給会社が独占しているからである。こうした会社が小規模の独立系のプロダクションの作品を配給することはまずないといってよい。
その結果、そうした作品はユーチューブなどの動画配信サービスで配信されることが多く、そうした方法では期待するような利益を生み出すことはない。
そうした状況で、作品をブロックチェーンに登録し、視聴者への課金をプログラムの自動実行機能を持つスマート・コントラクトで処理できれば、ブロックチェーンのプラットフォームから独立系の作品を視聴者に直接配信することができる。
さらに、映画プロダクションへの投資の募集も同じブロックチェーンに記録し、管理することができる。
このように、映画産業におけるブロックチェーンの導入は、グローバルな大手の映画製作スタジオから小規模な独立したプロデューサー、さらに伝統的な配給業者、製作者からコンテンツのストリーミング配信のプラットフォームまで、映画業界のすべての関係者に大きな機会をもたらす可能性がある。
小規模な独立系の映画プロダクションが製作した映画を配信するプロジェクト
分散型のエンターテイメント産業を構築するプロジェクト
ストリーミング配信の新しいプラットフォーム
独立系映画製作者のためのブロックチェーンのシステム
映画のオンライン配信の統合的なプラットフォーム
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『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2020年6月9日号より一部抜粋
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による
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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。