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金価格、史上最高値更新でも今が買い?金投資ブーム到来前に知るべき利点と2つの注意点=江守哲

金相場は史上最高値を更新し、今まさに歴史的な動きにある。マスコミもこぞって金投資について取り上げているが、一般の投資家が見落としてがちな2つの重要ポイントについてお伝えしたい。(『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』江守哲)

本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年7月27日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

金相場は続伸

金相場は上昇し、節目の1,900ドルを超え、2011年9月以来の高値をつけた。週明けも高値を直近更新してきている。

米国内で1日に報告された新規感染者数が過去最多となるなど、新型コロナウイルスの急拡大が意識されている。また、今後の景気回復への不透明感に対する懸念が高まっていることや、為替市場でドル安が進んでいることも、ドル建て金相場を押し上げている。実質金利がマイナス圏で推移していることに加え、中銀のバランスシートの膨張も引き続き金相場の上昇要因として意識されている。

さらに、米新規失業保険申請件数が141万6,000件と、前週から10万9,000件増加。一部州での新型コロナウイルスの感染急拡大を反映し、16週間ぶりに増加に転じたことで、労働市場の回復が遅れるとの懸念から、米国株が下落したことも金買いに拍車をかけた。また、米中対立の悪化も材料視され、一時は1,905.99ドルを付けた。

米政府が中国に対し、テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じる一方、中国政府が米国に対し、四川省成都市にある総領事館を閉鎖するよう命じるなど対抗措置を行うなど、両国の関係悪化への懸念が一気に高まったことも、安全資産である金を買う動きにつながっている。

投資家・投機家の買い姿勢が鮮明

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、7月17日の1,206.89トンから、24日には1,228.81トンに増加した。投資家の金買いの動きが止まらない状況である。

COMEX金先物市場における大口投機筋の7月21日時点のポジションは26万6,436枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が4,008枚拡大した。買いポジションが4,032枚減少し、売りポジションが24枚増加した。投機家も高水準の買いポジションを維持している。

ついに史上最高値へ

金相場は節目の1,900ドルを回復し、いよいよ史上最高値の1,920.30ドルが視野に入ってきた(※編注:原稿執筆時点7月26日。日本時間27日午前の取引で1,943ドルに達し、過去最高値を更新しています)。早ければ今週中にも到達しそうな勢いです。

金<現物 1oz.あたり> 月足(SBI証券提供)

マスコミなどの報道を見ていると、様々なところで金に関する記事が掲載されている。歴史的な高値圏にあることから、当然のことだろうが、そのわりに金ブームが高まっているようには見えない。国内ではまだまだ金投資の広がりがないことが背景にあるのだろう。

実際、筆者の周りにも、金投資に興味を持つ投資家は少なくない。中には、「価格が高い」「買い方はわからない」などの声も聞かれる。それだけ、金投資はまだまだ一般の人にとって身近ではないといえそうである。その意味でも、金投資に関する啓蒙活動が必要と感じる。

Next: 金相場は今まさに歴史的な動きにあるわけだが、私は2016年の安値のとき――



金投資「2つの重要ポイント」

金相場は今まさに歴史的な動きにあるわけだが、私は2016年の安値のときから金投資の重要性を説いてきている。そして、買い続けていれば、株式よりも高いリターンを得ることができると言い続けてきた。私が執筆したメールマガジンやセミナーなどでの講演内容を覚えている方は納得するだろう。

私は金投資に関して話すときに、2つの重要なポイントを話すようにしている。

ひとつは、購入価格はあまり気にする必要はないということである。極論に聞こえるかもしれないが、これは株式・債券などを中心とした投資信託の積立投資をイメージすればよい。

金投資の目的は、株式投資で積み上げた資産を保全するためである。そのため、2つ目のポイントとして、「株式投資をする際には、必ず同額あるいは同等額の金も買う」ということを話すようにしている。株式・債券の投信の積み立てと同じように、金も積み立てるという発想で金も株式などと同額に購入するのであれば、金相場が高かろうが安かろうが関係はないということになるわけである。

「金だけで運用」の落とし穴

さらに言えば、金の方が株式よりもパフォーマンスが良いわけであり、株式投資だけ資産を運用するよりも、明らかにリターンは高くなる。

そうであれば、金だけで運用すればよい、という話になるだろう。

しかし、さすがにそれも偏りすぎであるといえる。金は株式よりもボラティリティが低く、株価が下げたときに値動きが逆になりやすいという特性がある。これを生かすために、株式と金を同時に買う。そうすると、株式と金で運用するポートフォリオの資産価値のぶれを低減することができる。

つまり、株価の動きに一喜一憂せず、株式投資のみで運用する場合に比べて安定的に運用することができるわけである。そうすれば、心理的にも負担が大幅に軽減できるだろう。

このことを一般投資家にはあまり認知されていないようである。

一般の投資家の興味は、どうしても投資の技術的な話に向かいやすく、投資や運用の根本的な理論はあまり理解されていないように感じる。投資の技術的な話とは、チャート分析や投資のタイミングについてである。

しかし、上記のような根本的な考え方を理解すれば、運用でリターンを上げる方法についての理解も深まっていくだろう。そうなれば、投資の技術的な話よりも重要なことがあることも理解されていくのではないかと考えている。

歴史的な高値水準でも金(ゴールド)は買い?

