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「本当にきつい。生活も、精神も…」疲弊する医療従事者の声を聞かぬ政府の愚

新型コロナウイルスの影響から、病院の経営が厳しくなってきている。一般社団法人「日本病院会」、公益社団法人「全日本病院協会」、一般社団法人「日本医療法人協会」が発表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査」の追加報告によると、全国の病院のうち2/3の病院が赤字に転落していることがわかった。医療現場がこうした事態であるにも関わらず、政府が総事業費約1兆7,000億円を投入して強行するのは、来週7月22日からスタートする「Go To キャンペーン」だ。

東京のコロナ受け入れ病院は約9割が赤字

コロナウイルスの陽性患者を受け入れた病院の2020年4月の赤字割合は78.2%で、2019年4月の赤字割合54.6%と比較すると23.6%も増加している。特に厳しい状況に置かれているのが、連日感染者数が増え続けている「東京」の病院だ。赤字割合は新型コロナウイルスの陽性患者を受け入れていない病院で68.6%(昨年同月比21.5%増)、受け入れている病院ではなんと89.2%(昨年同月比32.4%増)にものぼる。

なぜ前年に比べて経営が厳しくなったのだろうか。考えられるのは、一般患者の新型コロナウイルス感染への恐れによる「受診控え」だ。以前までは体調を崩したらすぐに病院で薬を処方してもらっていた私の友人も、「対策は徹底されていると思うが、やはり少し怖い。市販の薬で効果があったので、病院には行かない」と話していた。

「ボーナスカット」の医療現場も…

こうした「受診控え」が増え、経営が厳しくなると、非常勤医師の雇い止めが起きたり、給与・ボーナスが下がる。日本医療労働組合連合会の集計によると、338機関のうち34%にものぼる115機関で、夏のボーナスの金額が大幅に下げられていたことがわかった。回答した機関のうち2つの機関はボーナスを全額カットする。

全額カットされる病院のひとつが、「東京女子医科大学病院」だ。同病院の労働組合のHPには、「抗議文」が掲載されており、これについて全国の組合員からも激励のメッセージが寄せられた。職員からは「教職員はボランティアですか」「職員全員が辞めても仕方ない状況である」「感染リスクを負いながら働いていました。ここまで職員を大切にしないのかと驚きました」など、怒りの声があがっている。

最前線で自らの危険を顧みず、懸命に尽くしてくれている医療従事者の方々の努力を踏みにじるような事態。職員からの訴えにもあったように「ボランティア」ではない。医療従事者の方々にも、生活がある。善意に胡座をかくようなことは、絶対にあってはならない。

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総事業費1兆7000億円のキャンペーン

医療現場がこうした事態であるにも関わらず、政府が総事業費約1兆7000億円(うち事務委託費は最大約3000億円)を投入するのは、来週7月22日からスタートする「Go To キャンペーン」だ。NHKHUFF POSTなどによると、西村経済再生担当大臣は、感染が広がっているなかでの同キャンペーンについて「注意をしながら進めていかなければなりません」とコメントした。西村氏は同時に、感染者が増加傾向にあるとして、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の4都県に感染状況次第で休業要請を求める考えも示したという。

国と都のズレ

感染経路不明の割合が増え、全国でも拡大しているように見える。特に東京都では、9日から12日まで4日連続で感染者数が200人を超えている。不要不急な他県への移動については4日、東京都の小池百合子都知事が「ご遠慮いただきたい」と述べたばかり。この東京都と政府のズレについては、後日野党が追及しており、西村氏は「言っていることに差はない。今後調整も図りたい」と語っている。しかしロイターによると、都内感染者の増加について「東京の問題」と発言した菅長官に対して、小池都知事が「Go To キャンペーンとの整合性をどうとっていくのか、無症状の方も出ているなかでどう仕切りをつけていくのかはむしろ国の問題」と述べており、どうも連携が取れていないように思える。

このような状況のなか、感染者を増やし、医療現場の負担をさらに重くする可能性を孕んだキャンペーンを優先すべきなのだろうか。医療従事者への慰労金は最大で20万円。これでは、割に合わない。医療従事者の心身を守るためにも、医療現場を守るためにも、いま最優先で税金を投入すべきところがどこなのか、改めて考えてほしいと思ってしまうのは私だけだろうか。

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Source:「日本病院会東京女子医科大学病院労働組合NHKHUFF POSTロイター
Image by:Fiers / Shutterstock.com

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