東京発の感染拡大第2波が懸念されている今、政府は旅行推進の「GoToキャンペーン」を前倒しで実施します。全国に感染が拡大すれば株価再暴落は避けられません。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2020年7月13日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
コロナ死のリスクが高まっている
都知事選が終了したあたりからそれまで徐々に多くなっていた東京都内の新型コロナの感染者数が大きく上昇しはじめ、すでに9日は224人、10日は243人、11日は206人、12日は206人とコンスタントに200名を超える感染者が出始めています。
新宿など夜の街にターゲットを絞り、これまで以上にPCR検査を実施し始めているわけですから、それまでの感染者の推移と単純比較するわけにはいきません。
それでも、PCR検査の陽性率は東京ではすでに5.8%を上回りはじめており、感染者数は他国と比べてかなり少なくても。この陽性率は異常に高い水準となっています。
また感染者数に対する死亡者数も4%を超えており、一般的な季節性インフルエンザの感染死亡率0.1%などと比べれば、各段に死亡リスクが高まっていることがわかります。
100年前に大流行して2年ほどで自然消滅したスペイン風邪でさえも感染者の死亡率は2.5%ですから、この新型ウイルスはすっかりその感染者報道には多くの国民が飽き飽きして反応も薄くなってきていますが、生命の危機という視点で見ますと、なんら安全性は高まっていないことがわかります。
対策不十分のまま放置プレー?
どうもウイルスが変異して「東京タイプ」と言われるような新種のコロナウイルスが新宿をエピセンターとして全国に再拡散しはじめているのではないかと、誰しもが疑い始めている状況です。
西村経済再生担当相は、記者会見でも、PCR検査数の増加を考慮して感染者数増加を評価する必要があるとし、「4月上旬の緊急事態宣言を出した時とは状況が違う」といった説明を繰り返す始末。
事実上、何の対策も打たずに放置プレーをかますつもりであることを鮮明にしています。
それどころか、今月10日からはイベント開催の人数制限を緩和し、これまで屋内では収容人数の50%以内、屋外でも十分な間隔を取って上限1,000人を1つの基準としてきたものを、10日以降はなんの決定的な判断基準もないままに5,000人まで可能しています。
そこに上乗せのように実施しようとしているのがまたしても経産省主導のGO TOキャンペーンの早期実施の問題です。
Next: そもそも「GO TO キャンペーン」とは、感染症流行が収束した後、国内に――
そもそも「GO TO キャンペーン」とは……
もともとこのキャンペーンは感染症流行が収束した後、国内における人の流れと街のにぎわいを創り出し、地域を再活性化することを目的として予算計上されたもの。
観光庁の「Go To トラベル事業」に関する発表資料から抜粋しますと、国内旅行を対象に旅行代金の半分の相当額を支援し、その支援額のうち7割は旅行代金の割引に、3割は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与されることになるようです。
※参考:https://www.mlit.go.jp/kankocho/page01_000637.html
「海の日」を含む7月の4連休前に旅行代金の割引のみ先行的に開始し、連休中の旅行需要を喚起するのが大きな狙いのです。
しかし、新型コロナ感染が収束したわけでもないままに、なぜ7月22日から前倒しで実施する必要があるのか。まったくよくわからない状況です。
また経産省主導の悪政か
今年は夏のオリンピックも延期となり、インバウンド消費もほとんど見込めないことから、観光業界が瀕死の状況であることはわかります。
しかしながら、足元でみるみる増加する東京の感染者数の拡大、東京発の変異ウイルスの可能性などを考えれば、このタイミングに前倒しでこうしたウイルス拡散キャンペーンになりかねないものを積極的に開始するという発想はまったく理解できません。