このような話をすると、「金相場が上がってきたから、そのような話をしているのだろう」といわれるのだが、私はコモディティ市場を30年間見続けている。現在は1グラム当たり6,000円を超える相場だが、1,000円以下のときも知っている。

当時も今も、基本的に同じことを言い続けているのである。その結果が出ていることが、私が上記のようなことを言い続けている根拠になっているわけである。

したがって、私は今のような歴史的な高値水準でも、金を買い続けたほうが良いと考えている。

Next: なぜなら、金相場の天井を予測することはできず、またする意味もないから――



「株式・金・現金」の3分割法

なぜなら、金相場の天井を予測することはできず、またする意味もないからである。

金は現金の代わりであり、株式投資のリスクヘッジであり。株式投資で一攫千金を狙うのも楽しいだろうが、それは資金の3割を超えない範囲で行うべきであろう。やはり、7割は株式と金の長期積み立て投資で安定した運用を行うのが良いと考えている。

これが私が唱える「株式・金・現金」の3分割法である。

現金を持っていれば、株価や金価格が急落したときに買い増しができる。現金がないと、それができない。そのために、現金を保有し、多少の時間は眠らせておきながら、チャンスが来た時に投入できるように準備をしておくわけである。

投資家のリスク回避姿勢が鮮明に

バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が7月24日公表した恒例の週間調査にもあるように、投資家は現金と投資適格級債券、金に資金を移す一方、株式からは引き揚げ、高リスク資産を避けている。金には38億ドルが流入し、史上2番目に多かった。一方、株式からは38億ドルが流出している。

バンカメは、現在の金融市場で見られる主要な動きとして、金利の大幅な抑制とドルの大幅安を指摘している。これにより、物価はデフレからインフレへ転換するとの見方を示している。

いずれにしても、投資家のリスク回避姿勢はかなり鮮明になってきているようである。

これまで上記のような単位で金に資金が流入することはみられなかった。それだけ投資家が、金への興味を高めており、実際に投資しているというわけである。

このように、歴史が変わったのは、金相場の値動きだけではない。投資家行動も大きく変わっている。

日本ではまだまだ金投資のすそ野が広がっていないといえる。世界的な金投資の潮流が日本にも浸透してくれば、大きなうねりとなり、金相場はさらに一段高になる可能性があるだろう。

結果として、キャピタルゲインを得ることもできるだろう。

Next: しかし、それはあくまで結果である。繰り返すように、金投資の目的は株式――



金投資の目的はリスクヘッジ

しかし、それはあくまで結果である。繰り返すように、金投資の目的は株式投資との関係でポートフォリオの資産価値の変動を抑制することである。

そうやっていれば、結果としてリターンも得られることになるだろう。リスクヘッジといいながら、実際にはキャピタルゲインも狙えるのが金投資のユニークなところであるといえる。

金投資を始めるには、キロバー(1キロの金塊)を買う必要はない。一般的な人たちは、このような基本的なことも知らないのが実態である。日本にもっと金投資を広げていかなければならないだろう。

私のように、日本では金を使ったファンド運用の経験者はほとんどいない。その意味でも、私の役割は大きいと感じている。もっと金投資が日本で広がるように、啓蒙に力を入れていきたいと考えている。

いずれにしても、これまで解説してきたように、金はポートフォリオ運用に組み込みながら、金の特性を生かすようにしたいところである。株式とは違う値動きをするだけでなく、実際にパフォーマンスも良い金への投資は、資産拡大に寄与してくれるだろう。

株式投資と同時に少額でも徐々に積み立てていけば、金投資の重要性への理解も進むだろう。そのうえで、大きく下げたときに買い増しを行うのが良いだろう。

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マーケット・ヴューポイント〜「不安定中でも基調は変わらず」

株式市場〜米国株はやや調整、日本株はレンジ内での推移

為替市場〜ドル円は想定通りの円高

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年7月27日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場金、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

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image by:Andrey_Popov / Shutterstock.com

江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』(2020年7月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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