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楽天ペイ×Suicaを使うのが正解?Suicaが第2次スマホ決済戦争のキーマンに=岩田昭男

スマホ決済戦争は第2ステージに入りました。中でも「楽天ペイ×Suica」陣営が強力です。Suicaが圧倒的に有利な立場と思いきや、実はそうでもないようです。Suicaにも意外な弱みがあったのです。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

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プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。

グループ化を進めるキャリア各社

ポイント還元とキャンペーンを競い合って消耗戦を繰り広げてきたQRコード決済陣営(キャリア)が、新たな仲間を加えて「グループ化」を目指す動きを見せている。

例えば、NTTドコモは、メルカリ・Amazonとそれぞれ組んで包括的な提携活動に入った。

ソフトバンクは、みずほ銀行と本格的な提携を結び、PayPayに加えてLINE Payも手に入れて手薄な女性層の補強を図ろうとしている。

後発のauは、業界2番手の共通ポイント「Pontaポイント」と組んでグループ内のポイントサービスの大刷新を図るなど、各社が激しい動きを見せている。

これらはみな「どれだけ日常的に使えるサービスを用意できるか」を競うものであり、これまでの「ポイント至上主義」から一歩進んだ戦略を打ち出したということができる。

その意味では、QRコード決済戦争は「第2ステージ」に入ったと言ってよいだろう。

その先頭を走るのが、すでに1年前にSuica(JR東日本発行)との提携を発表して、今年5月から満を持してサービス提供を始めた楽天ペイと楽天グループである。

楽天ペイは念願の「交通系」を手に入れた

今回の提携(楽天ペイ×Suica)は、特に楽天にとってのメリットが大きい。

70種類以上の業種がひしめく楽天経済圏だが、ネット、銀行、証券、旅行、スポーツ、コンビニなどはあるものの、これまで鉄道やバス、フェリーといった交通系にはあまり縁がなかった。そのために「生活導線の主役」が足りないと批判されることもあった。

そうした中で1年前に交通系電子マネーSuicaと提携することとなり、ついに楽天ペイとSuicaが合体した「楽天ペイのSuica」が登場して「生活導線」の構築に邁進しようとしている。

Suicaは日本で最も人口の多い首都圏で使われる電子マネーであり、通勤・通学で朝夕2回は必ず使われる。

そのSuicaと連携すれば楽天ペイの稼働率も大幅にアップする。楽天グループ全体の売上げへの貢献も大きいと見ている。

これで、生活の中で数少ない「楽天ペイを使えない場所」であった交通系でも、楽天ペイを利用できることになり、「生活すべてを楽天ペイで決済する」ことが可能になった。

お得だけでなく、利便性で選ばれるメインの決済手段になり得る存在になったのだ。

Next: ちなみに楽天ペイアプリでSuicaを発行できるのは今のところAndroidスマホ――



Suica発行できるのはAndroidだけ

ちなみに楽天ペイアプリでSuicaを発行できるのは今のところAndroidスマホだけ。iPhoneはまだ対応していないが、Apple PayでSuicaを発行し、楽天カードと紐付ければ200円につき1ポイントの楽天ポイントが貯まる(ただし、毎月1回楽天ペイからのキャンペーンエントリーが必要である)。

5月25日からはAndroidスマホの楽天ペイアプリ内で、Suicaを無料で発行できるようになった。モバイルSuica利用者も、アプリ上で利用中のSuicaを連携登録することで連続的に使える。

これまではQRコード決済で交通系電子マネーを使える例はなく、楽天ペイで使えるようになったのは画期的だ。楽天ユーザーなら、導入する意義があるだろう。

さらに「IC」マークのあるエリアなら、全国どこでも買い物や乗車に利用できる。具体的には、PASMOやKitaca、manaca、ICOCAなど。

基本、全国主要な交通機関で使えるので、頭に入れておくと便利だ。

JR東日本にとってはチャンス到来!

一方のSuica(JR東日本)にとっても、楽天とのコラボレーションは願ってもないチャンスであった。

もともとJR東日本は、モバイルSuicaを中心に事業を推進したいと考えていた。スマホに入れてしまえば、様々な情報と連携した新しいサービスを用意できると期待したからだ。

そのために2009年頃から積極的に携帯キャリアに働きかけをしてきた。

ところが、よくご存じのペンギンの「Suicaカード」は、便利かつ可愛いのでその人気は衰えず、長い間、発行枚数でモバイルSuicaを大きく引き離してきた。

救世主となったのは、2017年に発行になった「Apple Pay」であった。Suicaに惚れ込んだ米国アップル社員によってiPhoneにSuicaが標準装備されることになり、大きく躍進した。

しかし、その後の展開は芳しくない。Suicaは提携先を探してみずほ銀行のスマホに入ったりしたが、思ったほどの成果はなく停滞が続いた。

FeliCaが繋いだ楽天との仲

そこで浮かんだのが楽天との提携であった。今回の提携は楽天側からの申し出といわれるが、真相は籔の中。定かではない。

ただ筆者が思うに、楽天EdyはSuicaの兄貴分である。EdyもSuicaもどちらもソニーの非接触ICチップFeliCaを使っている。JR東日本はSuicaを開発するのに、ソニーの技術陣と何年もの間苦闘してFeliCaの改良を進めてきた。

その関係で両者は親密な付き合いがあるといわれる。今の楽天グループの幹部にもソニー出身でEdyに関わっていた人物が入っていることから、その線で話を進めたのかもしれない。

そんなわけで、昨年の春段階でははっきりとした計画はなかったものの、とりあえず提携したことだけ発表しようとなっていたのだ。

それにしても「なぜ1年も前に発表したのか?」と言うことだが、楽天としては、ライバル各社(NTTドコモ、ソフトバンク、auなど)がSuicaを取りに行くのを防ぎたかったからではないかと思っている。それで早めに発表して、唾をつけておきたかったということだろう。

Next: 楽天にとってはよいことずくめの提携であったが、JR東日本にとってはどう――



Suicaは「アグレッシブな顧客」が欲しい?

楽天にとってはよいことずくめの提携であったが、JR東日本にとってはどうだったのだろうか。

Suicaとしても、この提携には積極的だったと思われる。すでに触れたようにスマホでみずほなどと提携してはいたが、顧客層が合わないこともあり伸び悩んでいた。

Suica側とすると、もう少しアグレッシブな顧客を取り込みたいと願っていたのではないか。

Suicaの関係者にインタビューすると、以前から「楽天の顧客のような人たちが欲しい」という話をしていた。

楽天の利用者がどんな人たちかというと「ポイントへの関心が強く」「ネットに精通し」「スマホも得意」といった人たちである。

そういうリテラシーの高い人たちがSuicaの新しい顧客層として加われば、スマホを駆使して新しいサービスをどんどん使ってくれるに違いないと予想できるのだ。

そして、それはJR東日本が期待する顧客像にグンと近づく。

QRコード決済戦争はさらに過熱する

実際、5月には「赤いSuica(楽天カラーの赤)」としてコラボレーションを打ち出すことができたし、Androidだけとは言えSuica発行ができるから、インパクトは充分あった。

またiPhoneでも楽天カードでSuicaにチャージすれば楽天ポイントが貯まるので、とりあえずマニアの要求は満たすこともできた。

楽天とSuicaの連携は、今後、続々と新サービスを出してくるに違いない。QRコード決済戦争「第2ステージ」で大暴れして、大衆をあっと驚かせるだろう。

そして、両者の提携に刺激を受けた他グループもさらに知恵を出し、次の手を打ってくるだろう。今後の展開から目が離せなくなった。

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達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2020年7月15日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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