このキャンペーンの詳細を調べてみますと、安倍政権が経産省主導政権と揶揄されるゆえんとなっている、安倍首相の言うところの“天才今井ちゃん”の異名をもつ首相補佐官今井尚哉氏と、その仲間で菊池桃子さんの再婚相手として一躍有名になった経産省経済産業政策局長の新原浩朗氏の肝入りであるというのですから、驚かされます。
ここまで、経産省が背後で操る形で安倍政権が行った新型コロナの対策・政策は、ことごとくろくな成果が出ていません。そのうえ、さらにろくでもないキャンペーンを新たに強硬実施するというですから、呆れること至極です。
Next: 足元の状況で22日からこのキャンペーンを実施して、東京からの新型ウイル――
新型コロナ収束前の GO TO トラベルは「GO TO HELLキャンペーン」
足元の状況で22日からこのキャンペーンを実施して、東京からの新型ウイルスの拡散が爆発・蔓延して抑止できない事態に陥った場合、いった誰がどう責任を取ることになるのでしょうか。
安倍首相は前法務大臣の河合克行氏とその妻の安里氏の公選法違反の逮捕でも、「責任を痛感し国民の皆様にお詫び」などと平気で口にしていますが、なんら責任を取るそぶりも見せてはいません。
河合夫婦が捕まろうが議員辞職に追い込まれようが、確かに国民に生命の危機は訪れません。
しかしこの新型コロナに関しては、国がその対策の実施を誤れば、非常に命を落とすリスクが高いだけに、今の政権と政府の説明ではまったく納得できないのが実情です。
そもそも主要な観光地では今年の花火大会は全面中止、海開き・山開きも行わないところが多数で、いったいこの場に及んでどこに行けばいいのか?という、大きな疑問も湧いてきます。
しかも、これで東京で急上昇しているウイルス感染が全国的な問題へとつながった場合、GO TO キャンペーンは地獄へ直行する「GO TO HELLキャンペーン」になりかねない状況になりつつあります。
旅館やホテル、交通機関などにとっては夏に顧客が訪れるのは非常にありがたいことかも知れませんが、地方で暮らす人々にとっては、決して喜ばしいものではないでしょう。
すでにネット上では「東京から地方に来ないで欲しい」といったネガティブな発言も目立ち始めています。
世界的にもコロナ対策と経済は両立しない。日本は中でも最悪の政策実施か
世界各国ともに、新型コロナの封じ込めと経済の再開を両立させることが大きな課題になっています。
そして、ほとんどの国が長期間に渡って国民をうまく制御することができない状況に陥っているのは事実です。安倍政権がほとんど思考停止のお手上げ状態になるのも、相対的に見れば仕方ないのかも知れません。
それにしても、こうした感染拡大の可能性が極めて高い不思議なキャンペーンを、国が、しかも経済の本質を考えなくてはならない経済産業省が旗振りして、7月の連休に合わせてさっさと実施してしまうという稚拙さ・拙速さは、他国に類を見ないものがあります。
Next: 金融市場では日米ともに新型コロナ禍でも株価が大きく上昇し、すでにここ――
市場は二番底を一切口にしなくなったが、暴落の引き金はまだこれから
金融市場では、日米ともに新型コロナ禍でも株価が大きく上昇し、すでにここからの相場の再悪化・二番底の示現などを口にするものは誰もいなくなっているように見えます。
しかし、国のこうした対応を見ていますと、ここから国内で新型ウイルスがさらにまん延して収拾の手立てを失う状況に陥る可能性は相当高そうで、株や為替でいえば、これから二番底の到来に備える必要があるのはほぼ間違いなさそうです。
1929年の世界大恐慌と足もとの相場が非常に酷似していると言われはじめてから久しいですが、29年の場合、政府が様々な対策を打って暴落から5か月あまりは上昇軌道にあった相場は、その後に大きく崩れ始め、二番底どころか大底をつけに行く動きをとったことは皆さまよくご存じの通り。
実態経済ならびに企業収益と株価との関係は、もはやワニが口を開けたように大幅に乖離していますから、サヤ寄せによる修正があるとすれば、どう考えても株価のほうに大きな下落が待っていることはほぼ間違いなさそうな状況です。
これが7月末なのか8月中なのか9月以降なのかはまだだれにも判りませんが、下手をすればこの政権がやらかす「GO TO キャンペーン」がはからずも暴落のスイッチになりかねないことだけは十分に注意していきたいところです。
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